“あの人のゲームヒストリー”第十回:YURiKA

YURiKAが語る〈Key〉作品への愛ーー『CLANNAD』好きだった少女が「願いが叶う場所」にたどり着くまで

「『夜奏花』はシンガー・YURiKAの命」

ーーその夢が叶ったのが挿入歌「夜奏花」を歌われた2018年発売の〈Key〉の新作『Summer Pockets』だったわけですね。

YURiKA:〈Key〉はそんなに頻繁に新作を出すわけじゃないですし、一度出た作品はずっと愛され続けるじゃないですか。だからそんなチャンスがすぐ来るとは思っていなかったんです。ファンだから新作が出るタイミングもなんとなくわかるので、まあ5年後かなとか(笑)。『Summer Pockets』が出るって発表された時も、まず考えたのは「どこで予約しようか」ということでした(笑)。新作の情報が発表になったのが2017年の年末ぐらいで、私が挿入歌を歌うという話を聞いたのが2018年の3月だったんです。

ーーじゃあ新作発表のタイミングでは全くただのユーザーとして受け止められていたんですね。

YURiKA:そうなんですよ。だから最初は全く実感が沸かなかったですね。3月の頭に話を聞いて、3月23日に『Summer Pockets 〜プロローグパーティー〜』というイベントでお披露目ということで時間がなかったんですけど、そこまで出ていた『Summer Pockets』の情報は全部知っていたので、準備万端でした(笑)。

ーーいつでも行けます、と(笑)。でもそんな突然オファーが来たんですね。

YURiKA:でも、その前に一度、馬場隆博社長(〈Key〉が所属するビジュアルアーツの社長)、シナリオの魁さん、作曲家のどんまるさんにお会いする機会があったんですよ。実はその時に「夜奏花」のお話はあったらしいんですけど、私は何も知らされずに〈Key〉が好きだから会ってくれましたという体だったので、ただひたすらに感謝を述べる会になってました(笑)。

ーーじゃあその時に伏線を張られていたんですね(笑)。

YURiKA:さすが〈Key〉さん(笑)。その時はオープニングは鈴木このみさんという情報が出ていたのであきらめてたんですよね。それが「夜奏花」という挿入歌を歌うことになって、しかも作詞された魁さんから「『AIR』の『青空』みたいな曲です」って言われたんですよ! あの魁さんからそれを言われるの!?って(笑)。

ーーあの好きだった「青空」を。しかも、ずっと〈Key〉作品のシナリオを書かれている魁さんですからね。

YURiKA:それで、レコーディングの前にはシナリオを全部読ませてくださいとお願いして、何度も読み込んでレコーディングに臨みました。「夜奏花」は隠しルートみたいなところで流れるので、ヒロイン4人を全部知らなきゃ歌っちゃダメだと思いましたね。〈Key〉の楽曲はシナリオライターさんが歌詞を書かれるという良さがあると思うんですけど、「夜奏花」も「絵本」「紙飛行機」という歌詞が出てきて、曲が流れるまでのシナリオを知らないとなぜそんな言葉が出てくるかわからないので、全部理解しておかないと思ったんです。作曲は竹下智博さんという方なんですが、聴いた時から〈Key〉らしさを感じる曲で、それに寄り添っていけるように、と思いながら歌いました。

ーーレコーディングは緊張されましたか?

YURiKA:まず歌っていると途中で泣いてしまうので、ゴールできないんですよ(笑)。だから泣かない練習をして、やっとゴールできた感じでした。レコーディングはビジュアルアーツのスタジオで行ったので、ここで〈Key〉の名曲がレコーディングされたんだと思うと、空気吸っておこうと思ったりして(笑)。ディレクションは竹下さんがされたんですが、いつもは私のプロデューサーの水野さんなので、初めて別の方にディレクションをしてもらうという経験をしました。でも伸び伸び歌わせてもらいましたね。

ーーYURiKAさんからご覧になって『Summer Pockets』の魅力はどんなところだと思いますか?

