アートに新しい体験をーー名画を360度楽しめる「ViewPaint(ビューペイント)」とは
現在、印刷博物館で公開中の「ViewPaint(ビューペイント)」という絵画鑑賞システムが注目を集めている。「ViewPaint(ビューペイント)」はヨハネス・フェルメールの作品《牛乳を注ぐ女》を360度から鑑賞できる絵画鑑賞システムで、凸版印刷株式会社がVRの技術を活用し制作したシステムだ。この絵画鑑賞システムは、2012年にも展示された経歴を持ち、当時から革新的な試みとして扱われてきた。
今回の展示では、上野の森美術館で開催中の「フェルメール展」と同時期の開催となり、さらなる注目度の高さが期待される。フェルメール作品の中でも特に有名な『牛乳を注ぐ女』が絵画として、そしてVRとして新しい見方で鑑賞できる機会はまたとないだろう。
印刷博物館で行われる「ViewPaint(ビューペイント)」は、絵画の世界をさらに拡張したものとなり、特にポイントとなるのは完全に三次元空間化されているという点だ。透視図法の読み解きと、タイルやテーブルなどの現存する博物資料を、CGシミュレーションを元に完全再現している。同絵画の舞台はフェルメールのアトリエ。
この空間がVRで表現されたとなると、実際のフェルメールのアトリエを空間として体験できることとなるのだ。絵画体験としても、さらに貴重な体験に踏み込める技術と言えよう。
また、「ViewPaint(ビューペイント)」で再現された世界は、どの角度から見てもフェルメールのタッチと同じイメージが表示される仕組みになっている。これは独自のリアルタイムCG表現プログラムにて実現された。観客は、絵画の雰囲気やフェルメールの持つ個性の印象を壊すことなく、没入的な絵画体験に誘われる。絵画鑑賞の新しい形として、より作品に入り込める仕組みを採用している。VRの新技術を公開するという点だけでなく、絵画鑑賞としてもより深い楽しみ方を提案することで美術館にさらなる可能性を与えた。古典名作を扱った展示ではあるが、革新的な技術が多く使用され、今まで絵画に触れたことのない層にも響く展示となるだろう。また、今までずっと絵画に関心のあった層にも、新たな風を吹き込むシステムと言える。
本会場では、観客の動きに合わせて絵画を観る視点を変えることができる。それにより、鑑賞者はまるで額縁越しに描かれた世界をのぞき込むように絵画を楽しむことができるのだ。実際に体を動かし体験することで、さらなる没入感が期待できる。
また、今回リアルサウンドテックでは凸版印刷の担当者に取材を依頼し、このような回答を得ることができた。
ーー2012年に発表した展示との違いは?
当時は顔認識センサーによる操作としていましたが、より表示映像の鑑賞に注意が向くよう、手動の3Dコントローラーへ操作環境を改良しています。
ーーフェルメールのタッチがそのままというのはどうやって作成されているでしょうか?
絵画のタッチを損なわないように、最新の輪郭抽出や画像処理技術を応用し、3DCGでありながら、どの角度からみてもフェルメールの描いた絵画であるような印象を鑑賞者に与えています。
ーー3Dアートを見た観客の様子は?
展示の前を通過する方の多くが、一度はView Paintを操作します。展示している場所から判断して、体験型の展示の一つとして皆さん楽しまれているようです。現代の印刷の姿のひとつ、という話しをすると、さらに皆さん関心をもたれます。
この展示は2018年11月13日(火)から2019年3月31日(日)まで期間限定で特別公開される。同展示を鑑賞することで、絵画鑑賞の新しい楽しみ方が確立され、より美術が注目されるようになることは喜ばしいと感じた。
■Nana Numoto
日本大学芸術学部映画学科卒。映画・ファッション系ライター。映像の美術等も手がける。批評同人誌『ヱクリヲ』などに寄稿。Twitter
■ 「ViewPaint フェルメール《牛乳を注ぐ女》」特別展示
展示期間 :
2018年11月13日~2019年3月31日
場所 :
印刷博物館 (東京都文京区水道1-3-3)
開館時間:
10:00~18:00(入場は17:30まで)
休館日 :
毎週月曜日(ただし12月24日、1月14日は開館)、
12月25日(火)、12月29日(土)~1月3日(木)、1月15日(火)
1月22日(火)~1月27日(日)
入場料:
2018年11月13日~2019年1月20日
一般800円、学生500円、中高生300円、小学生以下無料
2019年1月29日~2019年3月31日
一般300円、学生200円、中高生100円、小学生以下無料
※20名以上の団体は各50円引き
※65歳以上の方は無料
※身体障害者手帳等お持ちの方とその付き添いの方は無料