遠藤憲一が『ブラッサム』で表現する二面性 イメージに縛られない“コワモテ俳優”の真骨頂

遠藤憲一が『ブラッサム』で表現する二面性

 “東京編”に突入し、物語が大きく動き始めた『ブラッサム』(NHK総合)。故郷・岩国を出た珠(石橋静河)は、東京でさまざまな人々と出会い、さらに文学の世界へと引き寄せられていく。そんな珠の作家人生に大きな影響を与えることになるのが、遠藤憲一が演じる黒崎大三郎だ。

 黒崎は、日本屈指の文芸雑誌『首都公論』を率いる編集長で、豪胆な性格と鋭い審美眼で文壇を率いる人物。遠藤は黒崎について「黒崎はよく食い、よく笑い、一見生き急いでるような雑な人間に見えます。しかし心の奥底に人の才能を見抜くずば抜けた鋭いエネルギーを持っています」とコメントしている。

 豪快さの奥に秘められた繊細さーーこれは、遠藤がこれまで演じてきた数々の役柄にも共通している特徴だ。コワモテの風貌を生かし、圧倒的な迫力を見せる一方で、ふとした表情や何気ない仕草から、言葉にならない葛藤や不器用な優しさをにじませる。遠藤は、こうした細やかな感情表現によって、ひと癖もふた癖もある人物に血を通わせてきたのだ。

 その魅力が存分に発揮された作品が、2015年放送のドラマ『民王』(テレビ朝日系)だ。彼が演じたのは、息子の翔(菅田将暉)と、人格が入れ替わってしまった内閣総理大臣・武藤。“ワニ顔総理”と呼ばれ、威厳たっぷりだった武藤が、かわいいキャラの翔と入れ替わった途端、まるで別人のように変貌する。ビジュアルは遠藤のままなのに、一挙一動があまりにもかわいすぎて、思わず笑ってしまったのを覚えている。

 そして、続編となる『民王R』(テレビ朝日系)では、入れ替わりの対象が全国民へと拡大。入れ替わりを演じるだけでも難しいのに、毎回異なる人物に憑依しなければならないなんて……! 視聴者としては、“エンケン”のさまざまな表情が見られて楽しいが、演じている本人は相当大変だったはず。

 それでも、遠藤は毎回まったく異なる人物になりきってみせた。年齢(なんと、5歳の保育園児と入れ替わる回も……!)も性別も違う人物を、表情や声のトーン、ちょっとした仕草の変化で演じ分ける。しかも、単なるモノマネでは終わらない。それぞれの人物が持つ感情まで丁寧にすくいあげることで、見た目はそのままなのに、まるで別人がそこにいるかのような錯覚を覚えるのだ。

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