人気クリエイター元バディが語る、UUUMの「クリエイターマネジメント・サポート」論
今や小中学生の「なりたい職業ランキング」で上位に食い込む動画クリエイター。YouTubeでは、チャンネル登録者数100万人を超えればトップと言われていた数年前から状況は大きく変化し、ランキング上位のチャンネルは200万人、300万人を超えるものが当たり前という状況になった。YouTubeが一大メディアと化し、YouTuberがスターと化した今、「マネジメント」「サポート」と言った裏方的な役割でクリエイターに携わりたいと考える若者も増えている。
そんななか、プロ講師による実践的な授業により、YouTube等の次世代メディアで活躍するクリエイターを養成する専門校「バンタンクリエイターアカデミー」が、2021年4月に開校する。これに先駆けて、同校が中高生の若者向けの無料体験講座を行った。本稿では、講師を務めたUUUM株式会社・パディプランニングユニット統括の小俣智徳さんへのインタビューをお届けする。(桂木きえ)
クリエイターの夢を本気で叶える仕事
クリエイターマネジメント・サポートとインフルエンサーマーケティングを主な事業とするUUUM株式会社。そのなかで小俣さんは、過去には人気クリエイターを発掘し、担当してきた。講座では、小俣さんがUUUM株式会社の概要、福利厚生を含めた職場環境についてや、バディ(=UUUM独自の「マネージャー」の呼称)の仕事について紹介。また、小俣さんがバディを務めるうえで実施していたことや心がけていたこと、求められる能力や人物像についてなども語った。
2回の講座には動画業界で働くことを夢見る中高生のべ70人程度が参加し、小俣さんのクリエイターマネジメント・サポート論について積極的に質問していた。彼ら若者たちが、夢を叶えて動画業界で働くためには何をするべきなのか、どんな人物になるべきなのか。人気クリエイターを発掘・サポートしてきた敏腕バディは、どのようなことを考えながらクリエイターマネジメントに携わっているのか。講座を終えた小俣さんが、モチベーションやクリエイターとのコミュニケーションについて語る。
――講義のなかで、バディの仕事は「クリエイターの夢を叶える仕事」だとおっしゃっていました。どういったところが魅力、やりがいですか?
小俣さん(以下、小俣):ミュージシャンの方って、多くの方が「紅白に出たい」「レコード大賞獲りたい」とか、「ミュージックステーションに出たい」とか、目指す先がある程度同じイメージですよね。ほとんどの職業に、そうした”共通の目標”があると思っています。クリエイターは「今YouTubeをやっている」という共通項はありながらも、その先の"行き先"が多岐に渡っているんです。みんながみんな「チャンネルを大きくしたい」「有名になりたい」「お金稼ぎたい」という夢だったら飽きてしまう仕事かもしれないですが、クリエイターによって目指す先が本当に違ってバラバラで、だからこそバディは楽しい仕事、飽きない仕事ですね。
俳優になりたい、ブランドを作りたい、映画を撮りたいという人もいる。本当にみんなバラバラなので、それをどう叶えたらいいか考えたり、それを提案するのが楽しかったりします。その分プレッシャーも大きいですが。
――クリエイターが主体のお仕事ですが、バディさんご自身の夢や意志、生活が二の次になってしまったり、モチベーションを保つのが難しくなったりすることはありませんか。
小俣:その時その時では、「しんどいな」と思ったり、「この日用事あったのに仕事だな」と思ったりする時もあるにはあります。ただ、自分がサポートしてきたクリエイターが”晴れ舞台”でスポットライトを浴びているのを舞台袖や客席で観るときの感動が、それを上回ります。講座の中でも話しましたが、マネジメントを担当してきた「北の打ち師達」がYouTube Fanfest(YouTube主催の一大ライブイベント)に出演して、スポットを浴びながら歓声を浴びている様子を観たとき、これまでの人生でいちばん感動しました。本人たちも喜んでくれて、そして彼らが「小俣さんのお陰です」と言ってくれたのも嬉しかった。そうした言葉のためにやっているわけではないですが、自分の中の優先順位として、時間をここに使ってきたのが報われたな、と思えるのが楽しくて。そういう気持ちを何度も経験したくて(バディを)やっている感じですね。
