売り切れ続出の『太閤立志伝V DX』 歴史ゲームとして異例なヒット、その理由を考える

 『太閤立志伝V DX』が旋風を巻き起こしている。

 『太閤立志伝V』のリマスターとして、5月19日に約20年ぶりに復刻した同タイトル。最新のソフト販売数ランキングでは、週間2位にランクインした。

 本稿では『太閤立志伝』シリーズのゲーム性と魅力を入り口に、『太閤立志伝V DX』ヒットの理由を考えていく。

太閤・豊臣秀吉となり、立身出世を体験する『太閤立志伝』シリーズ

【5/19発売】『太閤立志伝Ⅴ DX』PV

 『太閤立志伝』シリーズは、1992年発売の同名タイトルを初作とする、コーエー(現コーエーテクモゲームス)開発・発売の歴史シミュレーションゲームだ。プレイヤーは太閤こと豊臣秀吉(木下藤吉郎)となり、主君・織田信長からのさまざまな命令をこなしながら、その立身出世を追体験していく。

 作中には戦国時代を生きた数々の大名家や武将、それらを巡るイベントなどが史実どおりに登場するが、「最後まで織田家に所属するか」といった部分については、プレイヤーの裁量に委ねられている。最終目的は自身または仕えた大名家が全国を統一、もしくは朝廷から最高位の官職に任ぜられること。その瞬間を目指して試行錯誤を繰り返していく点が、同シリーズのゲーム性だ。

 第2作『太閤立志伝II』以降は、豊臣秀吉以外にもプレイアブルなキャラクターが追加され、さらなる自由度がもたらされた。コーエーは自社が発表する「RPGとシミュレーションの概念が融合した、自由度の高い作品群」(※)を、独自の造語「リコエイションゲーム」と称している。

 今回発売となった『太閤立志伝V DX』は、2004年にPCやPlayStation2でリリースされた第5作のリマスター版。“シリーズ史上最高傑作”と評価する声も多い歴史シミュレーションの金字塔が、約20年ぶりに復刻した。

※『太閤立志伝』や『大航海時代』、『維新の嵐』などのシリーズがここに分類される。

ニッチなジャンルにあって、なぜ『太閤立志伝V DX』はヒットしたのか

 歴史シミュレーションは、ニッチな分野だ。大手ディベロッパーのなかで同ジャンルを主戦場とするのは、コーエーテクモゲームスくらいのもの。『信長の野望』や『三国志』といった著名な作品は、すべて同社が開発を手掛けている。そうした背景にあって、『太閤立志伝V DX』も発売前までは、ジャンルのファンや、シリーズをすでに知っているプレイヤーが購入するケースがほとんどのタイトルとなる予測だった。しかし、蓋を開けてみると、各所でNintendo Switchパッケージ版の売り切れが続出。Steam版に関しては、同時接続数が1万前後で推移する異例の状況(歴史シミュレーションでは過去最高水準)となっている。

 なぜ『太閤立志伝V DX』は、マーケットに受け入れられたのだろうか。その理由に迫るうえで掘り下げておかなければならないのが、シリーズのゲーム性や魅力についてだ。

『太閤立志伝Ⅴ DX』プレイ動画「武士編①」

 『太閤立志伝』シリーズは、難しいイメージのつきまとう歴史シミュレーションジャンルにおいて、比較的カジュアルなゲーム性を特徴としている。各作品には、兵糧の売却・購入や、軍馬・鉄砲の調達、新田の開発、城の改修、他拠点の調査、徴兵、訓練など、さまざまな主命が登場するが、それらはすべてミニゲームのような感覚で取り組める仕様となっており、そこに歴史シミュレーションらしい難しさは存在しない。合戦についても同様で、野戦、攻・籠城戦含め、(士気と兵数がメインの)シンプルな仕組みで成り立つ。同ジャンルに慣れ親しんでいない層であっても、容易に理解し楽しむことができるタイトルが『太閤立志伝』なのだ。

 おなじく戦国時代をテーマにした『信長の野望』とは、ビジュアルこそ似ているが、プレイを通じたインプレッションには明確な住み分けがある。他の歴史シミュレーションとは異なったアプローチを持つシステムと、特徴であるカジュアルなゲーム性によって支持を獲得してきたシリーズが『太閤立志伝』ということになる。

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