向井康二、『いろはの恋』で挑む新たな教師像 持ち前のバラエティ力で“救われる”大人を体現

向井康二、『いろはの恋』で挑む新たな教師像

 向井康二(Snow Man)が、日本ドラマの新たな教師像の表現に挑んでいる。

 現在放送中の火曜ドラマ『いろはの恋は時代(とき)をかける』(TBS系)は、従来あまり描かれてこなかった教師像が話題だ。この物語は、令和の小学校教員である梨木彩葉(上白石萌音)に、江戸時代を生きるいろはの魂がタイムスリップすることで幕が上がる。梨木の同僚である一ノ瀬生琉(向井康二)は、周囲にタイムスリップを悟られずにいろはが教師として働けるようフォローする。いろはを支えるために一つ屋根の下で同居を始めたことや、「ロマンティックコメディ」と番組公式が謳っていることから、江戸と令和、300年の時を超えた恋愛ドラマが展開されると思われた。
 
 しかし、どうやら単なるラブコメではなさそうだ。現代の教育現場が抱える問題や疲弊していく教師を正面から描く作品としても視聴者を魅了する。

向井康二が挑む「疲弊していく教師像」

 本作では、小学校教員である一ノ瀬生琉が、教育に関わる様々な問題と対峙する。
そんな一ノ瀬は、歴代の教育ドラマとは異なる教師像を体現しているように思う。彼は、自らの志望で教師となったが、現実と理想のギャップに疲弊し、いつしか教育への熱量を押し殺すようになった人物なのだ。

 これまで教育ドラマでは教師が熱量をもって児童・生徒に接し、問題を解決していく姿が繰り返し描かれてきた。たとえば、今年リバイバルして話題にもなった『GTO』シリーズ(カナテレ・フジテレビ系)の鬼塚英吉(反町隆史)は当初は「女子高生と楽しく付き合いたい」という不純な動機で教師になったが、やがて生徒と正面から向き合う熱血教師となった。さらに遡ると、かの有名な『3年B組金八先生』シリーズ(TBS系)の坂本金八(武田鉄矢)も生徒に熱弁を振るう教師だった。

 一方、本作の一ノ瀬は熱意をもって教育の世界に飛びこんだものの、数々の理不尽に直面していくうちに、疲弊していく。「僕だって本当はなりたくてなったんだ。子供の心に残る先生になりたいって。でも……」と漏らす一ノ瀬の切実な声が、視聴者の心にじんと響く。

 では、現代の教師の苦悩はどう描かれているのだろうか。

 第1話の冒頭は、一ノ瀬が保護者に叱責されているシーンからいきなり始まる。このシーンを皮切りに、保護者対応、意思疎通、学級運営といった学校空間特有の難しさをあらわす描写が続く。こういった問題を未然に防げず、適切に対処できなければ全部教師のせいにされる職場での現状に、一ノ瀬は「周りの命令に従って頭下げて。自分を殺すしかない」と肩を落とす。そんな仕事を続けた彼が辿り着いた目標は「無難に過ごすこと」であり、波風立てずに教員生活を送ることを心に誓う。

 しかし、本作は現代の教育問題を羅列するだけではない。

 シリアスな展開の合間にコミカルな描写も挟まれていることで、軽やかなリズムを生み出している。このバランスを支えているのが、一ノ瀬を演じる向井康二の表現力の幅広さによるものが大きいだろう。向井は自身の属するSnow Manのなかではツッコミもボケもこなすムードメーカー的存在として知られている。津田篤宏(ダイアン)の持ちネタである「ゴイゴイスー」を披露したり、自ら考案した「もみあげ手裏剣」で笑いをとったりするなど、身体表現を交えたパフォーマンスでその場を盛り上げる姿が印象的だ。

 バラエティで「笑い」を生み出す彼の表現力の高さは、ドラマではコミカルな表現や繊細な感情表現といった「幅広い演技力」にもつながっている。作中で登場する「消火器を全身で浴びるシーン」や「悪い夢をみて大慌てするシーン」などのコミカルな演技には、思わず笑ってしまう。

 そこから一転、保護者に頭を下げるときや、教師としての実力不足に直面するときは、普段の大きな身振りとは対照的に声や動きを抑えてみせる。わずかな表情の変化で、一ノ瀬の諦念を見事に表現しているのだ。本作の魅力の1つであるコミカルとシリアスの緩急は、向井の幅広い演技力によって支えられていると言えるだろう。

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