英国人YouTuberクリス・ブロードが語る“夢”を叶えた瞬間の景色 渡辺謙と「コーヒーを飲んだ」感想は?

 去年末に、連載『ガイドブックに載っていない日本』に大幅加筆し、『世界的YouTuberになった東北在住の英国人』を出版したクリス・ブロード。

 あとがきの最後に、「まだまだやりたいことがたくさんある」と書いた彼だが、連載終了後からどんな活動をしてきたのだろうか。

 リアルサウンドテックは、クリス・ブロードに書籍を出したことでの変化や、この1年の活動を振り返り、今後の活動などについて語ってもらった。(中川真知子)

クリス・ブロード

ーー本が出版されてどう感じていますか。反響はありましたか?

クリス・ブロード(以下クリス):先日、Tokyo Creativeのスタッフと代官山の本屋に行ったんです。そこに『世界的YouTuberになった東北在住の英国人』が置いてあって、本を出版したのだと改めて実感することができました。

 本を書いたことをSNSに書いたら、視聴者から、祝福の言葉と共に「英語で書いてほしい」といったコメントが多く寄せられました。視聴者の9割が英語圏の人であることを考えれば、当然のことでしょう。読みたいのに言語の壁が理由で読んでもらえないのは、申し訳なく思いました。

ーー本のなかにも登場した日本の友人・NatsukiさんやRyotaroさんは何とおっしゃっていましたか。

クリス:Natsukiは、この本を読むまで私が何で日本に来たのかの詳しい経緯を知らなかったので、ギャップを埋める事ができたと言っていました。それと、「懐かしかった」とも。

 自分たちがどんなことをしてきたのか、どれくらい素晴らしい時間を共にしてきたのかを、本を読む事で改めて思い出したようです。

 こういうことが本を書く魅力だと思います。私たちは未来を考えるのに忙しすぎて、過去を振り返る機会を失いつつあります。執筆は、過去を思い出して噛み締めるきっかけになりました。

ーー山形で英語教師をしていたときの生徒さんから何か言われましたか?

クリス:InstagramやFacebookに、当時の生徒からコメントが寄せられました。私がこんな形で本を出すとは思わなかったそうで、驚きつつも喜んでくれました。

ーー本を書いたことで何か変わったのでしょうか?

クリス:私は常に次の目標を設定してきました。本を書いたことで、これまでに叶えたことを思い返すことができました。日本に引っ越してきたときは、自分の人生がこんなにスリリングなものになるなんて考えもしなかったので、感慨深いです。

ーー本を出すという話が来たときは、どう思いましたか?

クリス:日本で本を出すことは、バケットリストのひとつでした。しかし、いざオファーがくると怖気付いてしまって。「インポスター症候群」という言葉があって、それは自分の能力や実績を認められない状態を指すのですが、最初に本の話をもらったときは、自分にそんな資格はないのではないかと思いました。自分のキャリアは人に語るに値するほど面白いのか、などいろいろと考えましたね。でも、結果的に書いてよかったです。

ーー本の中で、これからはフィルムの世界を目指すといったことが語られていましたが、プロジェクトは動いているのでしょうか。

クリス:はい。いくつかのアイディアを形にしようとしています。自分にプレッシャーを与えるために、クリスマスに清水の舞台から飛び降りる勢いでシネマ用のカメラも購入したんですよ。

 実は、日系イギリス人のフィルムディレクターと数週間前にミーティングをしました。彼はインスピレーションを与えてくれる存在で、一緒に仕事ができればと思っています。2022年の私の最大の目標は、(体調を整えること以外に)、短編映画を制作することです。

 とはいえ、YouTubeを後回しにしてフィルムの世界に入っていくために時間をかけることは、YouTubeのキャリアに影響する可能性があり少し怖いです。しかし、長年の夢を実現するために前に進まなくては。自分の夢なので。

ーーところで、スタジオを借りたそうですね。

クリス:そうなんです。スタジオを借りて、中に大きなセットを作りました。JUR(JIYURO)という、Netflixの『今際の国のアリス』のセットを担当したプロのデザイン会社に依頼したんですよ。

I Built a Japanese RAMEN Shop in My Apartment | STUDIO Tour

 スタジオはラーメン屋と商店街という、2つのセクションに分かれています。ネオンが輝くラーメン屋はリドリー・スコット監督の『ブレードランナー』(1982年)にインスパイアされていて、商店街は1960年代の古き良き昭和の商店街をイメージしました。実際の駄菓子を陳列した駄菓子屋と電気屋が自慢です。

 私は1980年代が好きなんです。『ブレードランナー』はもちろん、『AKIRA』(1988年)も好き。だから、8月にJURのスタッフがスタジオを訪れたときに、「こっちはラーメン屋にしてほしい」「こっちには年代の異なるストリートを作ってほしい」といったふうに注文しました。スタッフは私の要望を快く受け止め、すぐにセットに必要な人を集めて作業に入ってくれました。

 実際のスタジオの組み立てが始まったのは、2021年10月。東京の巨大な倉庫で組み立てて、翌月の11月に運ばれてきました。私が仙台を離れているときにセットが搬入されたので、どのように運んだのか見ていないのです。大きなセットなのに、どうやって運び入れたのだろう。想像もつきません。

ーー大掛かりなセットを作ってよかった点をお聞かせください。

クリス:セットの素晴らしいところは、カメラがどこを捉えても画になることです。カメラを動かしながら撮影ができる。これは大きな利点です。以前は家で撮影していたので、撮影するたびに部屋を片付ける必要がありました。そういった煩わしさから解放された喜びも大きいですね。

ーー「Abroad in Japan」のチャンネルで、スタジオを借りたと言ったとき、誰がこんなセットを作ることをイメージできたでしょうか。

クリス:スタジオには、作業机やホワイトボードといったオフィス家具ももちろんあります。しかし、それ以外に「Abroad in Japan」のブランド価値を上げる何かがほしかったのです。こんな大規模な投資は一生に一度かもしれません。仙台には今後数年は確実にとどまることになりましたね。

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