先進的なスマートフォンを発表 「Nothing」と「OSOM Products」の共通点は“Androidの父”が残した「Essential Products」との関係性にあり

 Androidの父・アンディ・ルービンが創業した「Essential Products」は波乱続きだったように思える。同社から発売した最初で最後のスマートフォン『Essential Phone』は、世界初のノッチディスプレイ、ギリギリまで削られたベゼル、アクセサリによる高い拡張性など、当時は少なかった革新的なデザインや機能で話題になった。しかし、発売前後の度重なるトラブルや端末自体の不具合、アンディ・ルービン自身の問題などもあり、初のスマートフォン発売から約3年で閉鎖となる。

『Essential Phone』

 あれから時が経ち、今でも「Essential Products」の製品を求める声は少なくない。そんな中、先進的なデザインで注目される「Nothing(ナッシング)」、先進的なテーマで注目される「OSOM Products(オーサム プロダクツ)」から、両社初となるスマートフォンが発表された。奇しくも前述した「Essential Products」と関係性の深い企業だ。そこで今回は、「Essential Products」との関係を振り返りつつ、「Nothing」と「OSOM Products」が発表したスマートフォンに迫っていきたいと思う。

「Nothing」は後継者として囁かれたが、現在は独自路線へ

 「Nothing」は、中国のスマートフォンブランド「OnePlus(ワンプラス)」の共同設立者であるカール・ペイが退職後に設立したテック企業だ。2021年7月に透明なワイヤレスイヤホン『ear(1)』を発売し、世界のみならず日本でも話題になったのは記憶に新しい。この製品の登場によって、「Nothing」の名前は一躍広まったといえるだろう。

『ear(1)』

 同社と「Essential Products」の関係は、カール・ペイの起こしたアクションから始まる。カール・ペイは同社設立直後、自社の社名候補として"Essential"が挙がっていたこともあり、「Essential Products」の知財を買収した。それ以来、『Essential Phone』の後継機や未発売に終わった製品を発売するのでは?というウワサが後を絶たなかった。しかし現在、「Essential Products」の社名やロゴなどが使われていないことから、知財の買収は知名度を上げるマーケティングの一環だったように思える。こうした関係もあり、現在でも各媒体のインタビューで「Essential Products」に言及する機会が多い。

『phone(1)』

 そんな「Nothing」は2022年3月、同社初のスマートフォン『phone(1)』を発表した。本作の目玉は、Androidをベースに作られた独自OS『Nothing OS』の存在だ。ドットの専用フォント、独自のインターフェース、世界観が詰め込まれた純正アプリなど、随所に「Nothing」の個性が光っている。端末のデザインはまだ公開されていないが、従来のスマートフォンにおけるデザインの均一化を嘆いていることから、何らかの革新性を見せてくることは確実だ。『ear(1)』と同じアプローチなら、スケルトンの筐体が採用されることだろう。本作は2022年夏に発売を予定しており、日本語版公式ツイッターを見る限り、日本での発売も期待できそうだ。

 また同社は、近日中に『Nothing OS』のランチャーを一部のスマートフォン向けに配布する予定だ(※2022年4月26日執筆時点)。これにより、『phone(1)』の購入を考えているユーザーはもちろん、それ以外のユーザーにも「Nothing」の世界観を伝えることができる。さすがは「OnePlus」を率いていたカール・ペイのブランディングといったところだ。

 一時は「Essential Products」の後継者として話題になったが、現在、同社は強力な個性を武器に「Apple」の座を狙っている。先日の発表会で『Nothing OS』は、『AirPods』を始めとする各社製品と連携できることを強調した。エコシステムで囲い込む「Apple」に対して、各社のエコシステムと共存する道を選んだ「Nothing」の戦略は見事だ。今すぐ「Apple」の地位を揺るがすことはないが、着実に新たな選択肢としての地位を確立し、ライバルになることは間違いないだろう。

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