ソニーの『E3』不参加は正解だったのか ゲーム産業の変化と方針変更を考える

ゲーム産業の変化に適応したソニー。E3はどうなる?

 E3不参加の理由には、いくつかの要因があるとされるが、ソニーのリテーラー獲得方法に変化があることが一つだ。また、開発するゲームの本数を減らし、そのぶん更に高品質を目指す方針も影響した。ほかにもソニーは、6月の見本市開催では、年末商戦に向けて遅すぎるとも考えているという。近年、インターネットでニュースが瞬く間に拡散するため、発表会の存在意義もやや薄らいでいることも考慮したとされる(参考:Sony Was Not At E3 2019; Here's Why PlayStation Skipped The Big Event)。

「ソニーは、2018年のE3で、4つのゲームに集中した新たな試みを行ったが、コミュニティの反応は複雑なものだった。他社も近年、E3のプランを変更してきている。Microsoftは2018年、ロサンゼルス・コンベンション・センターのショー・フロアから、近隣のMicrosoftシアターに場所を移し、2019年も再び同じシアターを使用した。任天堂は、E3でのライブステージをやめて、事前に手短にまとめて録画したNintendo Directを放映するようになった」(上記記事より)

 E3は元々、米国という巨大な市場におけるクリスマス商戦にむけての展示会という位置づけだったが、世界的なゲーム市場の動向を掴む上でも、非常に重要視されてきた。E3開催に先立って、大手各社が記者会見を行うのが恒例になっており、ライブストリーミングも行われるようになっている。会場の周辺では、トーナメントといったゲーム関連の小規模な催しも行われている。

 2017年と2018年には、限定的に一般の入場も許されたが、流通向けの見本市という位置づけのため、来場者は基本的にゲーム業界の関係者と取材を行うメディアばかりだ。ゲーム開発会社が、販売業者と商談を行い、マスメディアを相手に大々的に発表するという骨組みは、E3が始まった当時から大きな変化はない。

 一方で、ゲーム業界を取り巻く環境は激変している。E3がゲーム業界で大きな影響力を持つイベントであり続けるためには、今後はファンが直接参加できるといった、様々な工夫が必要かもしれない。

■Nagata Tombo
ライターであると同時にIT、エンタメ、クリエーティヴ系業界にも出入りする。水面下に潜んでいたかと思うと、大空をふわふわと飛びまわり、千里眼で世の中を俯瞰する。

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