『バイオハザード4』と『Dead Space』、“サバイバルホラーの金字塔”2タイトルが時を同じくしてリメイクされる意義

 TPSジャンルの急速な発展や、これを受けて誕生した『Dead Space』という新たな傑作により、いちばん大きなあおりを受けたのは『バイオハザード5(以下、バイオ5)』(2009年)だろう。『バイオ5』は『バイオ4』を踏襲し、「敵を狙いながらの移動」ができない操作形態を採用。ゲームバランスもこの操作にあわせたものになっていたとはいえ、やはり操作感には窮屈さがあった。

 『Dead Space』を先にプレイしていたサバイバルホラーファンならば、この窮屈さをより強く感じたことだろう。この1点に絞ったうえでの話ではあるが、『バイオ4』の影響下にあるゲーム設計を発展させた『Dead Space』が、現状維持の判断を下した『バイオ5』よりも先進的な操作形態を搭載し、先んじてリリースされたことになるわけだ。

 当時、海外メディアが「『バイオ5』の操作形態が開発中に見直され、敵を狙いながらの移動が可能になった」という誤報を伝え、本作のプロデューサーを務めていた竹内潤氏自らがインタビューで否定するといった顛末があった。誤報の是非はともかく、この出来事も『バイオ5』が如何により快適な操作形態の採用を期待されていたかについて、物語っていると言える。

 操作形態以外にホラー要素の後退などもあり、シリーズとしてはそこまで良いとは言えない評価となった『バイオ5』。続く『バイオハザード6』の評価はさらに芳しくなく、シリーズの批評面における完全復活は『バイオハザード7 レジデント イービル』や『バイオハザード RE:2』、『バイオハザード ヴィレッジ』が立て続けに高く評価された2017年以降に持ち越されることになる。

 ちなみに『バイオ5』はふたり協力プレイの導入など、本作ならではの魅力として親しまれた要素も確かにあったのだが、少なくとも多数派のファンが求めていた進化とは違っていたものと思われる。『バイオ5』と同様にふたり協力プレイを導入した『Dead Space 3』(2013年)がシリーズファンにあまり評価されず、これを最後に『Dead Space』シリーズの展開がひとまずの終焉を迎えてしまったのは、少し皮肉な話である。

生まれ変わるふたつの金字塔は“サバイバルホラーの到達点”となるか?

 『バイオ4』と『Dead Space』はいずれも名作・傑作と言えるが、ゲームの操作形態が次々と洗練されていく過渡期に登場したため、この2タイトルのオリジナル版を現代の感覚で比較することは、あまり意味を成さないだろう。

 そんな2タイトルが最新の技術とノウハウで蘇る『バイオRE4』とリメイク版『Dead Space』が同時期にリリースされるのは、「2タイトルが同じ時代の技術とノウハウによって作られたら、どちらが優れたタイトルになるか?」といった今まであり得なかった比較検討ができるという意味でも、シーンを追いかけてきたゲームファンにとって興味深い出来事と言えそうだ。

 そしていずれもが、アクション性を重視したサバイバルホラーの、現時点での到達点と呼べる作品になる可能性が高い。

 現在、リメイク版『Dead Space』のSteamストアページには日本からのアクセスができなくなっている。オリジナル版に続いて国内販売が不安視される状況にあるが、この意義深いタイトルをプレイできる機会が、奪われることのないよう願いたい。

※記事初出時、記事タイトルに誤りがございました。訂正のうえお詫び申し上げます

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