あの人のゲームヒストリー 第二十一回:reche

アーティスト・recheを形成する“ゲームとの日々” 大切なことはすべてRPGが教えてくれた

 ゲーム好きの著名人・文化人にインタビューし、ゲーム遍歴や、ゲームから受けた影響などを聞く連載“あの人のゲームヒストリー”。今回話を聞いたのは、EGOISTのボーカル・chellyとして知られ、2021年6月にはこれまでの活動と並行し、ソロ活動をおこなっていくことを宣言、1月1日に1st digital single「imagination」、4月12日にはcover track「桜流し」を発表したrecheだ。

 アーティスト活動では、そのコンセプトから素顔を隠して活動し、内面・外面ともにミステリアスな印象が強い彼女。ファンの間では公然の事実であるゲーム好きという一面も、まだ広くは知られていない。

 recheはどのようにゲームと出会い、どのようにゲームと歩んできたのか。「ひとりのシンガーとしての自分」にも通ずるゲーム遍歴をありのままに語ってもらった。(結木千尋)

活発な少女をオタクへと変えたゲームとの出会い

――まずはゲームとの出会いについて聞かせてください。

reche:幼いころだったのではっきりとは覚えていないんですが、初めてゲームというものに触れたきっかけは、両親だったと思います。父・母ともに息抜きにゲームをプレイすることがあって。それを隣に座って観ていたのが最初でしたね。小学校の低学年くらいだったでしょうか。

子どものころの私はいつも外で駆け回ってる活発なタイプだったので、そのときは「自分もプレイしたい!」という気持ちはありませんでした。「ゲームっていうんだ。ふーん」と横目で観ていたことを覚えています。

――それからご自身でプレイするまでに、どんな環境や心境の変化があったんですか?

reche:低学年から高学年へと成長していくにつれ、周りにもゲームを好きな友だちが増えてきて。そんななかで、家に帰れば身近なところにゲームがあるわけじゃないですか? 気づいたら自分からプレイするようになっていました。当時は、NINTENDO64の『ポケモンスナップ』や、PlayStationの『トルネコの大冒険2』でよく遊んでいましたね。

――基本的には、お父さん・お母さんの持っているハード・ソフトで遊んでいた?

reche:それまではそうでした。与えられたなかからプレイするものを選んでいましたね。でも小学5、6年生くらいになって初めて、自分から両親に頼んでPlayStation2を買ってもらったんです。能動的にゲームと関わるようになったのは、そのころからでした。いまではすっかりオタクです(笑)。

――PS2ではどんなタイトルをプレイされてきたんですか?

reche:本体と一緒に買ったのが、『ドラゴンクエスト8』と『ワイルドアームズ4(ワイルドアームズ ザ フォースデトネイター)』。「ハードを買うならソフトも必要だよね」と、両親とゲーム屋さんの売り場を見ていたとき、たまたま目に留まったのがこの2作だったんですよね。たぶんお店の売上ランキングを眺めていたんだと思います。ジャケットを見て、「うん、面白そうだ」と直感で選びました。

――満を持してのゲーム購入という経緯からすると、歯ごたえのある2作というか、骨太な作品を選びましたね(笑)。

reche:そうですね、それまでは「ポケモンスナップたのしー!」って感じだったんで、我ながら渋めのチョイスだったと思います(笑)。でも「RPGがいいなー」というイメージはあったんですよね。だから実際に遊んでみても、ギャップはありませんでした。初めて自分で選んだゲームをプレイするワクワクと新鮮さが勝っていましたね。

音楽の大切さを教えてくれた『テイルズ』シリーズ

reche

――好きなゲームジャンルはありますか?

reche:最初に手に取って以来、ずっとRPGが好きです。宝箱を探して開けてまわったり、レベルを上げたり、自分のペースでプレイできるのが性に合ってるんですよね。いまでも時間を見つけては、じっくり腰を据えてプレイしています。

――2011年にEGOISTのボーカル・chellyとしてデビューして、それからは多忙な日々を過ごしてきたかと思うんですが、現在でもゲームとの距離感は変わっていないんですね。

reche:そうですね。忙しくても自分と向き合う時間のひとつとして、ゲームをプレイする時間はできるだけ確保するようにしています。

実を言うと、私、最近まで自分がゲーム好きだと認識していなかったんです。ゲームと接点がある人はみんな、仕事を始めても自分と同じくらいプレイしているものだと思ってました。ずっと好きなものだけを追いかけてきて、ゲーム全般に詳しいわけではないので、「ゲーム好き」と名乗るのにちょっとうしろめたさがあったのもあって。でも子どものころから同じ熱量でプレイし続けているって、やっぱりゲーマーですよね(笑)。

――はい、現にこうしてゲームのことでインタビューさせていただいてるので(笑)。RPGのなかで思い入れのあるシリーズはありますか?

reche:『テイルズ』シリーズが大好きです。ほとんどのシリーズ作品をプレイしていますね。きっかけは、友達グループのなかに『テイルズ』を好きな派閥があったことでした。当時は『テイルズ オブ シンフォニア』が発売されたころで。友達が遊んでいるのを観て、「面白そうだなー」と。

――シリーズのなかでお気に入りの作品は?

reche:『テイルズ オブ レジェンディア』です。初めてゲーム音楽の世界に魅力を感じた作品ですね。『テイルズ』のようなファンタジーRPGは砂漠だったり、森だったり、それぞれに違う景色を持った国々を次々と巡っていくパターンが多いと思うんですけど、舞台が変わると、景色だけじゃなく、音楽のモチーフも変わっていくんですよね。そういうのを子どもながらにすごく面白いと感じて。

――『レジェンディア』の劇伴は椎名豪さんでしたよね。

reche:はい。それまでのシリーズ作品ではロックをベースにした劇伴が多かったと思うんですが、『レジェンディア』はオーケストラがメインなんです。シリーズ全体では異端に分類されやすい作品ですが、私のなかではこれがナンバーワンですね。『テイルズオブレジェンディア』に出会ったことがきっかけで、他のタイトルでも音楽に注目するようになりました。

――音楽を入り口に遊んだタイトルで思いつくものはありますか?

reche:『NieR』シリーズがまさにそうでした。友達が「絶対ハマるからやってみて」とおすすめしてくれて。元々、重いシナリオのゲームも好きだったんです。『NieR』シリーズって、「人間とは何か」みたいな大きなテーマが根本にあるじゃないですか。だからすっかり夢中になってしまって。ストーリーと音楽の相乗効果で、人生でも1,2を争うくらい好きな作品になりました。

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