『進め!キノピオ隊長』レビュー:名作パズルアクションの遺伝子を受け継ぐ、箱庭アドベンチャーの傑作

 任天堂の看板タイトルにして、世界的な人気を誇るマリオシリーズには、主人公のマリオを始め、数多くの個性的なキャラクター達が登場する。その中にはマリオの弟ルイージ、ヒロインのピーチ姫、相棒の「スーパードラゴン」ことヨッシー、自称マリオの幼馴染でデビュー作(スーパーマリオランド2)では悪役だったワリオなど、単独の主演作を勝ち得たキャラクターもおり、一部はシリーズ化を遂げるほどの人気を獲得している。

進め!キノピオ隊長 紹介映像

 今回紹介する『進め!キノピオ隊長』は、シリーズではピーチ姫のお守り役として登場する人型のキノコ「キノピオ」の主演作だ。厳密には、2007年に発売されたWii用ソフト『スーパーマリオギャラクシー』で初登場し、以降、3Dマリオシリーズの常連となった冒険家のキノピオ「キノピオ隊長」をフィーチャーしたもので、またキノピオというキャラクターとしては、通算二本目の主演作となる。

 キノピオが初めて主演を務めたのは1994年、ファミリーコンピュータ用ソフトとして発売されたアクションパズルゲーム『ワリオの森』。タイトルに名前こそ冠していないが、妖精の森を乗っ取ったワリオの悪事を阻止すべく、爆弾を武器にモンスターの大群、悪魔に人魚、更にはガイコツの魔術師とまで戦う勇姿が描かれた。ゲーム性に癖はありながらも、ルールを理解すれば時間を忘れてハマってしまう高い中毒性、歯応えのある難易度に魅了されたプレイヤーも少なくないはずだ。

 本作はそんな同作から約20年ぶりにして、初めてタイトルにキノピオの名が冠せられた記念すべき作品。2014年11月12日にWiiU用ソフトとしてリリースされ、2018年7月13日にはNintendo Switch、ニンテンドー3DS向けに新たな要素を追加して移植された。

様々な角度からコースを眺め、スターに辿り着け

 内容は「箱庭アドベンチャー」なる、ステージクリア型のパズルアクションゲーム。主人公のキノピオ隊長を操作して小さな箱庭ステージを駆け巡り、ゴールこと「パワースター」への到達を目指すというのが大まかなルールだ。

 最大の特徴は、「視点(カメラ)操作」に着目した遊びだ。本作は平たく言えば、3Dのアクションゲームなのだが、視点は完全に固定されていて、ステージを進んでいくと、プレイヤーキャラクターのキノピオ隊長の姿が隠れてしまったり、地形の全体像が分からなくなってしまう。時にはどちらに進んだらいいのか、道が分からなくなることも。

 そこで用いるのが、右スティックをでのカメラ操作だ。これでキノピオ隊長の姿を捉える視点に調整し、時には角度を変え、ゴールに繋がる道を見つけ出しながら進めていくのだ。

 また、キノピオ隊長は背中に重いリュックを背負っている都合でジャンプすることができない。よって、マリオみたいに壁を飛び越えて近道する芸当は不可能。しっかり進むべき道を発見しては、罠にハマらないよう行動していくことになる。この限られたアクションが演出するパズル要素の高さも特徴の一つで、アクションのマリオとは一味違う面白さが描かれている。

 3Dのアクションゲームと同時に生まれた「視点(カメラ)操作」は、基本的にはプレイヤーが快適に遊ぶための環境を作り出すのに用いる、補助機能的な位置付けにされていることが多い。より迫力ある映像を見せるための演出道具として活用されることもある。

本作はその一面を持ちつつも、隠された道を見つけ出す「遊び」の要素として使われているのが面白いところ。さながら立体パズルを遊んでいるかのような手触り感は、大人も童心に還ってしまう楽しさ。見た目は新鮮でありながらも、懐かしさも感じられる作りになっている。

関連記事