“フェスアプリ”海外と日本の大きな違いは? 開発者2人に聞いてみた

メディアとしても機能する“フェスアプリ”

ーーあと、海外の事例を見ていて思ったのは、フェスアプリ自体がニュースやコラムを紐づけていて、ひとつのメディアになっているところもありますよね。Spincoasterは音楽メディアをやっている強みもあるわけで、そういった事例を活かそうと考えたことはありますか。

大川:そうですね。記事にとどまらず、連動したイベントをうち主催で開いたり、関連する特集を作ったりできれば、さらにユーザーと長く接点を作れるんじゃないかと思っています。

大山:Spincoastarで開発した『TYPICA』という音楽特化の情報アプリと連動させて、キーワードベースで届いたニュースを随時反映させることも考えられますね。極論をいえば、開催されていない期間の地域情報みたいなものを発信する場としても機能させて、音楽と地域に関心を持ってもらえるようになれば、その地域の方々にとってもプラスになったり、フェスの本番以外でもその土地を訪れるきっかけ作りになるのかなと。

ーーローカルメディアでありつつフェスでもあるという。

大川:そういう社会的意義があることはやっていきたいですね。地域密着でやっているフェスとしては、ローカルの特徴を出す形で地元企業と組んで情報発信をするのはプラスになるでしょうし。

大山:海外のフェスだとアプリ単体に地域のスポンサーが付いてる事例もあるので。

大川:これらの展開って、なかなか規模の大きい会社はできないと思うので、我々のように小回りが利く会社がやるべきなのかもしれません。

ーー「FESPLI」にメディア運営のアドバンテージが活きてるなと思ったのは、インサイトをしっかり細かいところまで取れるようになっていることで。ただ作るだけ、使ってもらうだけではなく、どのページが多くみられたか、どの物販が人気か、タイムテーブルの登録数が多いアーティストは誰か、といった、次回以降有効活用できるデータが取れるのは大きいです。

大山:例えばアーティストのプロフィールページからYouTubeやSpotify、SNSなどにどれくらいアクセスがあったのかが分かるようになっているので、「アプリを通じて音源を聴くきっかけや、SNSアカウントへのアクセスをこれだけ作っています」ということも言えるようになります。これも出演メリットのひとつとして、アーティストのブッキングに寄与できるかもしれません。

大川:次回以降でなくても数字は日々追えるので、タイムテーブルの登録者数から当日の人の動きが予測ができたり、物販をどれくらい作るか?という時の判断材料にもなりますよね。

大川:まだ実装はしていませんが、位置情報が取れれば、混雑具合をヒートマップで可視化するようなこともできるようになります。目視で会場の隅から隅まで状況を把握することは不可能ですが、データを見ることで「ここが混雑してるから動線を改善しよう」「ここのエリアが人気だから協賛ブースはここにしよう」というような提案ができるようになるはずです。

大山:そういうものがパッケージになることで、ある程度の体験を全部均質化ーー日本のフェス体験が底上げされていくのが理想ですね。

(取材・文・撮影=中村拓海)

FESPLI - 音楽フェスティバルのための公式アプリ制作サービス
WILD BUNCH FEST. 2019オフィシャルアプリのDLはこちら

関連記事