YURiKA:『Summer Pockets』は原画やシナリオに新しい方が加わって、新しいんですけど〈Key〉のこれまでのシナリオを思い出させるようなところがあるんです。『Kanon』の真琴や『AIR』の観鈴をちょっと思わせるようなシナリオがありますし、『リトバス』のような男子キャラの友情もありますし、今までの〈Key〉のいろんな要素が入った作品だと思います。

ーー確かに新しいけど〈Key〉らしさを随所に感じますね。

YURiKA:初回版に同梱されるブックレットで、麻枝さんが「〈Key〉は健在でしたか? 答えはユーザーのみなさんに任せます」というようなことを書かれているんですよ。だからユーザーさんの感想としては、「感動した」「泣いた」というのもありますけど、まず「〈Key〉は健在でした」というのがひとつのパワーワードになっていましたね。あと、これはスタッフの方にうかがったんですが、オートモードでプレイしていると、一番いいシーンで曲のサビが来るようにタイミングが調節されているらしいんですよ。1周目と2周目で口調が違うとか、「作り手」の側に回って初めて気付いたこともたくさんありました。本当に大げさじゃなく「夜奏花」という曲はシンガー・YURiKAの命なんですよ。この作品に関われてよかったと心から誇りに思える作品です。

ーーこの作品がきっかけで、Liaさんとも会われたんですよね。

YURiKA:Liaさんはこの前のライブにもお客さんとして観に行ったぐらい好きなんです。1日目のチケットをプレゼントしていただいて、しかもそれを発券してみたら最前列だったということがありました(笑)。LiaさんとはKSLライブの時に初めてお会いしたんですが、私のことを知っていてくださっていて、「いつか一緒にステージに立てる日を楽しみにしてるね」っておっしゃって、もう「これは夢かな〜」みたいな(笑)。今のYURiKAの歌い方のイメージとはかけ離れていると思うんですけど、一番目標にしているのはLiaさんなんです。主題歌って楽曲が強すぎて作品の印象が弱くなるのもダメだし、作品に頼りすぎてもダメだと思うんですけど、Liaさんの歌はちょうどいいバランスで、作品と一体になっているんですよね。そこが本当にすごいと思います。

ーーそんなLiaさんをはじめとする〈Key〉の楽曲への想いを届ける機会として、〈Key〉のカバーライブ「YURiKA Cover Live 願いが叶う場所 〜Keyと私〜」が行われるわけですね。

YURiKA:そうなんです! ライブのタイトルは「願いが叶う場所」という『CLANNAD』の曲から取っています。まずカバーライブを許可してもらえたことが前代未聞ですよね。アニメの有名な曲だけでなく、通好みのゲームの曲も歌ったりするので、〈Key〉の方から許可をいただく時に「ほう、この曲も歌いますか」みたいなことを言われました(笑)。ただ作品別に並べるだけじゃなく、ストーリーっぽく曲を並べて、ここでこのイントロ来たら頭抱えるなとか想像してセットリストを作ったので楽しかったですね(笑)。〈Key〉を好きな方はもちろん、私のファンの方で〈Key〉は知らないという方にも楽しんでいただけると思います。何しろ単純に曲がいいので。座って落ち着いて曲を聴いていただくという機会もYURiKAとしては初めてなので、そういう一面も見ていただけたらなと思います。

ーーこれをきっかけに〈Key〉作品のファンになる方もいるでしょうね。

YURiKA:以前、〈Key〉のファンの方から「YURiKAさんは〈Key〉の救世主、期待の星だと思っています」と言っていただいて、「いや、〈Key〉は健在だし救世主なんて」と思いつつもすごくうれしかったことがありました。これからは、私が好きなゲームについて知ってもらえるきっかけになるような「期待の星」になりたいですね。私の「人生」を変えてくれた〈Key〉にも、もっと恩返しができたらなって思います。

(取材・文=金子光晴/撮影=三橋優美子)

■公演情報
『YURiKA Cover Live 願いが叶う場所 ~Keyと私~』
日時:1月27日(日)昼の部 開場13:30 / 開演14:00 夜の部 開場17:30 / 開演18:00
会場:代官山LOOP
チケット:座り6,500円+1D ※完売
チケット:立ち見席 価格や発売周りの詳細は12月9日17時イープラスにて掲載予定

『YURiKA Cover Live 願いが叶う場所 ~Keyと私~追加公演』
日時:2019年2月3日(日)
開場 11:30 / 開演 12:00
会場:Yokohama O-SITE
チケット:座り6,500円+1D
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■関連リンク
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