写真の中のおばあちゃんを蘇らせる……目頭を熱くさせる感動をディープフェイクが実現
便利で豊かな世の中を目指すため、人はテクノロジーを発展し続けてきました。しかし、使われ方によっては、そのテクノロジーがまるで悪のように扱われることも。その際たるものが「ディープフェイク」ではないでしょうか。
機械学習アルゴリズムのディープラーニングを使って、ふたつの写真や動画の一部を交換できるテクノロジーであるディープフェイクは、有名人を使った情報操作やフェイクポルノ、リベンジポルノに利用されることがあり、しばしば「脅威」として問題視されてきました。
しかし、使い方によってはご先祖さまを身近な存在に感じさせてくれるみたい。MyHeritage社は、新たなAI技術を使った「Deep Nostalgia」を発表。古い写真をディープラーニングさせ、その中の人をiPhoneのLive Photoのようにアニメーションさせることができるのだとか。
動画ではなく写真の中の人物を動かす
The Mashableによると、MyHeritage社はこの技術を完全自動化にするために、古い写真からアニメーションビデオを作るアルゴリズムを構築したD-ID社と提携したそうです。これにより、ふたつの動画に出てくる人の顔をスワップさせる一般的なディープフェイクとは異なり、写真の中の人物の顔を動かすことができるようになったそう。
「私たちの新しい『Deep Nostalgia』を使えば、古い写真の中の人物がまるで動画で撮影されたかのごとく動きますよ」
誰でも無料で利用できる
「Deep Nostalgia」は無料で利用できます。MyHeritageのサイト上で動かしたい写真をアップロードすれば、既存のAI写真修正技術を使って画像を微調整した後、アニメーションをつけてくれます。
写真に複数人写っている場合、動かせるのは1人のみ。また、動かせるのは頭、顔、そして首に限定されます。しかし、制限はあったとしても、無料で使えるというのはありがたい。
というわけで、筆者が試してみたところ、色々なことがわかりました。
まず、アニメーションしたい写真は人物の顔がある程度大きく写っている必要があります。
また、顔に手などを当ててポーズをとっていると認識されにくくエラーが起こりました。
バストアップショットで、写真に1人だけしか写っていなければ写真の古さにかかわらず、認識も処理時間も短い印象をもちました。
筆者は亡き母の写真を使ったのですが、再び動いた姿を見られたことに歓喜しました。
しかし問題もあり
いいサービスですが、気になる点もあります。
「Deep Nostalgia」を使用する前にはサインインする必要があるのですが、勝手に自分のアカウントを作られてしまうのです。
私はFacebookのアカウントでサインインしたのですが、写真の加工が終わると同時にアカウントが自動生成され、アップロードした写真が一般公開されました。
プライベート設定で公開を制限することができるのですが、他のユーザーが「いいね! 」ボタンを押したり、誰が訪問したのかがトラックできるようになっていて、ローンチ当時の「Mixi」を彷彿させました。
幸いなことに、アカウントは比較的簡単に削除することができました。「本当にアカウントを削除しますか? 」といったお馴染みの引き留め作業は2回ほどありましたが、サインインしたときに使ったパスワード(筆者の場合はFacebookアカウントのパスワード)を入力すれば削除作業が完了したのでホッとしました。
「動いているあの人に再び会いたい」が叶う
「Deep Nostalgia」は、先祖の写真を動かせるという触れ込みですが、実際に使ってみたところ、先祖に限らず、最近の写真をアニメーションさせただけでも感動できることがわかりました。
筆者は亡き母と子どもが幼かった頃の写真を使いましたが、写真の中の彼らと目線が合った時は、その動きが彼らのものではないとわかっていながらも、撮影当時に戻った気がして目頭が熱くなりました。
意にそぐわず、アカウントが自動作成されたことは歓迎できませんが、「動いているあの人に再び会いたい」を叶えてくれることは、高く評価されると思います。
■中川真知子
ライター。1981年生まれ。サンタモニカカレッジ映画学部卒業。好きなジャンルはホラー映画。尊敬する人はアーノルド・シュワルツェネッガー。GIZMODO JAPANで主に映画インタビューを担当。Twitter
〈Source〉
https://www.myheritage.com/
https://www.myheritage.com/deep-nostalgia?lang=TH
https://mashable.com/article/myheritage-deep-nostalgia-old-photo-deepfakes/