累計1050億円で取引される"猿のNFT"『BAYC』 クリエイターが漏らした報酬への不満

猿のNFTクリエイターが報酬に不満

 いまや世界は「NFTバブル」に沸く人々であふれ、プログラムで自動生成されたアバター画像『Bored Ape Yacht Club(BAYC)』が数千万円で取引されるなど、熱狂的な騒ぎとなっている。

 『BAYC』は猿を模した絵柄が特徴的な「NFTアート」のひとつで、パーツの組み合わせから自動生成される絵を指すコレクションの総称として知られる。EminemやStephen Curryなど多くの著名人が大金を投じてこの絵を購入し、SNSのアイコンなどに設定していることで話題となった。同コレクションを手掛けるYuga Labs社はアメリカを拠点とする企業で、コレクションの大ヒットで膨大な売り上げを記録している。

BVAYC公式WEBサイト

BAYC公式WEBサイトより

 この自動生成される『BAYC』における帽子やアクセサリー、猿の表情などのさまざまなパーツはアーティストの手によって描き出され、そしてプログラムに組み込まれている。NFTを支持する人々によれば、アーティストたちはこの技術によって平等に富や名声を得られるという。しかし、これだけ話題となっている『BAYC』ですら、物事はそう簡単には進まないようだ。

 BAYCコレクションのリードデザイナーであるAll Seeing Seneca氏は、米Rolling Stone誌のインタビューで、NFTの世界における葛藤を語った。彼女は不思議な夢の世界を描くような作風で知られるアーティストで、同コレクションにおけるイラストの多くを担当したそうだ。もちろん、すべての帽子やシャツ、猿を彼女が描いたわけではないものの、全般のデザインを担当するのが彼女の仕事だった。

 Seneca氏はインタビューのなかで「私がこの作品を描いたことはあまり大衆には知られておらず、それはアーティストにとっては最悪な結果だ」と語る。また、Yuga Labs社から得られた報酬について、詳細までは明かさなかったものの、「理想的な報酬とは言い難い。アーティストは『BAYC』のようなプロジェクトを引き受ける前に、契約についてよく調べ、報酬やNFTについてよく学んでおくべき」としている。

 このインタビューが掲載された直後から、Twitter上では賛否両論が巻き起こった。『BAYC』の所有者ですら「「これだけの利益を上げた作品なのだから、彼女に対しての追加報酬があってもいいのではないか?」と、彼女に対して同情的な声を挙げる一方で、「売り上げに応じたロイヤリティを受け取れる契約にしなかったのではないか?」と契約の不勉強を指摘する声もある。

 ともあれ、こうした経験を経ても、彼女は今もNFTの世界で精力的に活動している。毎朝Twitterに「GM(=Good morningの略)」のツイートを欠かさず投稿し、自身の作品をNFTアートとして出品している。彼女が『BAYC』プロジェクトに参加したことは、NFT界隈における知名度の向上に確実に貢献しており、悪いことばかりではないようだ。

 彼女は「NFTの世界では、物事の移り変わりがとても早い。それから目を離さないようにしながら、自分のやるべきことに集中していればきっと上手くいく」と語っている。

Source:https://www.vice.com/en/article/y3vn5b/bored-ape-yacht-club-artist-says-compensation-definitely-not-ideal

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