『VIVANT』『メリーベリーラブ』『kiDnap GAME』 “国際ドラマ”が増えたテレビ局の事情とは

今、日本のドラマは岐路に立っている。
日本国内のテレビ市場はじりじりと縮小を続けており、放送収入の減少に歯止めがかかる気配はない。そんな中、各局は放送以外で稼げるコンテンツへの投資を加速させている。
その筆頭はアニメだが、ドラマへの期待も高い。総務省も日本の実写ドラマの売上拡大を狙って予算を拡充し、様々な支援策を講じ始めている。
その動きは、今期の連続ドラマにはっきりと表れている。フジテレビは大型国際共同制作ドラマ『kiDnap GAME』を、日本テレビは韓国CJ ENMと共同制作しディズニープラスで世界配信する『メリーベリーラブ』を、そしてTBSは大型海外ロケを敢行した『VIVANT』を送り出した。
3作はそれぞれ座組こそ異なるが、国内市場だけをターゲットにしてきた従来の作品とは明確に異なる意思を持っている。
日本のドラマは、韓国ドラマのように国際化できるのか。その挑戦が始まったことの表れと言えるだろう。
本稿では、なぜこのような企画が生まれるようになったのか、その背景を解説したうえで、3作それぞれの戦略・座組・現在地、そして日本ドラマの今後の展望について論じてみたい。
大型国際ドラマが増えた背景
日本のドラマの制作費は放送枠の広告収入に合わせて決められ、放送局一社で賄うのが基本である。テレビがメディアの王者で、高い視聴率を稼げていた時代は、それで十分な予算を確保できた。
しかし、メディア環境は激変し、広告収入が落ち続けている今、放送収入だけではテレビ局は立ち行かない。各局ともIPを主軸に据えた新たな事業モデルを模索し、放送外収入を伸ばす方向に舵を切っている。その稼ぎ頭として期待されるのはアニメだ。アニメはグローバル市場での売上に加えてマーチャンダイジング収入も見込め、大型タイトルであれば映画での大ヒットも狙える。
そして、ドラマにも当然期待がかかる。日本でもNetflixなどのグローバルプラットフォームが普及し、世界展開が以前よりも容易になった。これを受けて各局のドラマ戦略にも変化が訪れ、放送だけでなく配信でも稼げる作品が求められるようになってきた。
しかし、日本の実写作品の海外売上シェアはまだ小さい。日本のコンテンツの海外売上は6.1兆円で、その内訳は約6割がゲーム、3割がアニメ。ドラマやバラエティといった実写コンテンツは全体の2%に過ぎない(※)。
一方で、日本ドラマの輸出額は2023年から2024年にかけて2.5倍に拡大しており、放送外収入を求める各局の間でもグローバル市場進出への機運が高まっている。
こうした状況を受け、テレビ局は放送外の収益を前提に制作予算を増やし、競争力のある作品を作る必要に迫られている。前述の3作のように国内市場だけに向けていない作品が生まれている背景には、こうした事情があるのだ。
放送収入は投資回収の一部分『kiDnap GAME』
3作それぞれの制作体制を確認してみよう。
フジテレビの『kiDnap GAME』は、同局が企画し、韓国のSIMSTORY、香港のMakerVilleとともに制作した国際共同制作ドラマだ。関わったスタッフは1000人を超えるといい、制作費も日本の一般的なドラマより大きいと報じられている。
本作はフジテレビのほか、複数の海外パートナーが出資することで予算を賄っている。パートナー各社は海外ロケの撮影協力も担っており、資金と制作実務の両面で国際的なパートナーシップのもとに作られた作品だ。
通常、日本のドラマは広告収入や配信などの二次利用で資金を回収していく。対して本作は、放送前に海外配信権を積極的に販売していた。今年6月の時点で18の国と地域での放送・配信が決まっており、10月にはこれが28に拡大。さらに、つい先日開催された国際見本市「MIPCOM」では、フランス大手のStudiocanalが北米を含む海外販売を引き受け、親会社のCanal+が欧州での権利を獲得したと報じられている(※2)。
現在のところ、国内の視聴率はそれほど振るわないようだ。しかし本作は、もともと放送以外の収入拡大を狙った座組で制作されている。
フジテレビは今年5月の会見で、放送を前提にタイムテーブルごとに予算を配分してきた従来の基準を抜本的に見直す方針を示した。「放送収入は投資回収の一部分」と捉え、バリューチェーン上の収益全体でのROIに基づいて判断する「グリーンライトモデル」に切り替えると宣言している(※3)。国際展開を軸にした『kiDnap GAME』の収益構造は、まさにその表れと言える。
そういう意味では、国内の視聴率だけで本作の成否は測れない。国際的にどれだけの視聴者を獲得できるのかを見ていく必要がある。
韓国CJ ENM主導の『メリーベリーラブ』

日本テレビで放送中の『メリーベリーラブ』は、ディズニープラスが世界独占配信している。制作クレジットは日本テレビと韓国CJ ENMの連名だ。企画開発はCJ ENMが主導し、日本テレビが共同制作者として名を連ね、世界配信はディズニープラスが担うという座組になっている。
これは日本のドラマというより、韓国ドラマに日本テレビが協力するかたちで実現した企画と言っていいだろう。ディズニープラスで本作を観ると、まずエンドクレジットの長さに驚かされる。また、監督、脚本、撮影監督、エグゼクティブプロデューサーといった中心スタッフは韓国人で占められている。
日本テレビもフジテレビと同様に海外展開に力を入れており、ドラマの世界配信や国際共同制作を通じて、2027年に海外売上300億円を目指すとしている(※4)。
CJ ENMも近年、日本との共同制作を増やしており、2025年には日本法人がドラマ制作事業を立ち上げている(※5)。今回の日本テレビとの協業も、こうした流れの中に位置付けられるだろう。
本作も国内の視聴率は伸び悩んでいるようだが、ディズニープラスでは今年の日本の実写作品の中でグローバル視聴者数1位を獲得したと報じられている(※6)。
配信での広がりは数字に表れにくいのが難点だが、本作の成否もまた、国内の数字だけでは判断できない。いずれにせよ、この2作は国際展開を重視した企画であり、日本ドラマの市場をどこまで広げられるのか注目される。




















