EXITに感じる“報道キャスター”としての素質 社会問題と向き合ってきた2人が紡ぐ「核心をつく言葉」の数々

 2020年に大活躍した「お笑い第7世代」の中で、人気・知名度ともに高いのがお笑いコンビ・EXIT。そんな彼らは、お笑い芸人としてネタ番組やバラエティ番組に出演する傍ら、ABEMAで放送されるニュース番組『ABEMA Prime』の“報道キャスター”としても活躍中だ。MC抜擢に至った理由や、過去の放送で反響のあったコメントを交えて『ABEMA Prime』報道キャスターとしての軌跡をたどる。

名実ともに今年の顔となったEXIT 次に期待されるのは“報道MC”?

 男性向けファッション・カルチャー雑誌『GQ』が主催する『ベスト・コメディ・デュオ・オブ・ザ・イヤー賞』や日経の『この1年最もブレイクした芸人1位』を受賞するなど、まさしく“2020年の顔”といえるEXIT。業界内でも『ワイドナショー』にコメンテーターとして出演したことなどでトークの才能が認知されるように。若者言葉を交えたポップな語り口で放たれる真摯で等身大な意見に、若者をはじめとする視聴者からの反響も大きかった。

 2020年4月からはABEMAの「ABEMA NEWSチャンネル」で生放送されるニュース番組『ABEMA Prime』の木曜MCに就任。チーフプロデューサーである郭晃彰(かくてるあき)氏は「正直にいうと賭けです。博打でした」と冗談交じりに答えつつ「パリピ芸人が報道番組MC、という強烈な違和感を見てみたい。これはテレビ屋としても、視聴者としても、です。また、EXITさんが連れてきてくれる視聴者は、テレビやニュースとは、遠いところにいる人たちであると思いました。若い人たちに政治や社会に関心を持ってもらうにはベストなキャスティングです」とEXITにオファーした経緯を語った。実際に、様々な時事問題に対して忖度なしに意見を述べる姿に注目が集まっている。

2人の過去の経験が核心をついた発言に繋がる

 兼近はいわゆる“貧乏”な家庭で育ち、ホームレスを経験した過去や、コンビがブレイクするまではベビーシッターのアルバイトをしていたり、りんたろー。も8年もの間、介護の現場に立っていたりと、たびたび社会問題として取り上げられる場所に深い関わりを持つ。そんな“様々な人間の立場がわかる2人”が組んでいるコンビだからこそ、彼らの言葉は刺さるのだ。

 また、兼近は芸人になる以前に逮捕された際、留置場で読んだ又吉直樹の『火花』に影響を受け、救われたことで地元を飛び出し、芸人を目指した過去を持つ。そこから読書家として様々な本を読む彼は、書籍を通して社会について考えることは少なくなかっただろう。そう考えると、社会事象を取り上げた際に、彼の口から核心を突いた言葉が次々に出てくるのはなんら不思議ではない。

MC就任初の放送では、兼近が不倫や親の離婚を独自の視点で分析(2020年4月2日放送回)

 不倫や離婚についてのトークテーマで様々な意見が飛び交うなか、兼近は「子供がいるから別れられないとか。子供がどうのって話もよく聞くんですけれども。子供は親が幸せだったらそれで幸せだと思う。子供を理由にして『あんたのせいでこの人と一緒にいることになった』とか、自分のせいで親が苦しむ姿の方が正直、きつい」と子どもの視点に立って意見を述べた。続けて「親はもっと子供に甘えるべきじゃないかなって。親が子供に甘えられないから、親はひとりで抱え込むんですよ」と、我慢せずにもっと自分の幸せを考えるべきだという持論を展開した。不倫はダメ、離婚はダメ、と否定するのではなく、どう生きたら幸せなのか前向きに考える姿勢が共感を呼んだ。

兼近が元ベビーシッターとして産後うつの原因を予想(2020年4月9日放送回)

 出産後、数週間から数カ月後の間に現れるという「産後うつ」。ベビーシッターとして働いていた経験がある兼近は「1番は十家族十色というか、『色んな形がある』というのをまずは意識してもらうのが大事だと思う。理想と現実のギャップに苦しんでると思う。特に今SNSとかで『この家族はこういう幸せそうな家庭築いてるな……』とか、いいところばかり見えちゃったりする。それと比べて『自分って今何してるんだろう?』とか、『私いつも1人で子育てだけしてるな。オシャレなカフェ行けてないな……』とか。そういう差で多分悩んだりする」と鋭い意見を述べ「でもこういうの、昔は多分無かったと思う。『子育てをするのが母親』という、洗脳と言ったら悪いですけど“一種の洗脳”状態だったんですよ。それが今SNSなどを通じて(理想の母親像が)多様化してきているせいで、悩みに繋がってるんじゃないかな?」とSNSと距離が近い今だからこその問題を指摘した。

批判されがちな芸能人の政治的発言について兼近が持論を語った(2020年5月21日放送回)

 この日は、芸能人の政治的発言の是非について兼近が本音を吐露した。「やっぱりタレントの方が発言すると、損の方が大きいと思うんですよね。僕らなんてのは特に。一般の方に向けて、皆が分かるように面白くしようとする過程で色々なことを言われるので、本当に“損”しかしない」と芸能人が発言することの難しさを述べながら「でも、それを分かった上で“自分が責任を取る”という意味で発言するのは問題ないですね。知識がなくても、『自分がこうだ』と思うことは自由に発言していいと思うんです」と、責任を取る覚悟さえあれば誰でも発言する権利があるということを改めて視聴者に投げかけた。

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