WHOも緊急声明を発表……コロナ禍で変化する、メンタルヘルスとITの関係性

 10月に突入した今でも、新型コロナウイルスによる感染者は増加の一途を辿っており、医療機関は逼迫した状況におかれている。なかでも精神的な症状を訴える患者の数が著しく増加しており、メンタルヘルス関連サービスが崩壊状態にあることを受け、国連組織である世界保健機関(WHO)は5日、緊急声明を発表した。

 WHOは、コロナ禍真っ只中であった2020年6月~8月までの2ヶ月間、世界約130ヶ国を対象に、コロナ禍に伴い、メンタルヘルス関連サービスにどのような変化があったかを確認すべく調査を実施した。その結果、70パーセントの国では対人診療における混乱を避けるためにオンライン診療を導入したことが判明。オンライン診療の導入率は先進国で80パーセントを超えたのに対し、開発途上国では50パーセント未満にとどまっており、オンライン診療の導入に格差が生じていることが、さらなる調査により明らかとなった。

 現在、メンタルヘルス領域におけるオンライン診療は、すでに飽和状態に達している。発作が続いていたり、せん妄や薬物の禁断症状が現れたりと緊急の措置を要する症状が現れているにもかかわらず、必要な措置が施されないケースが目立っており、その数は35パーセントを超えている。

 最悪なことに、新型コロナウイルスが世界で猛威を振るい続ける限り、配偶者との死別、孤立、失業による収入の減少などを機に精神的に不安定な状態となり、アルコール・薬物への依存、不眠や不安障害などの症状を訴える患者は、今後も増え続けることが予想される。

 以上の現状を受け、メンタルヘルス事業に注力するIT企業は少なくない。例えばAppleはその企業のひとつであり、8月上旬、同社のスマートウォッチをうつ病や不安障害に適用すべく、カリフォルニア大学との共同研究を開始したと発表している。

 また、アイルランドのアルスター大学はコーク工科大学と共同で、コロナ禍で増大した問い合わせの電話に対応可能なAIチャットボット「ChatPal」を開発。アイルランドではロックダウンの数ヶ月間で電話をかけてくる人の態度に変化が見られた。ロックダウン後は朝早に問い合わせの電話が殺到し、そのうえ以前よりも電話が長引く傾向にある。1回の電話に30分以上の時間を費やされることも稀ではなく、ヘルプデスクのボランティアスタッフへの負担も尋常ではない。そこで、コロナ禍で行動が制限され、誰かとお喋りをしたいと思っている人々の受け皿として考案されたのが、メンタルヘルスおよびウェルビーイングに特化した「ChatPal」だ。

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