向井康二、『いろはの恋』で挑む新たな教師像 持ち前のバラエティ力で“救われる”大人を体現

向井康二、『いろはの恋』で挑む新たな教師像

「救う」教師から「救われる」教師へ

 教師という仕事に疲弊した一ノ瀬は、果たしてどのように救われるのだろうか。

 本作の大きな特徴である江戸からタイムスリップしてきたいろはとの交流が、その突破口となりそうだ。江戸時代を生きるいろはにとって先生という仕事は「尊いもの」だ。儒教の「天地君親師」(天、地、君主、親、師の5つは等しく敬うべきものだという教え)を引き合いに出し、しつけは親の役割で、人としての道を教えるのが教師の役割だと断言する。しつけの肩代わりを教師がしていると悩み、保護者の顔色を窺う一ノ瀬にとっては、さぞ衝撃的な価値観だっただろう。

 また、学ぶことの楽しさを児童と同じ目線に立って伝えるいろはの様子は、「正しさが正しく伝わるわけじゃない」と諦念を抱く一ノ瀬に気づきを与える。江戸時代と令和は教師の担う役割や環境もまったく違う。だからこそ、一ノ瀬が当たり前だと思っていた現代の教育の在り方が、いろはの言動によって揺さぶられていく。日々の忙しさで見失っていた「教師はどのように在るべきか」という問いを、彼は再び考え直すかもしれない。

 『いろはの恋は時代をかける』は、「江戸時代からのタイムスリップ」「時空を超えた恋愛」という設定だけでも十分面白い作品に仕上がりそうだ。しかし、そこに「教育」という軸も交えたのは脚本家の長田育恵をはじめとする制作陣の挑戦と熱意の現れだろう。それは同時に、理想と現実のギャップに悩む教師にエールを届けようという試みとも読み取れないだろうか。

 教育ドラマの多くは、熱意をもって児童・生徒を「救う」教師を数多く描いてきた。しかし、本作では理想と現実のギャップに悩む一ノ瀬が、「救われる」教師として描かれていることに意義があるように思う。
 
 向井康二演じる一ノ瀬生琉がいろはとの交流で何を感じ、どう変わっていくのか。そして、どう救われるのか。今後の展開を心待ちにしたい。

■放送情報
火曜ドラマ『いろはの恋は時代をかける』
TBS系にて、毎週火曜22:00~22:57放送
出演:上白石萌音、向井康二、山中柔太朗、大森元貴、剛力彩芽、大西礼芳、白山乃愛、YOU、イモトアヤコ、保田圭、竹財輝之助、柳ゆり菜ほか
脚本:長田育恵
演出:田中健太、福田亮介
音楽:Ken Arai
主題歌:MISIA「さよならばっか」
プロデューサー:宮﨑真佐子、松本明子
協力プロデューサー:阿部愛沙美
編成:渡邊晏夏、関川友理
製作:TBSスパークル、TBS
©TBSスパークル/TBS
公式サイト:https://www.tbs.co.jp/koitoki_tbs/
公式X(旧Twitter):@koitoki_tbs

関連記事

リアルサウンド厳選記事

インタビュー

もっとみる

Pick Up!

「国内ドラマ」の最新記事

もっとみる

blueprint book store

もっとみる