約3年ぶり開催の『FFXIV』オーケストラコンサート2022レポ 全21曲でよみがえった、光の戦士たちの冒険の軌跡

 12月17、18日に東京ガーデンシアターにて、計4公演で『FINAL FANTASY XIV ORCHESTRA CONCERT 2022 -Eorzean Symphony-』が開催された。同コンサートシリーズは2017年に初演、2018年には米・ロサンゼルスと独・ドルトムントで海外公演が行われ、国内では約3年ぶり3回目となる。二部構成で、第一部では新生エオルゼア/蒼天のイシュガルド/紅蓮のリベレーターから10曲。第二部は漆黒のヴィランズ/暁月のフィナーレから9曲を選曲。アンコールを含めて全21曲が演奏された。

 おなじみの栗田博文の指揮のもと、東京フィルハーモニー交響楽団の演奏にGLORY CHORUS TOKYOのコーラスが加わったサウンドは、圧倒的な壮大さ。まずは『FINAL FANTASY XIV(以下、FFXIV)』を代表する「天より降りし力」を演奏し、観客を一気に『FFXIV』の世界へと引き込んだ。続けて「希望の都」では、威厳を感じさせるサウンドとともに、都市ウルダハの風景がビジョンに映し出される。今まさに冒険の旅に出かけようとする、胸をときめかせたあの日のことを思い出した人も多かったろう。 

 この日の司会進行・解説を務めたのは、『FFXIV』プロデューサー兼ディレクター・吉田直樹(以下、吉田P)と、サウンドディレクター・祖堅正慶(以下、祖堅)の2人。公式バンド・THE PRIMALSのライブとは異なるクラシックコンサートの形式で、どこかかしこまって緊張気味だった観客をなごませるように、ユーモアも交えながら制作エピソードや裏話が披露され、第一部と第二部のあいだの休憩時間にはオーケストラのリハ風景の映像が流れるなど、ファンにはたまらない時間となった。

 吉田Pが、「蒼天のイシュガルドを思い出しながら聴いてください」と紹介した「Dragonsong」では、ゲストボーカルとして白のドレスを着たアマンダが登場。ピアノとストリングスのサウンドに、美しく神秘的な歌声が重なった。スリリングなサウンドで光の戦士たちの心をかきむしったのは、「英傑 ~ナイツ・オブ・ラウンド討滅戦~」。重厚なコーラスとストリングスが重なり、光の戦士たちを苦しめたボス戦の情景が脳裏によみがえる。

 続けてインスタンスダンジョンでのボスとの交戦時に流れる「鬨の声」では、ステージが真っ赤なライティングで照らされた。光の戦士たちを鼓舞するようなメロディが、実にエモーショナルだ。第一部の最後は、「空より現れし者 〜次元の狭間オメガ:アルファ編〜」を演奏。希望と絶望が入り乱れる、熱く激しいサウンドと切なくもはかないメロディ。まるで目の前でオメガ戦が繰り広げられるような臨場感で、何度も苦汁をなめさせられた苦々しい経験と、ギリギリで死線をかいくぐりオメガを倒した時の達成感や爽快感が、胸の奥から引き出された。

 第二部は、「Shadowbringers」からスタート。賛美歌のような美しいコーラスに続けて、テンガロンハットに髭をたくわえた男性ボーカル、ジェイソンがステージに現れた。ジェイソンのボーカルは、低く垂れ込めた灰色の雲のようで、闇との戦いを前に武者震いする、戦士たちを高揚させる。続く「To the Edge」は、ヒリヒリするような鋭いサウンドから一転、オーケストラによってスケール感が倍増し、闇と光が交錯するような世界観で観客を包み込んだ。

 2曲を歌い終え、「こんにちは。今日、ここに来られてうれしいです。みなさんの愛を感じます。『FFXIV』のコミュニティは世界一です。祖堅さんは天才です」とコメントしたジェイソン。「こちらこそ、素晴らしい歌声をありがとう」と、実にうれしそうな祖堅。というのも、9月に開催されたTHE PRIMALSのライブに出てもらう計画もあったが、そのときはコロナ禍における入国規制でかなわなかったとのこと。「貨物船の積み荷にまぎれて来てもらうことも考えた(笑)」とジョークを話した吉田Pに、「(体が大きすぎて)かばんに入らないから無理だよ」とこちらもユーモアたっぷりに返したジェイソン。観客も、念願かなったジェイソンの生歌に酔いしれた。

 「Tomorrow and Tomorrow」では、再びアマンダが登場。「漆黒のヴィランズ」を代表する楽曲で、途中でピアノソロが入るなど、おごそかな雰囲気ながらドラマチックな展開もある同曲。アマンダの透き通ったボーカルは、戦いに傷ついた光の戦士たちを癒やすような温かさ。美しいピアノの調べと一体となり、ファンの涙腺を崩壊させた。

 「こんばんは」と日本語で挨拶したアマンダ。「こうしてみなさんの前で歌わせていただいたことは、私のキャリアのなかでも素晴らしい経験となりました。皆さんのサポートに感謝いたします」とコメント。吉田Pによれば、アマンダを見そめたのは海外で開催したオケコンのリハーサルのときだそうで、祖堅からアマンダの連絡先を聞いてきてほしいと言われた時は、「この人はこんなところでナンパするなんて、何を考えているのか!(と思った)」と当時を振り返って笑った。

 祖堅のスペシャルな演奏で「迷宮 ~ラヴィリンソス:昼~」を披露するサプライズもあった。足に鈴を着けた祖堅は、段ボール箱を蹴って太鼓の音と鈴を鳴らしながら、手ではオタマトーンを演奏。たどたどしい雰囲気が、原曲の世界観にぴったり。また段ボール箱をテープで床に固定する作業を、指揮者の栗田が手伝うという場面も。少しでもたくさん、みんなに楽しんでもらいたいという、演者たちの音楽家としての心意気を感じた。

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