日本のPodcastシーンにスターは生まれるか? 日本と世界のPodcastランキングから見えてきたこと
2020年、Podcastを巡る動きが途端に激しくなった。日本は世界のPodcastの勢いに比べればマッチを擦った程度だが、それでも、国内の各業界の人々が、Podcastで何ができるのかに気づいて動き始めた一年であったといえるだろう。
海外のPodcasterはこれまで以上に影響力を増し、日本でもPodcast市場なるものが形成され始めた。そんな中、先日Spotify Japanが発表した「国内で最も再生されたPodcast」ランキング2020。上位5番組は以下のような結果であった。
1位3位5位が、いわゆる「英語学習番組」だ。「TED Talks Daily」は英語学習のための番組というわけではないが、日本の英語学習者で、自分のリスニングスキルを強化するために「TED」を聴取するリスナーは多い。1位の「Hapa英会話Podcast」は、日米ダブルのジュン・セニサックが日本語と英語で身近な物事について話題を展開するPodcast番組で、彼が提供するコンテンツはPodcastのみならず、YouTubeや公式サイトなども人気が高い。
2位の「kemioの耳そうじクラブ」は、今年一番最初に「インフルエンサー」という立場の人が立ち上げた、いわゆる今のPodcastブームの主軸になる形式の番組と言えるだろう。国外ではすでに“インフルエンサーによるオリジナルPodcast番組”は数多く生まれていて、そうした番組が年間のPodcastランキングでもいくつも上位にランクインする。しかし、日本ではまだまだそうした大型Podcast番組は少なく、上記の通り英語学習系Podcastが根強い人気だ。現在アメリカで暮らしているkemioは、現地でPodcastの勢いやどんな番組が人気なのかを実感したために、日本で一足先にこのジャンルを開拓したのかもしれない。来年以降他のクリエイターやインフルエンサーがどんな動きを見せるのかも注目だ。
4位の「霜降り明星のオールナイトニッポン0(ZERO)」は、毎週深夜にニッポン放送で放送されている同名番組の、Podcast形式のアーカイブ音源である。ラジオ専用アプリ「radiko」でも聴取可能だが、「radiko」ではBGMや放送した楽曲が聴取できる代わりに1週間しかアーカイブが残らず、Podcastでは反対に楽曲は流せないものの過去の放送回を何度でも聴くことができる。ラジオの2次放送にも関わらず、これほどまで人気を博しているというのは驚きだ。霜降り明星の他にも、Creepy Nutsや三四郎といったパーソナリティのオールナイトニッポンもPodcastにて配信されていて、Podcastの週間チャートでたびたび上位にランクインしている。
こうしてみると、日本のPodcast市場はまだまだ未開拓であることがよくわかる。元来車文化が発達していて、ラジオの人気も根強いアメリカなどと比較すると、音声コンテンツであるPodcastがメジャーな市場になるには時間がかかるというのもよくわかる。しかし、いわゆる巣ごもり需要で、室内で過ごす時間をより充実したものにしようという動きは間違いなく日本でも起きている。とはいえ家で何か一念発起して物事に取り組むほどのエネルギーが起きにくい。だからこそ、気軽に社会と繋がれる音声コンテンツが注目されているのかもしれない。
国内でも国外でも、Podcast市場に関しては、今年から来年くらいまでにかけては投資の時期であったようだ。大手音楽サービスによるPodcast会社の買収が相次いだことが、その証拠ともいえるだろう。kemioのように率先してプラットフォームの土台固めをするインフルエンサーが増えてくれば、“Podcastは何に向いているコンテンツなのか”といったことが次第にはっきりしてきて、より具体的な成功例が浮上してくるのではないだろうか。