『The VOCALOID Collection -2020 winter-』特集(Vol.3)
ryo(supercell)×落合陽一が語り合う「ボーカロイドとクロス・ダイバーシティ」
「“落合陽一ロイド”を作るべき」(ryo)
ryo:自分も物は試しでボカロを作ったことがある(世間に発表はしていない)のですが、音程を3レイヤーで作って、拡張して……と、リアルに聴こえるようにするにはとにかく多くのデータが必要で、面倒なんです。しゃべり声を歌にすると、音楽的ではなく、ただ音階を出しているだけに聴こえるんですよね。
ただ、そこに感情を乗せるような技術があれば変わってくるのかもしれない。例えば、家に帰ったときに、悲しい気分だということを察知して、AIスピーカーが感情的にふさわしいトーンで声をかけてくれたりするようになれば。
落合:いわゆる「感情シンセサイザー」のような話で、研究ジャンルとしてはありますし、やるならいまという感じの技術ですね。文字とか、その上に乗っているものをパラメータ化して、音程に変化をつける、ということはできる。あとはディープラーニングを使って、そこにどういうフィルタリングをつけていくか、ということだと思います。
ryo:例えば「女子高生のしゃべり方」みたいなフィルタリングをする。
落合:そう。そういう技術がツールキットレベルで運用されるようになるまでは、あと3~4年かかるような気がします。というのも、最近、4年前くらいにできたAdobeの機械学習の機能が、一般向けのPhotoshopに降りてきているので。
ryo:ボーカロイドも、そんな時代が早くきてほしいです。
落合:ちなみに「メルト」って、なんであのタイトルなんですか?
ryo:「メルト」と「溶けてしまう」は同じことで、あまり意味がないんです。野球の長嶋茂雄さん的な英語というか(笑)。
落合:「スター、星が綺麗」みたいな。
ryo:そう! そういうことですね(爆笑)。楽曲を作る人って、「この言葉だったらこのメロディ」というふうに、自然とセットで出てくるんです。それがたまたま<メルト 溶けてしまいそう>だったという。
落合:なるほど。たぶんryoさんがびっくりするほど聴いていて、メルト10周年の「10th ANNIVERSARY MIX」もよかったです。
ryo:うれしいですね。最後にひとつ、落合さんの言葉は、語録をつなげれば勝手に歌詞になるような音節やリズムがあるので、自分は「落合陽一ロイド」を作るべきだと思っています。一時期、黒人の方が怒ってしゃべっている裏で、エレクトロニカを流すとカッコいいラップに聴こえる……というMAD動画が流行りましたが、きっとそれと同じことができるんじゃないかと。
落合:確かに僕は文章を書くとき、詩を書くつもりで書いていますね。いつか、僕の言葉に曲をつけてください(笑)。