『進め!キノピオ隊長』レビュー:名作パズルアクションの遺伝子を受け継ぐ、箱庭アドベンチャーの傑作

箱庭空間に詰め込まれたアイデアの数々

 そんな本作だが、実は原作が存在する。その原作とは、2013年に発売されたWiiU用ソフト『スーパーマリオ3Dワールド』。同作にはキノピオ隊長を操作して五つの「グリーンスター」回収を目指す、その名も「キノピオ隊長コース」なる小さな箱庭空間を舞台にしたコースが用意されていた。いわば本作はそれを単独作品化したもの、スピンオフなのだ。

 ただ、ゴールこと「パワースター」への到達がコースのクリア条件になっており、全体的な仕組みは原作から大きく一新されている。

 キノピオ隊長も原作だと、「ジャンプができない」ことぐらいしか特徴がなかったが、本作では「ヒキヌケ草」と呼ばれるコース上に生えた草を引っ張ったり、そこから出てきた「カブ」を投げるなど、新たなアクションが追加され、できることが増えている。

 また、「スーパーツルハシ」なるアイテムを取れば、一定時間ツルハシを振り続けて敵からブロックまで、一撃で粉砕できるようにもなる無敵状態に。さらに頭に付けた「ヘッドライト」も暗闇を照らしたり、オバケの敵(テレサなど)に浴びせ続ければ撃退できるなど、ただの飾りだった原作から大きく進歩している。

 ステージもよりバリエーション豊かに。トロッコに乗ってカブを投げ飛ばしながら敵を倒していく強制スクロールコース、敵に見つからないように行動していくステルスコース、更にはボス戦と、起伏に富んだ展開が楽しめる内容になっている。

極め付けには本作のヒロイン、「キノピコ」が主役になる驚きの展開も……。

 いずれの要素もゲーム全体の面白さを底上げするものとして機能しており、原作を遊んだことのあるプレイヤーも新鮮な気持ちで楽しめる作りになっている。コースの数も70以上に加え、似通った構成のものはほとんど無しというこだわりぶり。小さな箱庭空間に詰め込まれた豊富で、遊び心に満ちたアイディアの数々には職人技を思い知らされること間違いなしだ。

静かに息づく、名作の遺伝子

 90年代に任天堂より発売された、名作パズルアクションの遺伝子が全編に渡って息づいているのも大きな魅力。バラエティー豊かで密度の濃いコース、優しすぎず難しすぎずの絶妙な難易度、分かりやすくも新鮮なアイデアの数々には、『ドンキーコング(※1994年版)』、『モグラ~ニャ』を遊んだことのある世代であれば、その頃の作品が装いも新たに帰ってきた感動を味わえる。

 特に『ドンキーコング』は実際に元ネタとしたコースがあるほか、「スーパーツルハシ」を取った時に流れる音楽が同作のハンマーの曲のアレンジであるなど、遊んだことのあるプレイヤーほどニヤリとしてしまうサービスが満載。細かいネタだが、「カギ」を持ち運んで開ける扉の仕掛けも、1994年版のドンキーコングそのまま。これまた、遊んだことのあるプレイヤーをニヤリとさせる。

 キノピオにちなんだネタも豊富。「ヒキヌケ草」から「カブ」を持ち上げ、投げて攻撃するアクションはキノピオが初めて操作キャラクターとして参加した『スーパーマリオUSA』のオマージュである。

 道中、同作でデビューした雑魚敵「ヘイホー」が頻繁に登場するのも同作を想起させる。彼らのリアクションも可愛らしく、特に追跡したキノピオ隊長を見失った後、ガックリ落ち込む姿は必見だ。

 そして、本編でキノピオ隊長の前に何度か立ちはだかる巨大なドラゴンこと「ドラゴドン」。このキャラクターも、キノピオの初主演作『ワリオの森』に「ドラゴ」というドラゴンのボスがいたのを思い起こせば、ほのかに因縁を感じさせられる。

関連記事