意外とわかっていないテクノロジー用語解説

『USB』の進化を解説 コンピューターから扇風機にまで使われる汎用インターフェイス

 テクノロジーの世界で使われる言葉は日々変化するもの。近頃よく聞くようになった言葉や、すでに浸透しているけれど、意外とわかっていなかったりする言葉が、実はたくさんある。

 本連載はこうした用語の解説記事だ。第3回は「USB」について。コンピュータと各種ハードウェアを接続するためのインターフェイス(接続方式)として普及した規格だが、いまやあらゆる小型デバイスの充電や接続に使われている。その歴史と普及の経緯を解説する。

旧来規格の統一を図った野心的なインターフェイス

 USBは「Universal Serial Bass」の頭文字を取ったもので、日本語では「汎用シリアルバス」となる。「バス」というのはコンピュータと周辺機器を接続してデータをやり取りするための経路のことで、USBが登場する以前のコンピュータの周辺機器、たとえばモデムやマウス、キーボード、外付けハードディスク、スキャナーなどはそれぞれ別々のコネクターを使って接続していた。

 これではケーブルだけでも数種類用意する必要があるし、それぞれのコネクターを着脱する際はいちいちパソコンの電源を切って行う必要があるなど、非常に取り扱いが面倒だった。そこで、

「電源を入れたまま着脱できる(ホットプラグ)」
「接続するだけで認識し、自動的にドライバが読み込まれて使えるようになる(プラグ&プレイ)」
「同時に多数の機器が接続できる」
「通信規格の統一&高速化」
「周辺機器に電源を供給できる」

といった目標を設定して、米インテル社やマイクロソフトなどが7社共同で開発した共通規格がUSBだ。

 USBの最初のバージョン「USB 1.0」が策定されたのは1996年で、Windows 95 OSR2でサポートが始まったものの、当初はUSB機器自体がほとんど存在せず、なかなか普及しなかった。普及のきっかけになったのは1998年。USBの電源管理機能などを改善した「USB 1.1」が登場したのに加え、USBを正式サポートしたWindows 98や、インターフェースをUSBに統一した初代iMacが登場した年だ。特にiMacについてはそのデザイン性からカラフルなUSB周辺機器が多数登場し、対応製品に注目が集まったという点で、発売台数はともかくとも、USBの普及に一役買ったことは間違いない。

Sourse:Wikipedia(original by Rama, licensed CC-by-SA)

 

 当初のUSBはマウスやキーボード、プリンターなど比較的低速な機器の接続を想定していたため、通信速度はFull-Speedモードでも12Mbps(1.5MB/秒)と遅かった。これが2000年に登場した「USB 2.0」になると、通信速度が一気に向上する。最高480Mbps(60MB/秒)のHigh-Speedモードをサポートし、USB 1.0から40倍もの向上を果たした。

 HDDやCD/DVDドライブも実用的な速度で接続できるようになったため、当時高速通信用の主流規格だったSCSIやIEEE1394(FireWire)を置き換えるようになる。1998年にインテルとマイクロソフトはWindows PCにおいて、古いシリアルバスを完全に排除した「レガシーフリーPC」を提唱。USB 2.0の登場でこうした目標が現実的になり、徐々に現在のような「拡張ポートがUSBのみ」というスタイルのPCが登場するようになる。

 2000年代前半にはUSB接続のフラッシュメモリ、通称「USBメモリ」がフロッピーディスクやCD-Rに代わる手軽なデータ交換手段として普及した。1つで数10〜数100MBの容量があるため、大きなデータをやり取りすることもでき、キーホルダーなどに付ければ持ち運びも楽なのですっかり人気を集めたのだが、同時に紛失して機密データが流出するなどの問題も生まれることになった。

 2008年にはUSB 2.0の約10倍、5Gbps(500MB/秒)の通信速度を誇る「SuperSpeedモード」をサポートした「USB 3.0」が登場する(転送方式の仕様上、実際の通信速度は4Gbpsが上限となる)。

 USB3.0はUSB 1.1・2.0との互換性は備えていたが、実は使用している技術がUSB 2.0までとは全く異なっている。使用するピンの数が5本から9本になり、主に周辺機器側(Type B)コネクターの形状が変わったこともあり、一気にケーブルの種類が増える原因となった。

 2013年には規格が「USB 3.1」にアップデートし、通信速度10Gbpsの「SuperSpeedPlusモード」をサポートした「USB 3.1 Gen 2」が登場。さらに2017年には内部的に転送路を2つ持ち、最大20Gbps(2GB/秒)で通信できる「USB 3.2 Gen 2X2」が登場した。一口に「USB 3」といっても3つの世代があり、世代ごとに名称が変わったため混乱を招く結果になっているが、接続の互換性自体は変わらず保たれている。

大変紛らわしいが、「USB 3.2 Gen2」と「USB 3.1 Gen2」は同一の規格だ。

「電源」としてのUSBの普及

 コンピュータの周辺機器をつなぎやすくするために生まれた規格だったUSBだが、2000年代中盤には、電源を供給できるというUSBの特徴を活かした周辺機器もちらほらと登場するようになった。USBライトや扇風機など、データ通信を一切行わない周辺機器が登場したのもこの時期だ。

 今や当たり前に使われるようになった「モバイルバッテリー」も2010年ごろから登場しだした製品で、USB機器への給電ができることに加え、本体の充電もUSBから行える手軽さが受け入れられた。さらに2011年の東日本大震災などをきっかけに、重要な通信インフラである携帯電話やスマートフォンの”命綱”という認識が高まったこと、バッテリー技術の向上で小型軽量化と大容量化、低価格化が進んだことも大きいだろう。

 余談だが、USBという規格が今やコンピュータとは関係ない場所で幅広く使われるようになった結果、「USBある?」というような会話がしばしば見られるようになってきた。文脈によってUSBメモリ、またはUSB充電器を指すかが変わるので混乱の原因でもあるのだが、USB普及初期を知っている人間にとっては「こんなところまで浸透したか」と感慨深くなるシーンでもある。

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