新宿に登場したXR特化型複合施設『NEUU』体験レポ 創る、見る、知る楽しみを味わえる

XR特化型複合施設『NEUU』体験レポ

 日本有数のターミナルである新宿駅の近くに11月1日、世界から高い評価を受けるXR映像を実際に体験することのできる施設『NEUU(ニュー)』がオープンした。

 XRとは、VR(仮想現実)、AR(拡張現実)、MR(複合現実)の総称である。東京メトロ・新宿駅から徒歩1分と好立地の『NEUU』では、最新のXR技術を楽しむことはもちろん、XRクリエイターのためのワークスペースから、XRデバイスやサービスの展示まで行っている。

東京都副都知事・宮坂学

 

 『NEUU』は、スマート東京(デジタルの力で東京のポテンシャルを引き出し、都民が質の高い生活を送ることを目指すプロジェクト)の先行実施エリアとなる西新宿で、5Gを活用したまちづくりを推進する「5Gサービス実装プロジェクト」の一環として実施される。お披露目会に出席した宮坂学副都知事は「XRクリエイターの皆様の創作の場、発表の場を作っていくというのは、未来に向けてとても大事なこと。未来のヒーローがこの場所から生まれればいいなと思っています」と話し、プロジェクトに意欲的な姿勢を見せた。

小田急電鉄株式会社取締役社長・星野晃司氏

 また、小田急電鉄株式会社取締役社長の星野晃司氏は、こうしたXRを活用した取り組みについて「私たちの持つ“リアルの魅力”にXRの持つ“新しい魅力”を掛け合わせることで、今までになかった新しい価値を提供できると考えている」と語る。今後については「この新宿をさらに魅力ある、エンターテインメント、クリエイティブ、エキサイティングな街にアップデートしていくことが小田急の使命」と話し、XRを活用した新宿のアップデートに期待を寄せた。同社・新宿プロジェクト推進部 XRチームリーダーの岡本氏によれば、『NEUU』は今年度で1万人、来年度で2万人の来場者数を目指しているとのこと。

 今回はお披露目会で実際にXRを体験してきた。

PICO 4やNreal Airなども

 施設内の各エリアにはXR作品を見ることのできるデバイスがあり、体験者がゴーグルのように装着することで作品を楽しめる。現在は著名な国際映画祭のVR部門にノミネートされた作品を中心に4作品がラインナップされており、今後も国内外から厳選した4〜5作品が3ヶ月ごとに入れ替わるそうだ。どの作品も7〜14分程度で体験でき、価格は600円〜1200円ほど。普段なかなか触れることのできない作品を気軽に体験できるのも『NEUU』の魅力である。

 今回、筆者は伊東ケイスケ氏が監督を務める『Feather』と『Beat』の2作品を体験した。どちらもヴェネチア国際映画祭など複数の映画祭にノミネートされる、今注目のXR作品だ。

 まずは『Feather』から。頭まで覆うような大きなデバイスを装着すると、視界は完全にゴーグルで覆われる。そしてそのゴーグルの中には、夢のような世界が広がっていた。まるで異世界に飛び込んだかのように一面が真っ暗な中、目の前にはドールハウスが広がっている。このドールハウスを軸に物語は展開するのだが、本作にはインタラクティブな仕掛けが施されている。手に持ったコントローラーを使って目の前の「Feather(羽根)」を拾い、少女に手渡すことで物語が進行するようになっているのだ。その場で自分が一歩前に進めばドールハウスに近づくことができ、下がれば遠ざかることができる。現実世界での動きが作品とリンクしているため、本当に羽根を拾って少女に手渡しているかのような気分に浸ることができる。

©︎2019 KEISUKE ITOH

 映像は360°に広がっており、上を向いても下を向いても、振り返っても作品の世界観が続いている。1度目は真正面から楽しみ、2度目以降は前回と違った視点で見ても、より深く作品を楽しむことができるだろう。実は『Feather』には、後半予想もしない展開が待ち受けている。それまで小さな世界のこととして進んでいた物語は突然大きく変わり、筆者はXR空間の驚きの技術と世界観の美しさに酔いしれることになる。何が起きるのかは、ぜひ会場に足を運び体験することで味わってほしい。

 もう一方の『Beat』は、『Feather』とは、また違った動きや視点が楽しめる作品である。本作は“ハート”を目の前のロボットにかざすことで物語がスタート。コントローラー越しに持つ“ハート”からはドクドクと脈打つ鼓動までがリアルに感じられ、目の前の可愛らしいロボットに心を奪われる。まるで動物と触れ合うような愛しい気持ちが心を満たし、ハートウォーミングな体験に癒される。

 『Beat』は “縦の動き”を感じられる作品でもある。主人公が立つステージはゴーグル内で上下に移動。実際に体験者が地上から離れることはないのだが、本当に移動しているかのような気持ちになれるのだ。この臨場感あふれる体験こそが、まさにXRならではの魅力だろう。地上にいながら、遊園地のアトラクションに乗っているかのようなワクワクした気持ちにさせてくれる。ちなみにこうした映像で乗り物酔いが心配な方もいるだろう。筆者は非常に酔いやすいのだが、12分程度の作品では体調に異変は感じなかった。XR体験は基本的に1人ずつ行われ、体験中にはスタッフがついてくれる。気分が悪くなったら気兼ねなく申し出て中断できるという配慮からは安心感も得られた。

 今回はXR体験を中心に施設をまわったが、他にも『NEUU』にはクリエイター用のワークスペースや、イベントスペース、XRデバイスの展示スペースがあり、映像体験だけでなく創る、見る、知る楽しみも味わえる。週末には「VRプロフェッショナルアカデミー」が開校するワークショップを体験できるほか、世界的なXRクリエイターを招いたイベントなどが開催される予定もあり、まだまだ広く楽しむことができそうだ。

 新宿の新たなプレイスポットとして、ぜひ訪れてみてはいかがだろう。

■関連リンク
NEUU公式HP:https://neuu.jp/

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