「アプリの累計ダウンロード数で世界をリード」「タレント参入はチャンス」 マネジメント事務所の代表が語る”TikTokビジネスの現在”

「ダンスをしているだけでは勝負できない」

――TikTokは非常にトレンドのスピード感が速いプラットフォームですよね。その中で様々な施策を仕掛けるにあたって注目して見ているところはどこですか。

若井:トレンドに関しては我々の予測通りに推移していますね。状況に対し積み上げていくべき戦略というのは、我々だけでなくトップクリエイターの方々も持っていると思いますよ。そこは皆さん、マーケティング視点を持っているので。それこそTikTokは「ダンスをしているかわいい子」がまだまだ目立つプラットフォームではありますが、そのコンテンツだけで勝負しているクリエイターはほぼいません。ちゃんと3C(Customer/市場・顧客、Competitor/競合、Company/自社)分析をして、自分の個性との掛け算をして、TikTok内にないオリジナルなポジションを狙ってコンテンツを伸ばしていますね。そこはほぼ全員が戦略的に考えていますし、我々とクリエイターの考えは同じだと思います。

――なるほど。実際に狙ってヒットを作ったという代表的なクリエイターはいますか。

若井:フォロワーを増やすためには安定的に、同じようなかたちでコンテンツを作って伸ばしていかないといけません。一過性のバズでは意味がない。それを実際にやっているクリエイターは、当事務所所属の「にっしー」が該当します。彼は『ONE PIECE』などアニメのフィギュアを買ってきて、その周りに100円ショップで買えるような材料でジオラマを作っており、TikTok内に、同じようなコンテンツがゼロだった。だからほぼ全動画がバズっていますし、フォロワーも一気に伸びて、素晴らしい結果を出しています。

――2022年を振り返るとTikTok内のコンテンツも時代が変わったという印象がありました。若井さんは実際どのように感じていますか。

若井:TikTokのコンテンツの多様化と年齢層の上昇は年々続いている傾向ですが、今年も同様だったと思います。また、1分までしか投稿できなかった動画が今では10分まで投稿できるようになったこともありコンテンツが長尺化していますね。かつ縦型動画だけではなく横型動画の全画面でも見られるようになりました。プラットフォームとしては長尺化が進んでいますね。それに伴い、テレビ局自体が運営するニュース番組などのアカウントも増えてきています。我々はPGC(Professional Generated Content)と呼んでいますが、個人が作っていた時代からプロが参入するマーケットになってきている印象です。

プロはインフルエンサーにとって脅威の存在かつ協力者

――まさに、プロのアカウントが増えてきましたが、こういった変化がインフルエンサーにもたらす影響について感じていることはありますか。

若井:インフルエンサーだけでなく、テレビ局も含め全てのコンテンツベンダーがマルチチャンネル化しないといけない状況だと考えているんですよ。もはやYouTubeだけ、TikTokだけ、テレビだけで発信していればいいという時代ではなくなってきています。どのプラットフォームが勝ち残っていくかは正直インフルエンサーにはハンドリングしきれない領域ですが、何が起きてもそういった状況下で彼らは生計を立てていけなければなりません。その中で、とにかく様々なメディアを連携して使うことが求められていると思っています。そこはテレビ局も一緒。制作したものをテレビで流して、見逃し配信も用意して、SNSでも告知して……というように、回していくことが必要になってくる。そういった意味では、プロもインフルエンサーと同様の戦い方を強いられるようになると思いますね。

 インフルエンサーからしたらプロは黒船のような存在です。可処分時間の奪い合いという意味では脅威となるのですが、一方で品質の高いコンテンツが増えることはマーケットを伸ばしTikTokのユーザーを増やすきっかけにもなる。ですからプロはインフルエンサーにとっての協力者であると同時に脅威の側面もあるかなと思います。

――インフルエンサーという職業は最近出たばかりなので、将来の見通しが立ちにくい仕事だと思います。そんな中でインフルエンサーがクリエイティブだけで生きていける状況は続きますか。

若井:続くと思いますね。そもそもインフルエンサーがやっていることのメインは、コンテンツを作って発信してファンをつけて広告主を見つけること。その経済圏自体は昔からあることです。芸能人はファンクラブをやっていたし、テレビ局も広告でマネタイズをしていたので。以前と全く同じことが続いているわけですが、5GとかTikTokなどの新しいテクノロジーにより大手の企業にしか参入チャンスがなかった分野に個人の門戸が開かれただけのことだと思っています。長期的に続いているビジネスの“主戦場”や“プレイヤー”がテクノロジーの進化により変わってきているのだと理解をしていますので、インフルエンサーという職業は短期的なトレンドではないと考えています。

(参考:SensorTower TikTok Becomes the First Non-Facebook Mobile App to Reach 3 Billion Downloads Globally

(参考:apptopia Worldwide and US Download Leaders 2022

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