杉山すぴ豊が語る『東京コミコン2018』 コスプレや来日で年々熱を増す『コミコン』の魅力とは
こうした空間を様々なキャラに扮したコスプレイヤーたちが歩いている。ジェダイの騎士団とホグワーツの魔法校の生徒たちがいるかと思えば、アベンジャーズとジャスティス・リーグが談笑している。ゾンビもいれば『13日の金曜日』のジェイソンもいる……会場自体が『レディ・プレーヤー1』みたいな世界です。
コミコンに参加しながら感じることは、コンテンツの楽しみ方が変わったということかもしれません。今回日本公開30周年を記念して、出演スターであるピーター・ウェラー氏を呼んでの『ロボコップ』の上映会がありました。『ロボコップ』は『東京国際ファンタスティック映画祭』で上映されましたが、一昔前は”映画は観て楽しむ”ぐらいしか楽しみ方は無かった(それでも十分楽しかったですが)。でも今は、例えば好きな映画のグッズを買ったり、そのキャラのコーデやコスプレをして楽しんだり、周りに同好の士がいなくても、ネットで同じ趣味の人間と会ってオフ会して盛り上がったり、自分の意見をSNSやブログ等で発信したりとそのコンテンツをもっと自分の中にとりこんで楽しんでいる感じです。
そうしてため込んだ「好きだ」という想いを放電する場として、こういうコミコンが機能しているのかもしれません。面白いなと思ったのは今回花王さん(ビオレ)が出展したことです。ビオレとスーパーヒーローって全然接点がないですが、コスプレイヤーを応援したい=コスプレーヤーのメイク落としにビオレ、という切り口で納得の参加。そうそう、女性の参加者が多いのも特長です。また海外のコミコンと比べ食事=ケータリングがおいしいのも特長。有名なちゃんこなべをハーレイ・クインの集団が食べている光景はほほえましく、またこれが東京コミコンなのです。
セレブが登壇してファンに挨拶するステージも人気ですが、僕は、今回トム・ヒドルストン氏やラーナー・ダッグバーティー氏等のステージのMCを務めました。そのとき心がけたのは、このステージは決して記者会見の場ではない、ファン・ミーティングなんだということです。もともとコミコンの「コン」がコンベンション=交流の場なのだから、いかにファンとゲストが一体化になれるかでした。今回参加されたゲストがみんな素晴らしかったのですが、とにかく会場にいるファンの温かさと熱さに助けられましたし、「わたしは、僕はこれが好きなんだ」という気持ちから発せられるオーラというものを本当に感じました。「批評家は減点法で、オタクは加点法でみる」という名言がありますが、このコミコンには”加点法”しかないのです。DCキャラのコスプレ・コンテストに参加したエズラ・ミラー氏がコスプレーヤーたちを背に、「ここにいるみんなが僕の家族だよ! 僕たちオタクはunderdog(負け犬)と思う人いるかもしれない。でも こうしてみんなが集まる姿を見て思うのは、僕たちを見くびるな! ってことさ」と胸熱スピーチ。これがコミコンの本質であり魅力だと思います。
最後に『東京コミコン』が世界的に認められた大きな理由は第一回、第二回にスタン・リー氏が参加し、お墨付きをしてくれたことです。今回、氏を偲ぶコーナーが設けられ、多くのファンがメッセージを寄せていました。改めてスタン・リー氏に感謝したいと思います。『東京コミコン』もまた、スタン・リー氏の作品の一つではないでしょうか? ファンとともに、大切にしていきたいです。
■杉山すぴ豊(すぎやま すぴ ゆたか)
アメキャラ系ライターの肩書でアメコミ映画に関するコラム等を『スクリーン』誌、『DVD&動画配信でーた』誌、劇場パンフレット等で担当。サンディエゴ・コミコンにも毎夏参加。現地から日本のニュース・サイトへのレポートも手掛ける。東京コミコンにてスタン・リーが登壇したスパイダーマンのステージのMCもつとめた。エマ・ストーンに「あなた日本のスパイダーマンね」と言われたことが自慢。現在発売中の「アメコミ・フロント・ライン」の執筆にも参加。Twitter