エッジの効いた未来を探す場所~ SXSW 2018レポート

Augmented Workerーー我々はすでにサイボーグである

 今年のティム・オライリー(テクノロジー系メディアやカンファレンスを扱うオライリー・メディアの創業者)のセッションでは、人間はすでにマシーンに囲まれて生活しており、人間はこれからAIやロボットを活用して我々自身が拡張して働くべき(Augmented Worker) と語り、イーロン・マスクはスマホの登場以来、我々はすでにサイボーグ化されているとも語る。


バーチャルとリアルが溶けあう

 SXSWはTwitterが世界デビューするきっかけとなった場としても有名であり、今でもスタートアップが目指すイベントとして位置づけられている。毎年スタートアップのためのアクセラレーションピッチやアワードが開催されているし、インタラクティブ・イノベーションアワードには大企業の新規事業も応募してくる。なぜならば世界デビューを果たすのに最適な場所だからだ。 今年はサンフランシスコのスタートアップ『Swarm AI(群集AI)』が受賞し話題になっていたので、今後群集AIというのが我々の身近になってくるのかもしれない。

 大企業の新規事業を体験する場としてもSXSWは利用される。ソニーは『WOW Studio』(昨年は『WOW Factory』)というウェアハウス跡地を利用して製品になる前のテクノロジーを体験型コンテンツとして紹介していた。そこでは先程のティム・オライリーが語った「Augmented = 拡張」体験も可能だった。

 「A(i)R Hockey(エーアール エアーホッケー)」と言われるエアーホッケーはリアルなコマと、バーチャルのコマがテーブル上に存在する。デジタルで再現されたバーチャルなコマは高速ビジョンセンサー(IMX382)で人間の動きをトラックし、ハプティクス(触感)技術を活用してコマをヒットした感覚を再現する。リアルなコマとバーチャルなコマ、どちらもコマとして使えて対戦できるので遊んでいるうちに何がリアルで何がバーチャルかわからなくなりリアルとバーチャルの境が溶けていく感覚になる。

 ソニーの担当者の話だと、SXSWには感度が高い参加者が多く、体験者のフィードバックが今後の展開に参考になるため出展しているという。未来に現れるプロダクトやサービスの片鱗がSXSWで見られると言っていいだろう。

 現在は、変化が激しくあらゆるものが複雑化し先が見えない時代と言われている。そのような混沌の時代に世界が認める第一線で活躍している人の話を聞き、スタートアップの挑戦を目の当たりにし、ラボから出てきたばかりの製品を体験できるSXSWはポジティブに未来を作る人々にとっての指南書的な存在である。しかも刺激を受けた後には、テキサスBBQと音楽が待っていてリラックスもできる。右脳と左脳、緊張と緩和、リアルとバーチャル、様々な振り幅を一気に味わえるSXSWから、エッジの効いた未来が見えてくる。

 「Globally Connected: we’re in this together (グローバルに繋がった。みんな一緒にここにいる)」。当記事が、SXSWと読者が繋がるきっかけとなれば幸いである。

■西村真里子
HEART CATCH Inc. 代表取締役、プロデューサー。
テクノロジー×デザイン×マーケティングを強みにプロデュース業や編集・ライター業を行う。Mistletoe株式会社フェロー。

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