高良健吾が再び“芥川龍之介”に 朝ドラ『ブラッサム』で挑む洗練された役作り

NHK連続テレビ小説『ブラッサム』第5週「狂騒で、東京」では、生まれ育った岩国から東京へとやってきた珠(石橋静河)が保(金子大地)と同居することになり、再び好きだった小説と向き合っていく姿が描かれる。
物語の舞台が東京・本郷へと移るなか、知る人ぞ知る文豪たちをモデルにしたキャラクターが続々と登場する本作。この場所で珠が出会うことになる作家たちのなかでも、特別な存在感を示すのが、代表作に『羅城門』『蜘蛛の巣』などを持つ作家・秋山格之介(高良健吾)。モデルとなる作家はもちろん芥川龍之介だ。

鋭い洞察と独自の感性で名を馳せ、文壇の寵児となる秋山を演じる高良健吾はNHK連続テレビ小説『おひさま』(2011年度前期)『べっぴんさん』(2016年度後期)に続く3度目の朝ドラ出演。さらに、映画『蜜のあわれ』(2016年)ではすでに芥川龍之介の幽霊に扮しており、2度目の芥川役という稀有な経歴もあわせ持つ。「朝ドラ」と「芥川龍之介」の両方を知る高良の経験が存分に活かされる役柄で、キャスト発表時には視聴者から大きな期待を寄せられていたのも記憶に新しい。本人そっくりのビジュアルも相まって、その期待にさらに拍車をかけている印象だ。
高良にとっても久々の朝ドラ出演となる本作。出演に際しては「『おひさま』、『べっぴんさん』の現場で学んだ事は今も形を変えながら、この仕事に特別な想いを持って向かわせてくれます」とコメントしている(※)。
『おひさま』では主人公・陽子(井上真央)の夫となるそば屋「丸庵」の息子・和成を演じた。戦前から戦後までを描いた本作で、和成はお見合いをすることになった陽子を「戦争未亡人にしたくない」という思いで一度は断るものの、彼女の秘めていた本心と覚悟に心を打たれて結婚を決意する。軍隊に再召集された和成が出征前に陽子と相対する場面では、彼の誠実さが一つひとつの言葉から溢れ出る。高良が初めて父親役を演じた作品でもあり、主演の井上真央とともに夫婦の歩みを二人三脚で演じきった。
一方、『べっぴんさん』で高良が演じることになったのは、主人公・坂東すみれ(芳根京子)の幼なじみである野上潔。すみれから密かに恋心を抱かれていた潔だったが、明瞭な言葉でストレートに恋心を伝えたすみれの姉・ゆり(蓮佛美沙子)の心意気に惚れて結婚することに。戦後は服飾商社「坂東営業部」を立て直しながらも、苦境に陥っていたすみれに助言を送り、彼女が飛躍していく転機となった。18歳の青年時代から壮年期、68歳まで描かれる潔の人生を高良がていねいに表現した姿も印象深い。
これまでの朝ドラ出演作ではヒロインの夫と幼なじみ役を演じた高良だが、本作では珠の人生にずっと寄り添う人物ではなく、一瞬の出会いで彼女に強烈な影響を与える役柄だ。映画『ソラニン』(2010年)や『横道世之介』(2013年)を筆頭に、穏やかで等身大の青年を演じていた姿も懐かしく記憶に刻まれている高良。しかし、近年は浮世離れした佇まいとミステリアスな風貌で多くの人々を魅了しており、本作で演じる秋山もその系譜に名を連ねることになるのではないだろうか。
映画『蜜のあわれ』で演じた芥川龍之介の存在感も別格だった。特に赤子(二階堂ふみ)から“おじさま”と呼ばれる老作家(大杉漣)と対峙する長回しのシーンでは、緊張感が漂う空気のなかで圧倒的な才能を身にまといながら、本心を見透かしたような涼しげな目で相手の心をまっすぐに射抜く。芥川そっくりの顔つきで、彼の余裕綽々ぶりと本質を見抜く賢明さを表情ひとつで体現する高良の存在感を堪能できる一幕だった。

高良は秋山役について「魂の強い人間を二度も演じる事ができ、不思議な縁を感じます。作家、芥川龍之介の生き様を秋山格之介に投影して、珠に思いっきり伝えられたらと思います」とコメントしている(※)。
珠のモデルである宇野千代とは、彼女が西洋料理店「燕楽軒」で働いていた頃から交流があった芥川。作家になる前の彼女と接することになった秋山が、東京へとやってきた珠にどのような影響を与えるのか。2度目の芥川役に挑む高良の洗練された役作りに注目したい。
参照
※ https://realsound.jp/movie/2026/08/post-2503362.html
■放送情報
2026年度後期 連続テレビ小説『ブラッサム』
NHK総合にて、毎週月曜から金曜8:00~8:15放送/毎週月曜から金曜12:45~13:00再放送
NHK BSプレミアムにて、毎週月曜から金曜7:30~7:45放送/毎週土曜8:15~9:30再放送
NHK BS4Kにて、毎週月曜から金曜7:30~7:45放送/毎週土曜10:15~11:30再放送
出演:石橋静河、加賀まりこ、松たか子、国仲涼子、渡部篤郎ほか
作:櫻井剛、小松與志子
主題歌:YOASOBI
制作統括:村山峻平、櫻井壮一
プロデューサー:大野陽平
演出:盆子原誠、中泉慧、佐藤玲衣、田中陽児、小林直毅、野田雄介
写真提供=NHK





















