大規模ゲームイベントをリアル開催する意義とは? 『東京ゲームショウ2022』現地で体験した熱狂から考える

オンライン配信が一般化する今、ゲームイベントをリアル開催する意義は?

 3年ぶりのリアル開催となった東京ゲームショウだが、近年(特にコロナ禍に突入した2020年以降)は、思うようにイベントを催せない事情や、会場に足を運べない人たちのために、各社の新作情報がオンライン配信で一括して発表される流れもある。そのような時流のなかで考えたいのが、コンピュータゲームの展示会をリアル開催する意味についてだ。

 最もわかりやすいのは注目タイトルをいち早く試遊できる点だが、それだけがすべてではない。「おなじ分野に興味・関心を持つ人たちと場を共有すること」にも小さくない価値があるはずだ。実際に私は、あるブースでたまたま一緒になった初対面の方と、言葉を交わす機会に恵まれた。PCやスマートフォンの前で新作情報番組を眺めているだけでは、こうした出会いはなかっただろう。

 また、メーカー主導の発信ではレコメンドされないコンテンツに意図せず出会える点も、リアル開催に足を運ぶメリットだ。オンラインは自分がすでに知っている物事について調べたり、発信者がキュレーションした情報を受け取ったりする分には便利だが、そこにはまだ見ぬ何かとの出会い――セレンディピティがない。『東京ゲームショウ2022』に展示されていたインディーゲームのなかには、このような場に行くことでしか触れられないものもあったはず。書店やゲームショップなどで、自分が求めていた商品以外に出会い、その商品を購入するに至った経験がある人も少なくないのではないだろうか。

 この構図は、音楽の分野におけるリスニングと、ライブ・フェスのあいだにある関係性と同一である。もしそこに体験できる価値が見出されていなかったとしたら、ライブやフェスといった文化は、いまのように発展していなかったに違いない。

 とはいえ、さまざまな事情で会場へと足を運べない人たちも多くいるだろう。直近では、XR技術を活用し、バーチャル上でイベント開催する流れもある。『東京ゲームショウ2022』では、最先端のVR機器も注目を集めていた。将来的には、“仮想のリアル”を舞台にイベントが開催されるような可能性もあるのかもしれない。

 盛況のうちに閉幕した『東京ゲームショウ2022』。来年はさらに大きな盛り上がりを期待したい。

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