『俺たちの箱根駅伝』は“日曜劇場”っぽい? 箱根駅伝中継を担った日テレならではの演出

『俺たちの箱根駅伝』日テレならではの演出

 池井戸潤の小説を原作に、大泉洋が主演を務める日本テレビ系土曜ドラマ『俺たちの箱根駅伝』が10月10日にスタートした。箱根駅伝を中継するテレビ局と、出場を逃した古豪大学の陸上競技部を描く本作は、初回から40分拡大で放送。SNSでは「すっごいドラマ」「開始15分で泣けた」といった感想が上がった。

 一方で、池井戸作品と大泉の組み合わせといえば、2019年に放送された『ノーサイド・ゲーム』(TBS系)を思い起こさせる。加えて、第1話には小日向文世、市川猿弥、河内大和といった、『VIVANT』に出演する俳優陣も登場。そのため、「日曜劇場にしか見えなかった」という反応も目立つ。実際、大泉自身も放送前の会見で「別班の人が走るわけではない。我々が別班というわけでもない」と日曜劇場を意識した発言をしていたが、だからこそ、本作が“日テレらしさ”をどう打ち出していくのかが気になるところだ。

 第1話では、箱根駅伝中継に人気タレントを起用したい上層部に対し、選手を中心に伝えるべきだと主張するチーフプロデューサー・徳重亮(大泉洋)の対立が描かれた。視聴率を優先する判断に異を唱えた徳重は、役員会議で中継の意義を訴え、スポンサーの意向も追い風に問題を解決する。日曜劇場での池井戸作品であれば、強い台詞の応酬や、ドアップの顔芸、追い詰められた主人公が大きく状況をひっくり返す展開が見どころになることが多い。それに比べると、本作の役員会議は比較的あっさりと決着し、対立を必要以上に引き延ばさない。日曜劇場に慣れた視聴者には、少しクドさが足りないと感じられるかもしれないが、番組の最後にはハラハラやモヤモヤを次週に持ち越さず、ひとまず決着をつけたのは、視聴者にとっては見やすかったのではないだろうか。大泉のキャラクターを生かした“愛嬌のあるトホホ感”が、シリアスな空気を適度にほぐし、視聴者を疲れさせない“ガス抜き”になっていた。

 そして、本作を語るうえで欠かせないのが、箱根駅伝中継との結びつきだ。テレビ局パートでは「センターD」「放送手形」「関東学生連合」といった専門用語が飛び交う一方、予選会の順位をめぐる仕組みは画面上の図解で説明され、大会に詳しくない視聴者にも状況が伝わるよう工夫されている。実際の駅伝映像も取り入れられており、長年にわたって箱根駅伝を中継してきた日本テレビだからこそ、その専門知識や映像の蓄積をドラマに生かせるのだろう。組織や企業を舞台に劇的な逆転劇を描く“フィクション”の日曜劇場に対し、本作は実際の大会にまつわる情報や映像を織り交ぜることで、“ドキュメンタリー”ならではの熱を物語に取り込んでいる。

 また、原作では学生ランナーの青葉隼斗(小林虎之介)が物語の中心にいるが、ドラマではテレビ局側の視点にも重きが置かれた。この変更によって、走る選手だけでなく、彼らを伝える側の仕事や判断も物語の一部となる。本作のプロデューサーは『花咲舞が黙ってない』(日本テレビ系)で池井戸作品をヒットに導き、『家売るオンナ』(日本テレビ系)、『地味にスゴイ!校閲ガール・河野悦子』(日本テレビ系)など働く人々の葛藤を描く作品を得意としている点からも、この原作改変は興味深い。

 また、「キスまであと何秒」といった自局番組の演出を自虐的なネタとして盛り込んでいた点も印象に残った。

 第2話以降も各所で問題が発生する内容となりそうだが、日曜劇場とはひと味違う“日テレ劇場”の個性は土曜21時の視聴者にどう届くか。最終回でゴールテープを切る瞬間を見届けたい。

■放送情報
『俺たちの箱根駅伝』
日本テレビ系にて、毎週土曜21:00~放送
出演:大泉洋、伊藤沙莉、小林虎之介、奥智哉、山田杏奈、市川猿弥、小日向文世、生瀬勝久、竹中直人、寺尾聰、浅香航大、望月歩、河内大和、水沢林太郎、菅生新樹、荒木飛羽、庄司浩平、林裕太、山本耕史、駿河太郎、金田明夫、高橋克典、山下智久
原作:池井戸潤『俺たちの箱根駅伝』(文藝春秋)
脚本:鈴木すみれ、松田裕子
演出:猪股隆一、山田信義 ほか
主題歌:桑田佳祐
プロデューサー:小田玲奈、藤澤季世子、大井章生、鈴木香織、森雅弘
協力:一般社団法人 関東学生陸上競技連盟
制作協力:AX-ON
製作著作:日本テレビ
©日本テレビ
公式サイト:https://www.ntv.co.jp/orehako/
公式X(旧Twitter):https://x.com/orehako_ntv

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