ついに登場したソニー『mocopi』実機レビュー "アバター初心者"でも気軽に使える洗練されたプロダクト

 実際にアバターを動かしてみると、画像や言葉では説明できない面白さがある。僕は、人は「人を模したり、何かを操作すること」に根源的な面白みを感じる生き物だと思っている。ラジコンやドローン、ゲームのコントローラーの進化を見ていると、この"面白み"が複雑に発展してきた歴史に触れることができる。

 そうした進化を踏まえたうえでこの"アバター遊び"を体験すると、これが最新のテクノロジーで実現した遊戯である反面、高度に複雑化した前述の遊びの面白さに対して、とても原始的な面白さがあると感じた。

メイン画面左上の「アバター」をタップすると、初期アバターを「HUMAN」から公式キャラクターの「RAYNOSちゃん」に変更できる。また別途Vloidなどで作ったアバターをアプリケーションに読み込むことも可能だ。

 アバターを「HUMAN」から「RAYNOSちゃん」に変更すると、この面白さがグッと立体的になる。どういうことかというと、「アバターの外見に即した動きをしたくなる」のだ。キャラクターを身にまとう、という体験のユニークさには、「ああ、これに"ハマって"しまうんだな」と納得させられる。「HUMAN」を操るときと「RAYNOSちゃん」を操るときでは動きが変わる。製品を試す際にはぜひ、この体験に驚いてほしい。

「RAYNOSちゃん」で動く様子。肩の位置などが女性的なアニメ風アバターで、画面を前にする自分もついアニメ風の動きをしてしまう。

 今回はさらに、3D制作が趣味の妻に頼んでカスタムアバター"Courseちゃん"を作ってもらった。前述の機能を使ってカスタムアバターをまとってみると、デフォルトのアバターで遊ぶよりもずっと面白い。

カスタムアバターで動く様子。画面の前でくるくると手足を動かすだけで楽しい。
グリーンバックを利用して合成写真を作ってみた。一通りの機能を楽しみながら体験でき、大満足だ。

 『mocopi』はセンサーを身体に取り付ける仕組みが非常に簡単で、センサーとアプリケーションの通信もBluetoothで行われるため、非常に手軽にモーションキャプチャーを楽しむことができそうだ。服の下に装着すれば町中でも奇異の目で見られることはないだろうから、屋外での利用にも向いている(公式のPVにも屋外使用のシーンがあるとおり、想定された使い方のようだ)。

 またアプリケーションのデザインが秀逸で、必要な機能と余剰な機能の取捨選択がうまいと感じた。僕のような素人ユーザとしてはたとえば「”実際の風景”をバックにアバターを表示する機能」が標準で備わってくれたら嬉しいな〜なんて思うのだが、動かすハードウェアの要求スペックが上がりすぎてしまうのは想像に難くない。PCと組み合わせることでこうした撮影も比較的簡単に実現できるため、すでに環境を持っているVTuberのユーザなどは導入ハードルも低そうだ。こうした事情も勘案した上でアプリケーションをコンパクトに設計しているように思う。

 まとめると、ハードウェアとソフトウェアがいずれも過不足なくシンプルにまとめられており、僕のように初めてモーションキャプチャーを体験するユーザから、すでにこうした技術に触れているユーザまでを幅広くサポートする製品だと感じた。また開発者にドキュメントが開放されているところも好印象だ。すでにSDKの提供も始まっており、今後は『mocopi』を活用したアプリケーションや、新たなアイデアで『mocopi』を使うようなTIPSも増えていくだろう。アバターを扱うことへの技術的好奇心があるユーザや、こうした文化に関心のあるユーザはぜひ一度、購入を検討してみてほしい。

関連記事