『ロックマン11 運命の歯車!!』の前に振り返りたい、“もう1つの9作目”=『ロックマン&フォルテ』

 シリーズ8年ぶりの新作『ロックマン11 運命の歯車』の発売日(10月4日)が迫ってきた。

『ロックマン11 運命の歯車!!』プロモーション映像 第2弾

 ロックマンシリーズは2016年にかけて発売された『ロックマンクラシックスコレクション』、『ロックマン クラシックスコレクション2』の二作によって、現行の家庭用ゲーム機で本編シリーズ10作を遊べる環境が整えられている。

 また、ゲームボーイで展開された『ロックマンワールド』も、シリーズ全五作がニンテンドー3DSのバーチャルコンソール用タイトルで復刻しているほか、『ロックマン バトル&チェイス』、『ロックマン パワーバトルファイターズ』と言った番外編もゲームアーカイブズで配信中だ。

 とは言え、復刻されてない作品も少なくない。特にその中で際立つのが『ロックマン&フォルテ』だ。

急な次世代機進出へのお詫びから作られたロックマン

 『ロックマン&フォルテ』は、1998年4月26日にスーパーファミコン用ソフトとして発売された。シリーズの時系列では、1996年12月17日に発売された『ロックマン8 メタルヒーローズ』の流れを汲む新作で、番外編に位置付けられた作品である。

 前作『ロックマン8 メタルヒーローズ』は、プレイステーション、セガサターンという当時の次世代機用ソフトとしてリリースされ、前々作『ロックマン7 宿命の対決!』から更にパワーアップした演出で話題を呼んだ。だが、前々作でようやくスーパーファミコンに進出して間もなく、早々と次世代機に移ったことがシリーズの主要ターゲットである低年齢層に大きな負担を与える形となり、遊びたいのにゲーム機がなくて遊べないプレイヤーを少なからず出すに至ってしまった。

 実は筆者もそのような体験をした人間の一人である。当時の私は、今のように自分の意志でゲーム機やゲームソフトを買えず、親にねだるなり、小遣いを溜めて買うしか選択肢がなかった。また、次世代機にロックマンの新作が出ることなど全く知らず、丁度その頃に出て間もない任天堂の次世代機『Nintendo 64』を親にねだる形で買ってしまっていた。後に気付いた時には後の祭り。小遣いは足りない、親からもこれ以上ゲーム機を増やすなと叱責されていたのもあり、泣く泣く見送ることになった。以降、私は長らくロックマンシリーズを追えなくなるのだが、その話は置いておくとして。そんなプレイヤーが居たのを受け止め、作られたのが本作であったと、当時のシリーズプロデューサーだった人物は関連書籍にて述懐している。既に第一線を退いていたゲーム機で、ロックマンの新作が出ることに驚きを感じたプレイヤーは当時、少なくなかったと思われる。

 内容はそれまでのロックマンシリーズと変わらない、横スクロールのアクションゲームである。絵的には前作『ロックマン8 メタルヒーローズ』を踏襲していて、敵キャラクターのほとんどは同作に登場した面々になっている。

 しかし、ステージは完全新作。登場するボス達も二体を除き、新規のキャラクターになっている。何より注目すべきが、前々作『ロックマン7 宿命の対決!』で初登場したロックマンのライバル「フォルテ」のプレイヤーキャラクター昇格。

 ゲーム開始時にロックマン、フォルテのいずれかを選べるようになり、それぞれ異なる戦術でゲームを進めていけるようになった。フォルテのアクションも通常攻撃は弾を連射するマシンガンタイプ、ジャンプは二回連続で行える(二段ジャンプ)、対応するボタンを押すと横にダッシュするなど、ロックマンと大きく差別化されている。更に選んだキャラクターによって会話イベントの内容も若干変わる仕掛けも盛り込まれ、一粒で二度おいしい作りへと進歩を遂げた。

 この設定を反映し、ストーリーも宿敵ドクター・ワイリーの新たな城を奪った「キング」なる敵を打倒すべく、ロックマンとフォルテが共同戦線を組むという内容に。被害を受けたワイリーがロックマンの味方として加わる構図は、後発の『ロックマン10 宇宙からの脅威!!』と一緒で、シリーズを遊び続けたプレイヤーにはとても興味深い内容になっている。

 同作におまけキャラクターとして参加しているフォルテのアクションの原点も本作だ。また、派生作『ロックマンX8』に登場するプレイヤーキャラクターの一人「アクセル」のアクションも、本作のフォルテを下地にしている。特にマシンガンタイプの攻撃にその名残が強く現れているので、X8をプレイした後に本作をプレイすると、感慨深い手応えを得られるだろう。

シリーズ随一の高難易度とそこに込められた意図

 更に本作の特筆すべき点として、シリーズでも随一の高難易度がある。『ロックマン4 新たなる野望!!』で初登場し、以降、基本アクションとして定着した「チャージショット」を採用したロックマン作品は、難易度が控え目に調整される傾向にあった。

 本作はその傾向に歯向かうが如く、道中、ボス戦共に苦戦の免れない難易度に設定された。特にステージは難所に次ぐ難所の連続。オープニングステージからいきなり難しく、ジャンプの飛距離を狭める雨風が吹き荒れる地帯を潜り抜けるなど、肩慣らしの難易度に設定されていた過去作とは明らかに違うものになっている。

 ボスも強敵揃い。弱点の特殊武器を当てれば大ダメージを与えられるのは過去作を踏襲しながらも、動きが機敏であるのに加え、武器の使い勝手にも癖がある所為で、上手く状況を見極めて繰り出すことが要求される。更にあるボスに至っては、禁断の体力回復技を繰り出してくる。もし、完全に回復され、弱点の特殊武器が使えない状況にあれば、その後、どうなるかは言うまでもなく。

 このような難易度にされたのは、「今更、スーパーファミコンで出すのだから、徹底的に歯応えのあるものにする」との方針から来ているようで、シリーズを全てクリアしてきたプレイヤーですら苦戦は避けられないものになっている。

 ただ、失敗と再挑戦を重ねるにつれ、突破口が見えてくるバランスで、理不尽さは抑えられている。何より、チャージショットのあるロックマンの難易度は控え目という傾向に待ったをかけた調整には、歯応えのあるアクションゲームを多く作ってきたカプコンのお家芸が込められている。シリーズにやり応えを求めているプレイヤーなら、本作はプレイ必須の一作と言えるだろう。

 また、ボスに関しては、ロックマンシリーズと縁のある三名の漫画家(ありがひとし、岩本佳浩、出月こーじ)がデザインしているのも見所。更に『ロックマン8 メタルヒーローズ』からテングマン、アストロマンの二体が続投しているが、彼らの攻撃パターンも一新されている。前作経験者も新鮮な気持ちで戦えること間違いなしだ。

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