――クリエイターの相棒、チームメイトとしての「バディ」の仕事を心から楽しんでいらっしゃることが感じられます。ご自身の気質はバディという仕事に合っていたと思われますか。
小俣:性格的に、色々なことに幅広く興味を持てる人間だったので、向いていたと思います。クリエイターって、目指す先もバラバラなら、やっていることも皆バラバラですよね。釣りをしている人たちもいれば、ゴルフしている人たちもいる。僕は、釣りにも興味があるし、ゴルフも面白いと思うし、ガジェットも好きだし。自分がクリエイターになれるほど詳しいわけではないですが、何にでもある程度興味を持てる性格だったので、どのジャンルを担当しても楽しみながら仕事してこられました。
――小俣さんのようにどんなことにでも興味を持てる人が、クリエイターマネジメントという仕事に向いているのかもしれませんね。
小俣:そうですね。どんなことでも興味を持って、専門家のようにはならなくても、ある程度掘り下げられる人は向いていると思います。逆に、単なる“御用聞き”みたいな仕事をイメージしている人は絶対に向いていないです。クリエイターの夢を叶えるまでのロードマップを引いて「今はここが足りてないから、伸ばさなければいけない」というような"コンサル"、"アドバイス"的なことができる人ではないと、バディの仕事はできないと思います。
クリエイターとの信頼関係の築き方
――クリエイターの夢を一緒に叶えていくために、普段どのようなことを考えていらっしゃいますか。
小俣:YouTuberって、昔は「家で1日1時間ゲームしているだけでお金稼いでいる」みたいなイメージを持たれていたこともありました。楽なお仕事と思われがちですが、僕からしたらテレビ番組の『笑っていいとも!』のように、休まずに毎日放送している番組を、プロデュース・出演・制作、全部ひとりでやっている人たちなんです。クリエイターはめちゃくちゃしんどいんですよ。それにプラスアルファで、視聴数や視聴者層を分析したり、今後のチャンネルの戦略を考えたり、提供案件やグッズの対応をしたり……全部自分でやれる人はいません。そのどうしても手がまわらない部分をサポートするイメージです。
――お話を聞いている中で、バディという仕事においては、クリエイターの方たちが目指していることを引き出すための関係性を築くことが重要だと感じました。コミュニケーションで気を付けている点はありますか。
小俣:人見知りのクリエイターも多いので、求めていることや目標を聞いても「あれとこれをお願いします」「夢はこういうことです」とすぐ話してもらえることばかりではありません。ひとつひとつのコミュニケーションで細かい工夫をして、徐々に関係性を作っていきながら仕事をしていきます。日々の細かなコミュニケーションの積み重ねで、心を開いてもらうイメージです。
――ご自身がバディとして「いい仕事ができたな」と思った場面があれば教えてください。
小俣:やはりインプットと知識量が多かったことですね。クリエイターは皆、真剣にやっているので当然YouTubeについて詳しいです。その彼らに信頼してもらうにはインプットや知識は重要でした。
たとえば、「この前海外の○○ってクリエイターがこういう動画を上げてました」とか「こういう企画が海外で流行ってるんです」という話が出ます。その時に、「僕海外のは観てないですね」では、当然信頼してもらえないですよね。「○○って、××の企画をやっていた人でしょ?」「そういう企画なら△△ってクリエイターもやっていたよ」と、対等かそれ以上の知識をベースに提案まで伝えられることが必要です。
そうして自分の提案を試してもらえた後は、そこに対するフィードバックと、次の行動の繰り返しになり、バディとしてうまくサポートができるようになっていきました。