Apex × PUBG的な『SUPER PEOPLE』から考える、バトロワゲーの成功要件

 2017年ごろ、『PUBG: Battlegrounds』や『Fortnite』の人気をきっかけにムーブメントが始まり、一時期は『Fallout 76』のような一見無関係にも思えるほどの作品にまで搭載されるほどの熱気を巻き起こしたバトルロイヤル・シューター。あれから約5年が経った今、その勢いはある程度落ち着き、現在では『Call of Duty : Warzone』、『Fortnite』、『Apex Legends』、『PUBG』が四天王的な存在として定着していると考えて良いだろう。

 当時はこのバトロワブームに対して、あくまで一過性のムーブメントであり、やがて廃れていくだろうと考える向きが強かったように記憶しているが、先日のElectronic Arts社による2022年度第3四半期業績発表において、(老舗シューター・シリーズの『Battlefield』ではなく)『Apex Legends』の好調ぶりにスポットが当てられる場面が多く見られたように、いまやバトルロイヤルはシューターの主力ジャンルとして確固たる存在となっている(※1)。

 とはいえ、決してバトルロイヤル・シューターの現状が安定しているというわけではない。『Apex Legends』であれば一向に改善される兆しの見えないチーター問題や、その都度SNSを中心に賛否が巻き起こる武器やキャラクターのバランス調整などが大きな課題として積み上がっており、ある程度オンライン・シューターのノウハウを持っているであろう『Call of Duy : Warzone』であっても一部の有料スキン(武器設計図)が強力すぎることから、基本プレイ無料と謳ってはいるものの、実情は“Pay to Win(金を払った者が勝つ)”なのではないかという批判が相次いでいる。一方でバトルロイヤルとしては老舗の部類にあたる『PUBG: Battlegrounds』も後発のタイトルに押された影響か、基本プレイ無料モデルへと切り替え、プレイ人口の底上げを図っているようだ。『Fortnite』に関しても、著名アーティストとのコラボレーションや様々な別モードをアピールすることで差別化を推し進めているように感じられる。主力のタイトルのみが生き残り、それですら不安を抱えている今、新たなバトルロイヤル・シューターが入る余地などあるのだろうか?

 2010年に設立された韓国のデベロッパー、Wonder Peopleが手掛けた『Super People』は昨年12月に開始したクローズド・ベータテストを開始したばかりの、まさに新進気鋭のバトルロイヤル・シューターである。にも関わらず、既に約400万ダウンロードを超える好調ぶりで、ある程度勢いの落ち着いた2月下旬時点でも、Steamにおける同時接続者数が約1万人程度という人気を保っているのだ(Steam Chartsより)。日本を含め、多くの著名なストリーマーが本作の実況動画を配信しており、その名を耳にしたことがあるという人も少なくないだろう。

 とはいえ、『Super People』がバトルロイヤル・シューター界に革新をもたらすような全く新しい作品かというと、決してそうではない。むしろ、前述のような既に著名なバトルロイヤル・シューターの持つ魅力を少しずつ抽出しながら組み合わせていったような、まるでキメラのような佇まいが特徴的な作品である。

 全体的な挙動やルール、道具の扱い方は『PUBG: Battlegrounds』に近く、一つの武器・防具に複数のレアリティが存在するという概念は『Call of Duty : Warzone』を彷彿とさせる。また、キャラクターには試合ごとに独自のクラスが割り当てられ、『Apex Legends』のように特定の武器の扱いが有利になるといった複数のパッシブ・アビリティ、そして個性的かつ派手な特殊アビリティを活用することができる。この特殊アビリティがまた豪快で、一定のエリアを爆発で丸ごと吹き飛ばしたり、移動用に巨大なトラックを召喚するなど、一発でダイナミックに状況を変えられる。そして、当然のようにスキンはカスタム可能だ。既存のバトルロイヤル・シューターを遊んだことのあるプレイヤーであれば、すぐに全容を把握することができることだろう

 一見すると、それぞれの要素がぶつかってしまいそうなものだが、『Super People』はこの組み合わせ方が上手く、ゲームプレイにおいて全く違和感なく馴染んでいる。徐々に狭くなっていくフィールドの中でせっせと物資を集めては、武器・防具のレアリティを上げていき、敵と遭遇するといったここぞというタイミングで特殊アビリティを発動して、最後の一人を目指すのだ。この流れは極めてスムーズであり、仮に初めてプレイする場合であっても、どのように手持ちの材料で戦況を有利に進めていくのかを考えながら遊び続けることができる。

 そのスムーズさの要因として考えられるのが、本作における、既存のタイトルに存在していた問題を回避するための試行錯誤の数々であろう。例えば、武器・防具のレアリティに関しては、仮に拾ったアイテムが並程度のものだったとしても、フィールドに落ちている素材と組み合わせてクラフトをすることで簡単にレアリティを上げることができる。『Call of Duty : Warzone』では予め組んでおいたロードアウトをマップ上で呼び出すことで強い武器を手に入れられる(もしくはランダムでのドロップを狙う)のだが、本作ではそうしなくても自力で武器・防具を強化することができるのだ。更に本作独自のシステムとして、「レベル」の概念があり、戦闘や特定のアイテムの使用を通して自らの体力や移動速度、更には攻撃力を上げることができるため、武器の差をレベルで補うことすら可能となっている。

 また、クラスについてはランダムでの割り当てとなっており、ゲームプレイを通して集められるゲーム内通貨を使わなければ任意のクラスに変更することが出来ないという仕様になっている。言わば、『Apex Legends』のレジェンドをランダムに割り当てられるようなものであり、都度、「このクラスならどう振る舞うべきか?」を考えて行動することになるため、結果としてゲームバランスの均一化へと繋がっている。また、他のシューターと比べて、比較的キルタイム(攻撃されてからダウンするまでの時間)が長めに設定されているため、一度発見された後でも、急いで逃げて戦況を立て直すことも不可能ではない。このように、本作は様々な角度から「この状況からどう進めるか?」を考えられる場面が用意されているのだ。だからこそ、既存の作品の特徴を繋ぎ合わせたかのようなゲームシステムでありながら、それらの作品にはない独自の面白さが本作には備わっている。

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