デッドプールは再生医療の先端をいくヒーロー? 杉山すぴ豊がSFテクノロジーを考察
快作『デッドプール2』! アクションとギャグ、そして映画やポップカルチャーをいじったネタがいっぱいで、笑えるんだけどすごくかっこいいヒーロー映画であり、コアな映画ファンもそうでない人も楽しめる、素敵な(でもちょっと過激な)エンタテイメントなのでお見逃しなきよう。あ、でもR指定なので、15歳未満の方は鑑賞出来ないのです。
そして、この映画、さりげなく人類の夢のテクノロジーが2つ出てきます。1つはタイムトラベルです。今回、デッドプールと戦うケーブルは未来からやってきた男で過去を変えるためにタイムトラベルしてきます。ターミネーターのように片道のタイムスリップで送り出された、のではなく、ウェアブル型のタイムマシン装置を使ってやってくるのです。SF映画等では、タイムマシンで過去に遡っても未来は結局変えられない、というパターンもありますが、X-MEN映画の世界では『X-MEN: フューチャー&パスト』において、過去の修正は”あり”になっています。
実はスーパーヒーロー映画の元祖『スーパーマン』(1978年)も、スーパーマンが時間を逆行させて、過去を変えるという手段をとっています。こうした修正によって”元の世界”が無しになってしまったのか、”元の世界”とは別の世界が生まれたのか(つまり”元の世界”と”修正された世界”はパラレル・ワールド的に存在)、どっちにも解釈できますが、僕は後者だと思っています。
とはいえタイムトラベルの実現というのは、現実問題として相当難しいでしょう。でも、『デッドプール2』に登場する、もう一つのテクノロジーは近いうちに実現するかもしれません。それはヒーリング・ファクター(治癒能力)です。デッドプールは、究極のヒーリング・ファクターを持っており、どんな傷も瞬時に治るのです。彼は手足がバラバラになってもくっつくし、また”はえて”くるのです。
この能力は、ヒュー・ジャクマン演じるウルヴァリンが持っていた能力です。ウルヴァリンといえばあの金属の爪が特徴ですが、ウルヴァリンの超人たる所以は爪が出ることではなく、どんな傷でも治る力を持っていることです。だからこそ、全身の骨に特殊金属(アダマンチウムと言います)を移植する手術に耐えられると判断され、改造されました。ウルヴァリンはミュータント(生まれつき超人遺伝子をもっている人)なので、元からこの力を持っていましたが、デッドプールは人為的にこのヒーリング・ファクターを持つ遺伝子を注入されたので、遺伝子テクノロジーによって生まれた超人なのです。