Apple、音楽分析サービスのスタートアップ買収 アーティスト発掘でSpotifyと競争激化か?

 「Apple Music」を提供するAppleは、音楽ストリーミングサービス業界においては後発組だったものも、そのブランド力を生かして今ではSpotifyの強力なライバルとなっている。こうしたなかAppleはあるスタートアップを買収したことで、さらにSpotifyとの対決姿勢を強めそうだ。

「誰よりも早く次のジャスティン・ビーバー」を発見するAI

 海外総合ニュースメディアCNBCは16日、Appleが音楽分析サービスを提供するスタートアップAsaiiを買収したことを報じた。Asaiiが開発した音楽分析サービスは、人工知能を活用してユーザの好みに合わせて楽曲を収集したり、おすすめのアーティストを紹介する機能を実装している。おすすめのアーティストはユーザの好みに合致するだけではなく、紹介してから10週間から1年以内にヒットチャートにランクインすることが保証されている、とのこと。こうした機能を解説したウェブページによると、「わたしたちのアルゴリズムは次のジャスティン・ビーバーを誰よりも早くみつけることができる」そうだ。

 今回の買収以前の2017年12月には、Appleは音楽認識アプリ「Shazam」を開発する企業を買収しており、音楽ビジネスへの投資に余念がない。ちなみにShazamは、街中で流れている音楽の楽曲名を認識するというアプリである。

 今回の買収に関してAppleはコメントを拒否したのだが、Spotifyに対抗するためにApple Musicの機能を強化することが目的だと推測されている。

「次のジャスティン・ビーバー」争奪戦が始まる?

 US版TechCrunchは、16日に公開した件の買収を報じた記事において、Appleの既存音楽サービス「Apple Music for Artists」に言及している。今年1月にベータ版がリリースされた同サービスを使うと、Apple Musicに楽曲を配信しているアーティストが楽曲の再生回数やリスナーの年齢や性別といったマーケティングにおいて重要な属性情報を知ることができる。もっとも、このサービスはアーティストが利用することを想定されているのに対し、今回の買収で得た音楽サービスは消費者も利用できるものと考えられる。それゆえ、今回の買収はAppleの音楽サービスを補完することになる、とTechCrunchの記事は考察している。

 US版Engadgetの記事は、音楽ストリーミングサービスの台頭によって音楽レーベルがアーティストを発掘し囲い込むという伝統的な構造が解体しつつあることを指摘したうえで、AppleとSpotifyがともに自社の音楽サービスのために新人アーティストの発掘に注力するだろう、と評している。新人アーティストの発掘に際しては、「次のジャスティン・ビーバー」を予想するAsaiiの音楽分析サービスが非常に役立つことは間違いない。

 テック系メディア『The Verge』は、Spotifyが先月にアーティスト向けサービス『Spotify for Artists』のベータ版をリリースしていることを報じている。このサービスを使えば、インディーズのアーティストが自分の楽曲をSpotifyに配信し報酬を得ることが可能となるのだ。さらに同メディアは、無名のアーティストをより多く囲い込むことが、音楽ストリーミングサービスを競合サービスと差別化することにつながる、とも述べている。

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