夫婦を交換した先にあった意外な答え 岡田惠和『マイ・スイート・ホーム』が描く人生賛歌

親友のパートナーの素顔を知って見えてきた、人生の新たな景色

長年の付き合いで互いのパートナーの性格も知っているだけに、このシャッフルがどんな結果を招くのか、女性陣は気が気ではない。たとえば、自由奔放な秋絵と生真面目な修平は、互いにストレスを溜め込んでしまうのではないか。逆に、2週間の共同生活で愛が芽生える組み合わせもあるかもしれない。そんな心配をよそに、パートナー交換ならぬ“大人の席替え”は、思いもよらぬ発見や化学反応を生み出す。
まずおもしろかったのは、いままで「親友のパートナー」でしかなかった、男性たちの“実像”が見えてくることだ。思い返せば、親友の夫や恋人のことを、私もあんまりよく知らない。おそらく向こうにとっても、私は「パートナーの親友」に過ぎず、そうした前提で接するものだが、春花たちはパートナー交換を通じて、長年にわたって固定化された役割や関係性からいったん離れ、互いをひとりの“個”として見つめ直していく。

そして、男性たちのことを深く知るうちに、何十年もの付き合いがある親友の“新たな一面”をも発見する。もちろん、長年連れ添った相手だけが知る親友の素顔が語られることもあるけれど、それ以上に、親友が人生のなかで選び取ってきたもの、たとえばパートナーや住まいに直接触れることで、親友がどんな価値観を大切にして生きてきたのかが浮かび上がってくるのだ。
やがてそのまなざしは、自分自身にも向けられていく。ただ自分の人生に思いを馳せるよりも、選ばなかった他人の暮らしをなぞるほうが、その愛おしさを何十倍にも感じられるのだから不思議だ。かつて選ぶことができなかった選択も、全てひっくるめての“いま”がある。『マイ・スイート・ホーム』というタイトルも、物語が終着点へと近づくにつれて、これまでとは違った響きを帯びはじめるだろう。
人生のどんな選択も肯定してくれる、『マイ・スイート・ホーム』の優しさ

「私は、うん、好き。3人とも私より心がきれい。だから、大好き」
どのキャストも素晴らしいのだが、もんじゃ焼き屋で富田靖子が披露した第4話の長ゼリフには、この物語に託された思いのすべてが詰まっているように感じた。「自分じゃない人になってみたい」と語っていた親友の死から始まった本作で、岡田が描いたのは「あなたはあなたのままでいい」という究極の肯定だ。そのメッセージは、人生の大半を歩んできたアラ還世代の春花たちだけでなく、誰もが人生のどこかで必要とする言葉だろう。
30代の私が春花たちの年齢になるには、もうちょっと、いや、まだまだ先の話ではある。そのときに『マイ・スイート・ホーム』を見返したら、また違う景色が見えるかも。いまの私には見つけられなかったなにかに出会えることがあるかもしれないと思うと、楽しみで仕方ない。私が春花たちの年齢に追いつくその日まで、大切に抱きしめておきたい物語になった。
■放送情報
『連続ドラマW マイ・スイート・ホーム』(全6話)
WOWOWにて、毎週土曜22:00〜放送・配信
出演:石田ゆり子、仲村トオル、中嶋朋子、三宅健、中田青渚、中井友望、片田陽依、石塚瑚子、白本彩奈、松金よね子、丘みつ子、富田靖子、武田真治、坂井真紀、椎名桔平
脚本:岡田惠和
監督:萩原健太郎
音楽:山田勝也、橋本和昌
主題歌:竹内まりや「あなたでなければ」(ワーナーミュージック・ジャパン)
プロデューサー:植田春菜、平部隆明
制作協力:オフィスクレッシェンド
製作著作:WOWOW
公式サイト:https://www.wowow.co.jp/drama/original/my-sweet-home/






















