Yossy×スイニャンが確信した“国内eスポーツシーンの転換点”【後編】 「推し選手に会いたい女性ファンが増えた」

2023年は対戦格闘ゲームに期待 成長を続けるeスポーツ市場

――eスポーツが新語流行語大賞に入ってから4年が経ち、eスポーツ産業は国内においても成長途上にあります。2023年のeスポーツはどのように変化すると思われますか?(編集部注:取材は「VCT Masters 2023」の東京開催の発表前、12月中旬に実施)

Yossy:一番難しいところですね。『VALORANT』のオフラインイベントでさいたまスーパーアリーナを満員にしたぐらい、最近は突拍子もないことが起きています。だからこそ、日本がeスポーツ産業の主要国として数えられる日が来るのではないかと。競技面で言えばZETA DIVISIONが『VALORANT』世界3位、同じく『ブロスタ』でも世界一に輝いているし、日本人選手が海外大会で勝つことが当たり前になってきています。加えて海外チームへ入るストリーマーやプロゲーマーも見受けられ、需要があることをはっきり認識できます。何年か前だと、世界のeスポーツシーンにおいて日本はそれほど注目されていなかった。でも、いまはおそらく全然違う答えが返ってくると思います。だから今後も日本のeスポーツは全体的に高まっていくのではないかと期待しています。

スイニャン:私もこれは本当にわからないと思っていましたが……“日本をアジア地域の一つとして組み込む”動きはタイトルを問わず見られますね。これって逆に言えば、日本をちゃんと一つの地域として捉えているからなのかなと。その一方で、モバイルゲームを筆頭に日本独自のeスポーツも盛り上がっている。辿っていく流れは別かもしれませんが、いろいろと混ざって日本ならではのeスポーツ文化ができあがっていく気がしますね。とはいえ、世界全体で見ればPCゲームを中心としたeスポーツシーンはそれほど変わらないと思います。

Yossy:現状だと、やはりストリーマーさんの存在が大きいので、彼らの遊び方や選択次第で人気が出るタイトルもあるのか気になります。いまは『VALORANT』がそのパターンで最も成功したと僕は思いますが、現実のものとして作用している点は興味深いですね。

――ライト層を巻き込んで盛り上げる工夫が必要かもしれません。たとえばサッカーの場合「Jリーグは見ないけどワールドカップは見る」という層が多く存在します。「日本代表が世界で○位になった」とニュースになれば、サッカー未経験者でも、ためしにテレビをつけて応援したくなる。なんとなく盛り上がる気分にはなると思いますが、この感情はeスポーツにも言えるのではないでしょうか。

Yossy:おっしゃる通り、ワールドカップとeスポーツの日本代表は世界観が近いと思っていて。「グループステージを突破して本戦に進む」というのは同じだし、世界大会で負けても諦めずにリベンジを誓い、実際に勝ち上がってきています。やっぱり日本代表が出てくると、ゲーム内容を知らなくても応援したくなりますよね。

スイニャン:別にゲームをやっていなくてもいいんですよね。サッカーが例に出ましたけど、誰しもが人生でサッカーを選手として経験するわけじゃない。それでも、「相手チームよりも多く点を取れば勝ち」というルールが分かっていれば、見るだけでも楽しめる。eスポーツはタイトルごとにルールも違うし複雑ですが、基本的な部分を押さえればスポーツ観戦と同様に楽しめるはずです。

Yossy:あと個人的に気になっているのは”対戦格闘ゲーム”ですね。2023年は『鉄拳8』『ストリートファイターVI』が発売されるし、基本プレイ無料の『Project L』も期待しています。開発元のライアットゲームズは『VALORANT』でユーザー数をかなり増やしたし、「これで格ゲーも伸びるのでは?」という予感があります。『ストリートファイターV』の公式リーグに携わっているハメコ。さんに格闘ゲームシーンについて教えていただいた際、男性の割合が圧倒的に多いと言われていて、FPSもかつてはそうだったけど、いろんな要素で新規ユーザー層が増えたし、格ゲーもさまざまな理由が重なって人気が爆発するかもしれません。『ストリートファイターVI』に関しては簡単なコマンド入力で楽しめる「モダン操作」が搭載されるらしく、格ゲー初心者を巻き込んで面白くなりそうだと感じました。

――長時間にわたってありがとうございました。最後に、今回のeスポーツ対談の感想をお願いします。

Yossy:昔からですが、僕とスイニャンさんは見ているところも違うし、感じ取っている部分が全く違うので、同じイベントを取材してもタイプも異なる記事になります。だから「スイニャンさんはどんな記事を書いたのかな?」と見に行くと、こんな風に取材していたんだって発見が面白くて。昔の僕は試合の結果を中心にフォーカスしていましたが、スイニャンさんに「結果だけだと誰が出ているか分からない」と言われたことがあって。昔の選手って写真に写りたがからないけど、スイニャンさんは選手が気になって見ているから、「どういう人がプレイしているか知りたいんだよね」って話をしていました。その話を聞いて「そんな視点があるんだ」と気づき、いまは選手の写真を多めに撮るだけでなく、会場の皆さんに話を聞くこともあります。女性ならではの切り口で「この選手が格好良い!」といった記事も今までに読みましたし、今日もスイニャンさんのいろんな考えを聞くことができ、とても有意義な時間を過ごせました。本当にありがとうございます。

スイニャン:こちらこそありがとうございました! 記事の内容や注目するポイントが違うことは、お互いに感じていることだと思います。実際にYossyさんの記事は大会結果がメインの「記録」という感じでしたけど、いまは選手からお客さんまで、人にフォーカスして写真をたくさん撮影するライターさんに変わっていて。私はそういう部分が好きですし、今までのYossyさんの手法も絶対に必要な部分です。私は理路整然としたものを書けないタイプで、感情に合わせて筆が進むんですよ。なので変な言い方かもしれませんが、eスポーツイベントの賞金額や数値にそこまで興味が無く、メディアさんから指摘されることも多いです。Yossyさんは賞金額やデータをしっかり書いていて、基本情報もしっかり抑えている。私の場合は逆に抜け落ちちゃうこともあるので、Yossyさんが書く教科書のような記事は必要だし、20年にわたって継続している点が本当にすごいですよね。これからもコミットの仕方を見習いたいと思います。

Yossyとスイニャンが振り返る“2022年のeスポーツ”【前編】 「コロナ禍で進んだ観戦体験と失われたオフライン文化」

2021年の市場規模が78.4億円を記録し、2025年度までに約180億円の成長が予想される国内eスポーツ産業。2022年度はコ…

関連記事