“生きた皮膚”を纏う指型ロボットのリアルさに驚愕 自己修復も可能? 

 人工の人間を作ることは長年に渡る人類の目標であり、その野望はギリシャ神話の時代にまで遡ることができる。しかし、今以上にリアルな人間のようなロボットの実現に近づいた時代がかつてあっただろうか。

 先日、科学者がロボットの見た目を人間に近づける新しい方法を見つけ出した。まるでホラー映画に出てくるような不気味な「生きた」皮膚ができあがった。

Robotic finger covered in living human skin

 東京大学大学院情報理工学系研究科の研究チームは、米国科学誌「Matter」のオンライン版に「培養皮膚」を持つ指型のロボットに関する論文を発表した。見た目が人間の皮膚に似ているのも無理はない。実際に人間の皮膚細胞からできているからだ。研究チームが作った培養皮膚は、人間の皮膚と同じように、水をはじいたり、自己修復能力を発揮したりできる。そして、見た目は従来のシリコンゴムで覆われたロボットに比べると、かなりリアルだ。ロボット用の新しい「生きた」皮膚は、人型ロボット工学の進歩をさらに推し進める可能性に満ちている。

 人間と生活圏を共有する上で、ロボットが柔らかい素材で包まれていることは、怪我やロボット自体の損傷を防ぐ観点から、重要だ。しかし、ロボットのために柔らかい外装を作るのは決して簡単なことではない。表面に凹凸があるようなロボットの部品の形状にも、皮膚を合わせなければならず、動きにも適応する必要があるからだ。今回、チームはこれまでとは少し違ったアプローチで皮膚の作製に取り組んだ。

 東京大学の竹内昌治教授によると、研究チームは指に合わせて皮膚を切るのではなく、別の方法を確立した。まず、コラーゲンと真皮細胞を懸濁したコラーゲン溶液を満たした円筒に、指型ロボットの中身を沈める。そうすると、激しい収縮が起こり、指型ロボットをぴったりと被覆するのだ。

 形状に合わせて被覆し、関節の動きに適応するだけでも驚くが、培養皮膚の特筆すべき点をもう1つ挙げるなら、自己修復能力だ。指型ロボットを被覆する培養真皮組織は、傷つけられてもコラーゲンシートを貼ることで修復できる。

 皮膚のような柔らかい外装は細かな傷を負いやすい。ロボットが傷を負うたびに回収して修理をするよりも、それ自体が自己修復能力を持つ方が合理的だ。

 培養皮膚は、人型のロボットの被覆材料としてだけではなく、義手・義足、化粧品や医薬品の開発、移植素材としての再生医療分野などでの活用が想定されているとのこと。不気味だというだけで、目を背けるべきではない画期的な技術だ。多くの人の役に立つだろう。ただ、どうしても不気味に感じることだけは許してほしい。

(画像=YouTube、東京大学より)

〈Source〉
https://bgr.com/science/researchers-created-living-skin-for-robots-and-its-pure-nightmare-fuel/
https://www.u-tokyo.ac.jp/focus/ja/press/z0114_00019.html

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