進展見られない「漫画村」問題――著作権法改正の歴史と“漫画ならではの難しさ”を弁護士に聞く

 明確な違法性がありながら摘発・閉鎖に至らず、問題を広げている漫画の海賊版サイト「漫画村」。海賊版の問題は音楽・映像の分野では一定程度沈静化したように思えるが、漫画という分野ではなぜ対策が難しいのか。音楽シーンにも詳しい不動法律事務所の小杉俊介弁護士に聞いた。

「著作権を巡る環境は、インターネットの普及により激変しました。それ以前は、大量に複製物(海賊版)を製造し、流通させることができたのは業者だけと言ってよかった。『私的複製』は自由で、それ以外の複製のみを規制する(著作権法30条1項)という著作権法の原則で、ある意味こと足りていたんです。ところが、インターネットの普及で個人での複製と頒布が劇的に容易になったため、とてもではないがすべてを取り締まることはできない、という状況になりました」

 2009年の著作権法改正により、私的使用目的であっても違法著作物をダウンロードすることは違法になった(著作権法30条1項2号)。ただし、あくまで民事で損害賠償を請求できるだけで、1件単位の損害額は少額であるため、「損害賠償請求は非現実的で、実質的には『私的複製も違法である』という宣伝効果狙いの法改正だったと言われています」と、小杉氏は言う。その効果は限定的だったこともあり、2012年には、違法ダウンロードに対して刑事罰が定められるに至った(著作権法120条第3項)。

「この法改正については、『違法化を知らない子どもたちが摘発される』など批判も少なくありませんでした。また違法とされるものは『録音・録画』されたもの、つまり映像または音楽が対象になります。漫画も同様に、ユーザー側になんらかの規制を設けられないか、という議論もありますが、音楽の場合はダウンロード行為が横行した一方で、漫画の海賊版サイトにおいては、多くの場合が『ネット上で見ているだけ』という状況で、それを違法とするのはさすがに無理がある。結局、業者を取り締まるしかないのですが、『漫画村』の例を見てもわかるように、実効性について課題が多い現状です」

 また小杉氏は、音楽や映画においても、必ずしも取り締まりの強化が違法ダウンロード問題への有効な対応策となったとは言い難く、「Spotifyをはじめとするストリーミングサービスの普及など、業界構造の変化によって解消方向に進んだ面が大きい」と分析する。

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