『VIVANT』『メリーベリーラブ』『kiDnap GAME』 “国際ドラマ”が増えたテレビ局の事情とは

アジア1位でも日本以外では見られていない『VIVANT』

これら2作とは対照的に、国内の話題をさらっているのがTBSの『VIVANT』だ。本作も海外ロケを敢行した大型企画だが、国際共同制作ではない。TBSが単独で資金を賄い、海外ロケも現地スタッフを雇用するかたちだ。ロケ地となったアゼルバイジャンからはポストプロダクション面での支援も多少あったようだが(※7)、制作構造自体は従来のドラマと大きく変わらないと思われる。
国内では大きな話題となっている本作だが、1話1億円とも言われる制作費をどう回収するのか、不明だ。赤字だとする報道もあり、映画化の噂もあるが、公式の発表ではない。
現在のところ海外で大きく売れているわけでもなさそうだ。調査会社AMPDによると、『VIVANT』は2026年8月のアジアにおける配信視聴者数で首位を獲得した。日本のドラマとして初の快挙だが、同時に、その視聴の97%が日本国内によるものだったとも指摘されている(※8)。
TBS自体は民放キー局の中で最も国際展開に積極的だ。『今際の国のアリス』や『幽☆遊☆白書』を手掛けたTHE SEVENを傘下に持ち、放送を前提としないグローバルOTT向けのコンテンツ作りに着手している。米レジェンダリー・エンターテインメントへの約240億円の出資や、CJ ENM、U-NEXTと合弁会社「StudioMonowa」の設立など、多角的なアプローチを展開している。
ただ、『VIVANT』がそうした同社のグローバル戦略の中でどう位置付けられ、どのような成果を挙げているのかは、いまひとつ見えてこない。タイでは日本での放送から数日後に配信されているが、それも総務省とドコモによる実証事業である日本ドラマ専門の配信サイトで配信されているにすぎず、韓国ドラマのような幅広い人気を獲得しているという声は聞こえてこない。アジアの映像産業の動向を調査するメディアContent Asiaも『VIVANT』を「Domestic Victory(国内での勝利)」と形容し、「アジア地域全体での成功とは言い難い」と記している(※9)。
「日本のドラマって何?」
10月7日に開催されたVR FORUMで、TBSホールディングス グローバルビジネス局長の渡辺信也氏は「どの国に行っても『日本のドラマって何?』と言われる。ジャンルとして認識されていない」と漏らした(※10)。
日本のアニメや韓国ドラマは、それ自体がカテゴリーとして認知されている。しかし日本のドラマはまだその域に至っておらず、渡辺氏はその現状に危機感を感じているのだ。
そうした状況下で、日本のドラマは国際展開を目指している。国内放送市場への依存度はいまだに高い。しかし、縮小し続ける国内市場にこれ以上頼れないのは明白で、グローバル市場を目指さざるを得ない。だが、国内と海外という二兎を追う状況に、この3作品は引き裂かれているように筆者には見える。
筆者は9月、韓国・ソウルで開催された放送コンテンツの見本市「BCWW」に足を運んだ。同見本市では初めて、日本のドラマ企画を海外の投資家や制作会社にピッチするプログラムが設けられた。参加した日本のプロデューサーたちはみな海外展開に意欲を見せており、国内市場だけでは今後やっていけないことを深く理解していた。
その中で、あるプロデューサーはこう語った。「放送局である以上、国内の視聴者を置き去りにはできない。グローバル前提の企画に挑んでいるが、国内放送とのバランスをどう取るかが難しい」(※11)
国内でヒットした作品がそのまま海外でも受け入れられるのが理想だ。しかし、一朝一夕にそううまくいくものでもない。『kiDnap GAME』と『メリーベリーラブ』はグローバルに向けた企画だが、国内では大きな話題になっていない。逆に『VIVANT』は、国内で話題になりながらも、海外での成功には至っていない。
このジレンマをいかに克服できるのかが、日本のドラマの将来を左右するだろう。
参照
※1. https://branc.jp/arti/gzTRWp/
※2. 香港のMakerVille
※3. https://www.fujitv.co.jp/company/news/kaiken/202605.html
※4. https://www.fujitv.co.jp/company/news/kaiken/202605.html
※5. https://www.fujitv.co.jp/company/news/kaiken/202605.html
※6. https://www.fujitv.co.jp/company/news/kaiken/202605.html
※7. https://travelprnews.com/article/japans-vivant-drama-puts-azerbaijans-destinations-on-screen-for-its-second-season/
※8. https://prtimes.jp/main/html/rd/p/000000004.000191139.html
※9. https://www.contentasia.tv/news/domestic-victory-lap-japans-vivant-there-regional-hope-us15-million-two-season-series
※10. https://branc.jp/arti/gzTRWp/
※11. https://branc.jp/arti/gzTRWp/





















