『ブラッサム』金子大地が新たな飛躍 『おっさんずラブ』などで演じてきた感情の生々しさ

 わずかな登場時間でも、もっとこの人を見ていたいと思わせる。連続テレビ小説『ブラッサム』(NHK総合)第8回で鮮やかな印象を残した、金子大地演じる木村保が、第4週に再登場することがわかった。本作は、作家・宇野千代をモデルに、山口・岩国に生まれた珠(石橋静河)が、さまざまな出会いや別れを重ねながら、自らの心に正直に生き、作家への道を切り開いていく物語である。

 保は、珠の叔母・照子(山田真歩)の次男で、珠の嫁ぎ先となった享一(小堀正博)の弟。祝言の席で珠と一切目を合わせようとしない享一に対し、保は気まずそうな彼女をちらちらと気にかけていた。後に「どうしようもない兄貴じゃ」と詫び、兄には色街に長くひいきにしている女性がいることを打ち明ける。兄への呆れと、何も知らずに嫁いできた珠への申し訳なさ。視線や言葉の端々から、彼女を案じる気持ちが伝わってきた。

 だからこそ、珠が自ら家を飛び出したとき、保が見せた表情も忘れがたい。走り去る珠の背中を見送って、ふっと笑い、「それがええ」とつぶやく。その笑顔ににじんだのは、珠の決断を肯定する温かさだった。家の都合で進められた結婚の中で、彼女の気持ちに目を向けてくれる青年。その誠実さを短い場面で印象づけた金子が、今後どんな保の顔を見せてくれるのか、期待が膨らむ。

 2015年に俳優デビューした金子は、2018年の『おっさんずラブ』(テレビ朝日系)で注目を集め、翌年の主演ドラマ『腐女子、うっかりゲイに告(コク)る。』(NHK総合)で高い評価を得た。映画『猿楽町で会いましょう』『サマーフィルムにのって』などが公開された2021年には、第13回TAMA映画賞の最優秀新進男優賞を受賞。その後もNHK大河ドラマ『鎌倉殿の13人』や『晩餐ブルース』(テレ東系)など、多くの作品で存在感を示してきた。

 そんな活躍を支える金子の魅力は、見る側の想像を誘う存在感と、その想像には収まりきらない感情の生々しさにあるように思う。

 『おっさんずラブ』で演じたのは、「天空不動産」の新入社員、通称“マロ”こと栗林歌麻呂。先輩にも遠慮なく物を言い、恋愛にも積極的なマロは、現実に同じ職場にいたら少々手を焼きそうな若者だ。金子は、その物おじしない態度や軽快な口調で、“モンスター新入社員”という強烈なキャラクターを鮮やかに立ち上げている。

 そんなマロの内側にある感情が見えてくるのが、蝶子(大塚寧々)との関係だった。夫・武蔵(吉田鋼太郎)との関係で傷ついた彼女をねぎらうときには優しさがにじみ、離婚後も親しい二人を前にすると、嫉妬や寂しさがのぞく。金子は表情や声の細やかな変化で、“モンスター新入社員”という言葉では括りきれないマロの胸の内を伝えていた。

 一方、『腐女子、うっかりゲイに告(コク)る。』で演じた安藤純は、周囲の男子高校生よりも落ち着いていて、どこかミステリアスな少年だ。同級生である紗枝(藤野涼子)のBL好きの仲間から、初対面で「受け」になぞらえられるように、他人が思い思いの物語を重ねたくなる雰囲気を持っている。年上の既婚男性・マコト(谷原章介)と秘密の関係にあることも、見る側の想像をかき立てる設定だった。

 けれど、純自身が抱えているのは、誰かにとって魅力的な物語であることとは無縁の、切実な願いだった。男性への恋心と、女性と結婚して子どもを持つという、自分が「普通の幸せ」だと考える人生への憧れを、どちらも手放せずにいた純。紗枝との交際に踏み込んだのも、彼女ならその願いをかなえてくれるかもしれないという期待があったからだ。二つの願いを抱える苦しさと、その願いによって相手を傷つけてしまう身勝手さ。金子は、そんな矛盾を抱える純の姿に、痛々しいほどの実感を与えた。

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