『アイマス』から『グロテスク』へ、錦織敦史の現在地 福島祐一×鳥羽洋典SP対談

 アニメーション映画『GROTESQQQUE-グロテスク-』が11月6日に公開されることを記念し、リアルサウンド映画部では「スペシャルクリエイターインタビュー」と題した特別企画を全4記事にわたって展開。錦織敦史監督とゆかりの深いクリエイターたちを迎え、これまでの創作活動や最新作の魅力を多角的に掘り下げていく。第1弾は今石洋之、コヤマシゲト、若林広海による鼎談、第2弾は福島祐一と鳥羽洋典、第3弾は田中将賀と山崎莉乃、そして第4弾は鶴巻和哉と錦織敦史による特別対談をお届けする。(編集部)

 『アイドルマスター』(2011年)で初監督を務め、『ダーリン・イン・ザ・フランキス』(2018年)でも大きな反響を呼んだ錦織敦史監督。そんな彼が新たに送り出したのが、監督・脚本・キャラクター原案を務める『GROTESQQQUE-グロテスク-』(以下、グロテスク)だ。

映画『GROTESQQQUE-グロテスク-』本予告|11月6日(金)公開

 本作は『エリィアンズ』『夜露死駆★少女(よろしくしょうじょ)』『ノクターン ~このグロテスクな夜に~』の3本で構成される。40分ほどの作品を作るところから始まった企画は、演出家やアニメーター、イラストレーターだけでなく、やがてアーティスト・デザイナー、プロデューサー、作家という錦織監督のそれぞれの顔が表れた、純度の高い一作になった。

 今回は『アイドルマスター』以来、数々の作品で錦織監督と歩んできたプロデューサーの福島祐一と鳥羽洋典が登場。『天元突破グレンラガン』の現場での出会いから、初監督作『アイドルマスター』の舞台裏、『GROTESQQQUE -グロテスク-』で見えてきた“錦織敦史の現在地”まで、話を聞いた。(杉本穂高)

『グレンラガン』の現場への憧れ

――まずは、お二人と錦織監督との出会いについて伺います。福島さんが錦織監督と初めて仕事をしたのは『アイドルマスター』ですが、過去のインタビューでは、『天元突破グレンラガン』などを観て「いつか一緒に仕事をしたい」と思っていたとお話しされていました。

福島祐一(以下、福島):『グレンラガン』は2007年ごろの作品で、僕も同じ頃にアニメの仕事を始めました。現場に参加していないので詳しくはわかりませんが、内容の熱さはもちろん、現場そのものがすごく輝いて見えたんです。こういう作品を作る人たちと仕事がしたいと思っていた一人が錦織さんでした。

鳥羽洋典(以下、鳥羽):僕は『グレンラガン』の現場で知り合いました。確か今石洋之さんの隣か背中合わせの席に、錦織さんと吉成曜さんがいたかな。錦織さんはキャラクターデザインだったので、DVDジャケットのイラストの相談などで話す機会が多く、少しずつ仲良くなりました。お互い『ふしぎの海のナディア』が大好きで、年も1つ違いだったので話が合ったんです。

――「現場が輝いて見えた」とのことですが、実際はどうでしたか?

鳥羽:あれだけ熱のある現場はなかなかないです。状況的にも幸運でした。ガイナックスとして久しぶりの大型企画で、(株)カラーが新たにできてベテランの方々がそちらに移り、今石さんたちが現場を仕切ることになった。今石さんを中心にすごくまとまったいいチームでした。

――引き続きお二人が一緒に仕事をされたのが『アイドルマスター』ですよね。どういった経緯だったのでしょう?

鳥羽:錦織さんがアイマス好きを公言していたのと、錦織さんと一緒に作った『天元突破グレンラガン キラメキ★ヨーコBOX 「S・t・a・r・S」プロモーションビデオ』がバンダイナムコさんの目に留まったんです。当時ガイナックスにいた大塚雅彦さんと『アイドルマスター』のプロデューサーの坂上陽三さんが知り合いだった縁もあって、ディレクターの石原章弘さん、坂上さん、錦織さんの間で、ゲームの制作チームと一緒にアニメ化したいという話が出たんです。ただ、当時のガイナックスでは引き受けられない事情もあり、錦織さんから僕に相談がありました。それなら錦織さんの初監督作をしっかり支えられる現場にしたいと思ったんです。清水暁さんが中心になっていたA-1 Picturesとは前々から「何か一緒にやりたい」と話していたこともあり、初めて組むのにふさわしいタイトルだなと。

福島:最初に企画書を受け取ったときのことは今でもよく覚えています。錦織さんご自身が描いたイメージボードがすごく良くて。ただ当時、錦織さんは『パンティ&ストッキングwithガーターベルト』もやられていて、2作品の作業が被っていてかなり忙しい状態で、相当な作業量だったと思います。

「一言で言うなら作家」

――お二人にとって、錦織さんはどんな存在ですか?

鳥羽:ずっと憧れていて、ずっと一緒にいたいと思える人です。クリエイターの中で、すべてを捧げてもいいと一番思える人ですね。

――クリエイティブな面からですか? それとも人間的な魅力からでしょうか?

鳥羽:両方ですね。同じようなものを観て育ったからか感覚が近くて、皆まで言わなくても「こうだよね」と通じ合える。他のクリエイターとは違う、運命的なものをずっと感じています。僕はスタジオジブリにいた頃に宮﨑駿さんと鈴木敏夫さんの関係を見てきて、いつか自分もああなりたいと思いながらこの業界にいるんです。もし、その相手が錦織さんなら嬉しいなと。

福島:僕は錦織さんから学んだことが、制作やプロデューサーとしての礎になっています。『アイドルマスター』では錦織さんが監督とキャラクターデザインを兼任していたので、両方の目でジャッジされていて。そういう人ならではのこだわりに向き合うのは初めてで、アニメの制作過程で生まれる成果物や宣伝、物事の見方を学ばせてもらったと思っていて、制作としての自分の基準を形成してくれた監督です。

――錦織監督はキャラクターデザインや作画、監督だけでなく、脚本まで手がけています。ここまでトータルに担える方は珍しいですね。

鳥羽:ものづくりを感覚的かつ総合的に捉えているからなんだと思います。演出家でもありますが、やっぱり作家なんですよ。

福島:もともと漫画家を目指していた? みたいな話を聞いたこともありますし。物語やセリフを考えることと絵を描くことがセットになっているのではないかなと。だから脚本も絵コンテもキャラクターデザインも、全部が連動しているのだと思います。

鳥羽:物量が多いから分業しているだけで、本音は全部自分でやりたいんだと思いますよ。監督であり演出家でありデザイナーでもあるけれど、一言で言うなら作家。そこは庵野秀明さんや鶴巻和哉さんの影響も大きいのだと思います。

――『アイドルマスター』のときから、監督からシリーズ構成まで任せようと考えたわけですね。

鳥羽:それが普通に思えるくらいの人だったんです。当時のガイナックスはそういう文化だったので何の疑問もなく、むしろ手が回らないなら誰か入れましょうか、という感じでした。

福島:描くことに専念したら本当に仕事が早いですね。誰かに説明している間に、本人が描き終えてしまっていたり。だから代わりの人を入れるのが難しくて、『アイドルマスター』でも『ダーリン・イン・ザ・フランキス』でも『GROTESQQQUE-グロテスク-』でも、毎回制作として同じ悩みにぶつかっている気がします。

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