今夏はネコとキツネがアツい! 『Stray』と『エンドリング』から読み解く“アニマルゲーム”特有の奥深い魅力

ただひたすらに生き抜く。狐が主役のサバイバルゲーム『エンドリング』

 続く『エンドリング』は冒頭で軽く触れた通り、狐の家族を主体にしている点が特徴的な一作。と言ってもその日常は牧歌的なものとは遠くかけ離れており、「どこかにさらわれてしまった子狐を救出しなければならない」というシリアスな様相を醸し出している。加えて外界は人間や肉食獣などの外敵が目を光らせているため、何の対策も無しだとあっという間にか弱き生命が散ってしまう。それでいて自分たちも餌を確保する必要があったりと、とにかく最序盤から相応のサバイバル能力が問われるゲーム性が注目ポイントだ。

 ある時は匂いを頼りに獲物を探し出し、またある時は子狐の匂いを辿って救出地点へと駆けつけたりと、プレイヤーは厳しい環境下で日々を生き抜くべく、ハンティングと探索を否応なく両立させる能力が問われる。その過程や物語は『Stray』と異なる部分も多いが、アニマルゲームという枠内においては、”動物の所作を忠実に再現している”点で両作品は深く繋がっているように見て取れる。この辺りは2012年に発売され、人類の消えた世界で動物たちが生存競争に挑む作品『TOKYO JUNGLE』(プレイステーション3)にも通じる部分があるかもしれない。

 所作の再現性の一方、『エンドリング』は動物の立場から見た世界についても生々しく描かれている。自然豊かだった大地は環境汚染が進行。各所で研究者らしき人間たちが何かしらの調査に奔走し、心無いハンターの手によって同族の生命が次々に刈り取られているという現状は、狐の目からみても居心地が悪いのは明らかだろう。

 ただし、これが人間が主人公の作品であれば大義名分を掲げて世界の救済に赴く展開も少なくないが、『エンドリング』の主人公は狐であり、彼らの目的は先述の通り「さらわれた子狐の救出」、ひいては全生物に関わる究極の命題「種の存続と生存」にある。プレイヤー視点で見れば狐を通して作中に生じた異変を感じ取ることもできるが、当の狐たちは生き残ることが至上命題。ゆえに同作もまた、最初から最後まで”狐であること”が求められる。ゲームシステム上でしっかりと定められた生き方が、そのまま同作を根本から形成していると言って良いだろう。

 犬や猫を飼育して日々の触れ合いを楽しむ『nintendogs』(ニンテンドーDS)をはじめ、一口に動物が登場するゲーム作品と言っても、遊び方や内包しているテーマがそれぞれ異なることも多い。

 その点、今回取り上げた『Stray』と『エンドリング』は動物が主体のアニマルゲームであり、両作品とも「特定の動物になりきる」「動物の視点で世界を見つめる」という点を魅力に掲げている優れた作品だと言える。興味のある方は、人間ではない動物が主役だからこそ浮かび上がる味わい深さを一度体験してみてはいかがだろうか。

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