『ブラッサム』“珠”石橋静河に足りないものとは? 東京編で見えてきた朝ドラ特有の課題

 サブタイトルが「狂騒と、東京」というだけあって、新キャラが大渋滞で、展開も速い。朝ドラこと連続テレビ小説『ブラッサム』(NHK)の第5週(演出:中泉慧)では、珠(石橋静河)に、妻・母としての道と作家としての道、ふたつの可能性が芽吹く。

 珠は保(金子大地)の世話係として東京にやってくる。最初は兄妹ということにするが、すぐに嘘がつけなくなる。しばらくは喜劇「妹は奥様」的な隠し事もの(『奥様は魔女』に代表される、本当のことを隠すことで生まれるドタバタ)をやるのかと思ったら、ものすごくあっさり片付けた。

 保の実家から仕送りが期待できなくなり、珠は新聞の求人広告で見た悠樂軒で働くことになる。店長の熊田(斎藤司)、女給の松子(瀬戸さおり)、スギ(愛)、ヨネ(誠)もキャラが濃いが、もっと濃いのは常連客たちだ。人気作家・秋山格之介(高良健吾)、『首都公論』の敏腕編集長・黒崎(遠藤憲一)と副編集長・山中(井浦新)、そして作家志望の左良太(北野秀気)。下宿の大家・酒飲みの辰五郎(赤堀雅秋)とはっきりものを言う娘のマキ(中村優子)。

 登場人物のキャラが立っていて親しみやすく、すぐに属性がわかる。脚本・櫻井剛の手腕と、俳優の演技の巧さと、演出の手際の良さが見事に絡み合っている。

 トレンディエンジェルやヨネダ2000、愛、高良健吾、遠藤憲一、井浦新のおもしろさやすごさは、一般視聴者も十分わかっているだろう。個人的に目を引いたのは、『首都公論』の編集者・横田(大窪人衛)だ。山中に「うっかりも一度目なら愛嬌ですむが、二度目からは無能と呼ばれる」と厳しいことを言われるが、愛嬌でかわす。演じる大窪はイキウメ所属の俳優で、一瞬でキャラを表現するのがうまい。うっかりすると、こういう場面の横田は何の意味もない存在になりかねない。それを決してそうさせないことで、このドラマの信頼度が上がる。

 左役の北野秀気も、お調子者の作家志望として十分すぎる役割を果たす。北野は作家を目指すもなかなか書けない。一方、珠は書きたくなったらどんどん書く。「あこがれてる世界がそこにあったら触れてみたいと思うでしょ」と言って、書いたものを物怖じせず黒崎に見せる。左はそんな珠と軽妙なやりとりをしながら、彼女の作家としてのポテンシャルに刺激を受けて自分も書き出す。珠と仲良くして保の嫉妬を煽りもする。本筋に関わる重要なところを担っているのだ。こうしたおもしろさが際立つからこそ、珠と保が小指を結び合うような、一瞬の小さな心の触れ合いも光る。

 「部屋も布団もなんも変わらんのに全部が違って感じる」と、珠が保の隣で寝ながら語る。そのあとの妊娠につながる保との関係の変化を、上品に描いた場面だろう。

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