『ファイアーエムブレム エンゲージ』は古参ファンも納得の作品になれるか シリーズの変化に集まる批判が筋違いである理由

 
 一方、こうした「ファイアーエムブレム」のコンセプト変更には、往年のファンから批判も集まっている。彼らにとって同シリーズは、やりごたえがあり、かつ地道で、無骨なゲームデザインをもつものである必要があるようだ。

 しかしながら、そのような批判はやや筋違いでもある。なぜなら新規IPであっても、長く続くシリーズであっても、作品がメインターゲットとする層は制作側が自由に決めればよいことだからだ。ゲーム史において名作とされるシリーズが作品を重ねるうち、当初の形からコンセプトを変え、別の層をメインターゲットとするケースはままある。そのような変化を前にサービスの受け手であるプレイヤーができる選択は、声を荒げて制作側の意思を曲げようとすることではなく、その変化を受け入れるか、拒むかだけ。この場合の「拒む」とは、変化を盛り込んだ新たな作品を「買わない」という選択を取ることを指す。

 たとえば、「FINAL FANTASY」というシリーズもそのうちのひとつだろう。人気を獲得するまでに発売されたナンバリングタイトルと、直近に発売されたナンバリングタイトルでは、大切にしていること、根幹となるゲーム性が変化している。グラフィックへの注力や、アクション性の高まりなどはその一例だ。RPG特有の「長い時間をかけてプレイすることではじめてわかる面白さ」ではなく、「視覚的な凄み、新しさ」が重視される時代なのかもしれない。

FINAL FANTASY XV ゲームプレイ映像 バトル編

 「FINAL FANTASY」におけるこうした変化は、「ファイアーエムブレム」の変化と同質のものであると言えるだろう。「それならば、別のシリーズを立ち上げ、そちらでやってほしい」という意見も理解はできる。しかし、すべては制作側の意思なのだ。仮にそうした変化が文化的な後退であったとしても、私を含む往年のファンは、「買う」「買わない」という自身の行動を変えるしかないのである。

 それでも現状を変えるために、諦めにも似た「買わない」という選択以外にできる行動があるのだとしたら、「わかりやすいコンセプトに流されないマーケットとなるよう、批判ではないメッセージを投げ続けること」「変化を盛り込んだ最新作をきっかけに、新たなファンがかつてのシリーズの名作を手にとり、本当のシリーズの魅力に気づいてくれることを願うこと」くらいなのかもしれない。

 ファミリーコンピュータの発売から40年。かつてサブカルチャーの一部だったゲームは、ポップカルチャーと言っても差し支えのない文化となった。「ファイアーエムブレム」に代表される名作シリーズのコンセプト変更には、そうした文化的立ち位置の変化を感じてしまう部分もある。「ファイアーエムブレム エンゲージ」は、新規のファンと往年のファンがともに喜べるような作品となれるだろうか。発売後の動向を見守りたい。

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