『VIVANT』“野崎”阿部寛の“闇落ち”に残る疑問 堺雅人との演技の対比から読み解く

現在放送中の『VIVANT』(TBS系)では、2つの物語が進行中だ。
1つは、乃木(堺雅人)とノコル(二宮和也)らによる、シャキ城に拉致された別班員救出作戦。こちらは、生きていた黒須(松坂桃李)らを脱出させ、国外へ逃げようとしている。敵陣側の追っ手がそこまで迫っており、まだ予断を許さない状況にあるが、成功は間近だといえよう。

もう1つは、野崎(阿部寛)の“中国の別班”とも称されるシンシーへの潜入作戦。幹部となって組織の内情を探ろうとしていたが、それを死んだと思われていたかつての部下、リュウ・ミンシュエン(堺雅人)により見破られ監禁されてしまう。そして9日間にわたり水と食料を断たれ生死をさまよい、命を助けてくれたリュウの言いなりに。10月11日に放送された第20話では、ついに日本に匿われているジャミーン(本間さえ)の情報を話してしまうのだった。
ジャミーンは、世界の覇権を手にすることができるような核融合技術を開発したエリシャ・ママドフ(Manaf Dadashov)の娘・プリシャと考えられ、シンシーがその核融合技術を得るために必要な“交渉材料”。ハン・リンシン(宮下今日子)はプリシャがテントに捕らえられたことまでは把握していたため、血眼になってテントの情報を集めていたのだ。つまり、ジャミーンが生きていること、そして日本にいることを明かした野崎はシンシーへ重要な情報を渡してしまったことになる。そうなると、乃木たちの次なる戦いは“ジャミーンを守ること”となるのではないだろうか。そしてその先にシンシーの壊滅も見えてくる。
気になるのは、「野崎が本当にシンシー側へ“闇堕ち”してしまったのか?」ということである。9日間にわたる飢餓の拷問によって「精神的奴隷になる」と言ったのは、あくまでリュウの経験からくる“予想”だ。その予想通り、野崎がリュウの言う通りにしているので、我々視聴者は、「野崎は敵になってしまったんだ」と思わざるを得ない。だが、公安部外事第4課のような特殊作戦を実行する部隊というのは拷問に対しても特別な訓練を受けているはずだ。事実、シャキ城に囚われていた別班員は、激しい身体的な拷問に耐え、和田(平山祐介)のように命を落としてまでも情報を明かすことはなかった。

だからこそ、どこかで「これはまだ野崎の作戦の内なのでは……」という希望が捨てられない。
さらに、そう思わせる背景には、野崎を演じる阿部寛の演技力がある。
別班員救出作戦もあり、現在の乃木を演じる堺雅人の演技は、一言で表すなら「動」であり「情熱」を感じる。一方で野崎はずっと「静」であり「冷静」なのだ。
たとえば、野崎が開き直ったようにすべてをベラベラと喋り出せば、これまでとは違った様子から、「野崎はリュウにマインドコントロールされてしまった」ということが分かりやすい。しかし、阿部がここで見せるのは、以前と少しも変わらない淡々とした演技なのだ。

現在の野崎は、リュウに促されると知っていることを少し話し、新しい情報が出てくると、また促されて少し話す。この温度感は、かつてハン・リンシンと食事をともにしながら腹の探り合いをしていた頃と何ら変わらない。野崎も最初の頃は、シンシーがなぜこんなにもテントの情報を欲しがっているのかに疑問を抱いていた。この変わらぬ淡々とした佇まいこそが、彼がまだ理性を失っていないように見える証拠であり、情報をあえて小出しにすることで“真の敵”をあぶり出そうとする、潜入捜査員としての高度な作戦の表れのように思えてならない。
ただ、仮にこれが野崎の思惑通りに進んでいるのだとしても、この“戦い”を生んでしまった“犯人”となる野崎も無傷ではいられないだろう。最終的に乃木との直接対決や死が待ち受けていることが予想できてしまう。

日本から始まり、バルカ共和国やエルサレム、タイやアゼルバイジャンなどさまざまな国が登場する世界を股にかけたダイナミックな群像劇も、緊迫感あふれるアクションも、本作の大きな魅力である。しかし、この壮大な旅の果てに私たちが本当に見届けたいのは、「善が悪に勝つこと」。乃木が別班としての圧倒的な実力を見せつけた今、次はその相棒である野崎の番である。泥沼からの鮮やかな逆襲劇を信じて待ちたい。
■放送情報
日曜劇場『VIVANT』第2シーズン
TBS系にて、毎週日曜21:00〜21:54放送
出演:堺雅人、阿部寛、二階堂ふみ、竜星涼、山中崇、富栄ドラム、林原めぐみ(声の出演)、花岡すみれ、本間さえ、二宮和也、宮下今日子、オーム・タナパック、濱田岳、坂東彌十郎、小日向文世、キムラ緑子、松坂桃李
原作・演出・プロデュース:福澤克雄
プロデューサー:飯田和孝
製作著作:TBS
©︎TBS
公式サイト:https://www.tbs.co.jp/VIVANT_tbs/
公式X(旧Twitter):@TBS_VIVANT
公式Instagram:tbs_vivant
公式TikTok:vivant_tbs




















