美容室が「心の拠り所」となる場だからこそ、デジタル化が必要 サロン専用メーカー・ミルボンが『美容市場のDX』を追及する理由

美容室が「心の拠り所」となる場だからこそ、デジタルを活用していく必要がある

 現在、美容室は全国に20万軒あるといわれていて、コンビニと比べても圧倒的に多い中、人口減少に伴い客数をを伸ばすすことが困難な状況にある。

 美容市場がこれからも持続的に成長をしていくためには生産性の向上が不可欠であり、それに向け、ミルボンはデジタルに力を入れているという。

 「美容業界という言葉があるように、これまでは業界の慣習や都合ありきでビジネスを行ってきましたが、『業界』という概念で考えるのではなく、顧客視点・生活者視点でビジネスを捉えることが必要です。全国のいたるところに美容室があるということは、とても身近な存在でもあるということです。定期的に通う場所でもあり、顧客の心情に寄り添うことができる。美容室が持つ「リアルの強み」と「デジタルの価値」を融合し、もっと顧客に寄り添うことが、美容室の生産性向上につながると考えています」

「美容市場のDX」は新しい美容産業を創造する手段にすぎない

 美容室専売品をECで購入できる「milbon:iD 」や美容師のスキルアップをサポートする学習ツール「ミルボンエデュケーションiD」、世界中の美容師と美容の未来をつなぐバーチャルイベントスペース「MILBON DIGITAL ARENA(ミルボン デジタルアリーナ)」など、デジタルを活用したサービスをいくつもリリースするなど、デジタル戦略を事業成長のキーファクターの一角として位置付けている。

 美容市場におけるDXについて、どのように推進していくのか佐藤氏へ伺ったところ、「業界のソーシャルイノベーションを起こすためにデジタルを普及させていく」とし、次のように語る。

 「デジタルをやることがDXではなく、デジタルでどんなイノベーションを起こしていくのかが肝要です。デジタルツールはあくまで手段であり、美容室の持つリアルの強みとデジタルの持つ利便性や拡張性といった強みを掛け合わせることで、美容室の価値をさらに高められる。また、市場を活性化させることはもちろん、美容市場のDXを通じて今まで以上に、顧客である生活者に寄り添えるような環境を作っていきたいと考えています」

 佐藤氏が座右の銘に選んでいる「未来、それは自分の意志」という言葉にもあるように、

 同氏が見据えるミルボンの未来とはすなわち、新しい美容産業を自ら創っていくことなのだろう。

 最後に佐藤氏へ今後の抱負を聞いた。

 「コロナ禍で美容市場を取り巻く状況は大きな転機を迎えていますが、経営者として考えるべきことは、来たるべきアフターコロナに向けての成長戦略です。足元のことばかりでなく、いかに半歩先の仮説を立てて時流を読めるかがポイントになってくるでしょう。美容市場のDXを浸透させ、美容室が各地域のビューティープラットフォームとして昇華できるよう、今後も尽力していければと思っています」

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