意外とわかっていないテクノロジー用語解説

『USB Type-C』は理想的なコネクタなのか? ユーザーの要望を取り入れたが、新たな混乱も

 テクノロジーの世界で使われる言葉は日々変化するもの。近頃よく聞くようになった言葉や、すでに浸透しているけれど、意外とわかっていなかったりする言葉が、実はたくさんある。

 本連載はこうした用語の解説記事だ。第4回は「USB Type-C」について。スマートフォンやノートPCを中心に普及が進んでいる新しいコネクターの規格だ。

「Type-C」によるコネクター革命

 2008年に策定されたUSB 3.0では、転送速度が飛躍的に向上した反面、接続コネクタの種類が煩雑になってしまった。

 USBコネクタには当初からある「Type A」(パソコン側)「Type B」(周辺機器側)に加え、小型の機器向けに作られた「Mini-A」「Mini-B」、そしてMini規格に耐久性の欠陥があることから代わりに登場した「Micro-A」「Micro-B」、USB 3.0用に9ピンを使用する「USB 3.0 Type A」「USB 3.0 Type B」「USB 3.0 Micro-B」と、合計9種類ものコネクターが混在することになった。本来ケーブルを統一するつもりで作ったUSBがこのような状況に陥るのは本末転倒としか言いようがないし、「USB 3.0 Micro-B」などは旧来のコネクターの2倍近いサイズになってしまい、全然「Micro」ではなくなってしまった。

source by Milos.bmx(CC BY-SA 3.0)

 

 また、USBはコネクターの上下が分かりにくく、機器の裏側など見えない場所に繋ぐのが難しい、などの不満も集まっていた。そこで「上下の区別なく接続可」「さまざまな規格を統一して利用可」という基準を満たす形で2014年に登場したのが「USB Type-C」コネクターだ。24ピンのコネクターで、アップルの「Lightning」のように、上下の存在を意識することなく使える、比較的小型のコネクターである。

source by Santeri Viinamäki (CC BY-SA 4.0)

 

 USB Type-CはUSBだけでなく、「Alternateモード」を使うことでThunderbolt 3やDisplayportの信号を流すこともできる。また、2016年にはUSB Type-Cの使用を前提に、電力供給を強化した「USB Power Delivery(PD)」という規格が登場し、最大で100Wもの電力を供給できるようになった(その後2021年に登場したUSB PD 3.1では最大240Wまで拡張)。

USB PDとAlternateモードを併用すると、例えばパソコン自体がUSB Type-Cポートで充電でき、さらにそこからUSB Type-Cポートで繋いだモニターにも(最大100Wの範囲で)給電しつつ、映像信号も送れる、といった接続が可能になる。つまりDisplayPortケーブルと電源ケーブルがUSB Type-Cケーブルに集約されるわけだ。ケーブル1種類でなんでも繋がる、真に「ユニバーサル」な規格がついに登場したのだ。

USB Type-Cが引き起こした混乱

 理想的な規格に見えるUSB Type-Cだが、実は新たな混乱も引き起こしている。というのは、「USB Type-Cコネクターを持つケーブルの全てが、USB Type-Cを使う規格すべてをサポートしているわけではない」のだ。

 例えば100円ショップで販売されているUSB Type-Cケーブルのほとんどは、そもそも通信規格としてはUSB 2.0しかサポートしていない。「Type-Cのケーブル=USB 3.0以上に対応している」と思って接続するとやたら遅い……ということになる。またUSB PDにも専用のケーブルが必要なので、USB PD対応の電源アダプターと機器を繋いでみたけれど、ケーブルが非対応で充電できない、または充電がやたら遅い、ということもある。USB PDの場合、ケーブルによって対応する最大電力も違ってくる。さらにThunderboltやDisplayPortのAlternateモードについても、すべてのケーブルが対応しているわけではない(Thunderboltは特に少ない)。そして、規格によって利用できるケーブルの長さも異なる(高速な規格ほど使用できる距離は短い)。

 最後に、最高にタチが悪いことに、ケーブル単体でどの規格に対応しているかを見分けることは、プロであってもほとんど不可能だ。

 あまりに複雑な状況を生み出してしまったUSB Type-Cだが、USB 3.xでの混乱やAlternateモードを集約し、さらにThunderbolt 3をも取り込んだ「USB4」が2019年に策定された。

 USB4ではポートがUSB Type-Cに統一され、必ず映像出力(=DisplayPort Alternateモード)をサポートすることになったため、USB4対応ケーブルであればとりあえず映像出力が可能で、Thunderbolt 3との互換性があり、20Gbpsの通信速度が可能で、60Wでの電力供給が保証される。ただし40Gbpsの高速通信や100Wでの電力供給、4K解像度x2モニター出力や8K出力などは保証されない。

 実はThunderboltもアップデートしており、2020年にUSB4を包括した「Thunderbolt 4」が登場した。Thunderbolt 4対応ケーブルはUSB4のすべてのスペックを満たした上で、Thunderboltのスペックも満たしているので、最大40Gbpsの通信や100Wでの電力供給、4Kモニター2台または8Kモニター1台への映像出力が保証される。従ってThunderbolt 4対応ケーブルこそが「完璧な全部入りのUSB4ケーブル」ということになる。

全てのケーブルをThunderbolt 4ケーブルに統一できればトラブルフリーということになるのだが、現状、Thunderbolt 4ケーブルはかなり高価で取り回しもあまりよくないので、ちょっと現実的ではない。しかし1本あればトラブルの洗い出しには利用できるので、緊急時に備えて1本は確保しておくといいだろう。

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