加藤よしきの“ゲームのいけにえ”

『スターフォックス64』が教えてくれた“対戦”の楽しさ 学校の看板を賭けた隣町の少年との勝負

 ある日、何気ない会話から“それ”は始まった。「加藤はゲーム苦手よね」という会話の中で、たしか自分で言ってしまったのだと思う。「ちょっと古いけど、『スターフォックス64』だけは自信あるよ」と。恥ずかしながら、イキったのである。今になって思えば、自分で言うほどのレベルではなかった。2018年現在、ネットに上がっているプレイ動画を見れば、当時の私がやっていたのは文字通り児戯に等しい。しかし、話していた友人は思わぬ言葉を吐いた。「隣り町にメチャクチャ上手い子がいるのよ。そいつと対戦してみない?」

 やべぇ……と思った。私はスコア・アタックに夢中だったが、『スターフォックス64』には対戦モードもあったのだ。狼狽する私をよそに、友人はあっという間に場をセッティングしてしまった。子どもはお祭りに餓えている。しかも「学校の看板(※いつの間にか背負わされた)を賭けたゲーム対決」なんて、まるで漫画のような展開だ。絶対に裏で金を賭けていた奴もいたと思う。

 迎えた勝負当日。友人の部屋には入りきらないほどの人間が集まった。日ごろ全く交流のない同級生や、さらには対戦相手の学校の応援まで来たのだ(このことからも絶対に裏で金が動いていたと思う)。しかも、友人の母は優しく、子どもたちにカルピスを振る舞った。完全にお祭りだが、私は胃に穴が開きそうだった。ただでさえ対戦が苦手な上に、見ず知らずの、しかも別の学校の人と対戦するのである。おまけに……普通に私が勝ってしまったのだ。ギリギリの勝負ではなく、アッサリと決着はついてしまった。二年間やり込んでいた成果が良くも悪くも発揮されたのだ。

 あの静まり返った空気は今でもハッキリ覚えている。勝者と敗者。勝負をすれば、当然その二者が出る。しかし、結果をどう受け入れるかは別の話だ。私はゲームセンターで敗北に納得がいかず暴れる人を見ていた。他人の家に集まってゲームをする時でもそうだ。私は負け慣れていたが、時には負けて逆ギレする者がいた。静まり返る室内で、わざわざ隣町から来てくれた対戦相手はこう言った。「こいつ凄いよ! もう一回やろう!」

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